クワンソウとは?

クワンソウ(写真提供:沖縄県 農林水産部 流通・加工推進課)

クワンソウはユリ科ワスレグサ属の多年草です。秋にオレンジ色の美しい花を咲かせることから、和名は「あきのわすれぐさ」。別名は「ねむりぐさ」「常葉萱草(ときわかんぞう)」とも言い、沖縄の方言で「ニーブイ(眠り)グサ」とも呼ばれています。九州列島から南九州に自生し、沖縄本島北部と今帰仁村(なきじそんむら)が主な産地です。

安眠効果が期待できる

クワンソウは沖縄の気候に適した植物で、古くから庭や家庭菜園で栽培されてきました。「ねむりぐさ」と呼ばれるように安眠効果があるとされ、食用としてよりはむしろ民間療法に利用されてきました。葉は硬いためお茶などに加工され、主に茎の根元の白く軟らかい部分や若芽・若葉、花を食用とします。

ほのかに甘くシャキシャキ食感

食用とされるクワンソウの茎の白い部分は、ほのかに甘みがあり、シャキシャキとした歯ごたえで、クセのないさっぱりとした味わいです。花は酢の物や天ぷら、ゼリーなどに調理され、つぼみは中華料理の高級食材「金針菜(きんしさい)」として珍重されています。葉の緑色の部分は繊維質で硬いため、食用とする場合は細かく刻んでしっかり煮込んで調理します。

琉球王朝時代にさかのぼる伝統野菜

クワンソウは、沖縄県で「島野菜」と呼ばれる「沖縄県伝統的農産物」に指定されています。古くは琉球王朝の時代に、中国から渡琉した柵封使(さっぽうし/さくほうし)を贅(ぜい)を尽くしてもてなした料理にクワンソウが使われた記録が残っています。また、琉球王府の医師であった渡嘉敷 親雲上 通寛(渡嘉敷・ウェーカタ・つうかん)が著した琉球食療法の指南書「御膳本草(ぎょぜんほんぞう)」にも記載されています。

クワンソウの栄養成分

栄養成分はβーカロテン、カルシウムが比較的多く含まれています。また、花にはヒドロキシグルタミン酸、β-シトステロールが含まれています。最近の研究で、オキシピナタニンに安眠作用があることが分かっています。漢方では根に利尿作用があるとされていますが、毒性もあるため多量には取ることは避けましょう。

花は秋、茎は春が旬

クワンソウの茎は通年収穫され、沖縄の市場やスーパーで野菜として売られていますが、白茎のおいしい時期は2〜6月です。生花は9~11月に採取され、現地の直売所やファーマーズマーケットで販売されることがあります。県外で野菜としてのクワンソウを見かけることはほぼありませんが、葉や花を乾燥加工した茶や粉末は、沖縄物産店や健康食品店、ネット通販などで販売されています。

クワンソウの栽培方法

クワンソウは、沖縄や南九州では山野や道路脇にも自生しています。沖縄の気候や土壌に適応した性質を持ち、温暖な地域であれば庭や家庭菜園でも比較的栽培しやすい植物です。球根から植えるのは栽培に時間が掛かるため、苗から育てるのが一般的です。鉢やプランターでも栽培できます。

畑の準備

クワンソウは、排水性が良く、有機物が豊富な土壌を好みます。畑には必要に応じて堆肥や腐葉土を混ぜて、土壌を耕しておきます。鉢やプランターの場合は市販の草花用培養土で構いません。根を張るため深さのあるものを選び、鉢底石を敷いて水はけを良くします。

植え付け

苗は春(3〜4月)または秋(9〜10月)の植え付けが適しています。株間を20〜30cm空けて植えます。

追肥、水やり

土の表面が乾いたら水やりをします。追肥は鶏糞や油粕などを月に1〜2回与えます。クワンソウは暑さには強いものの、強い日差しが苦手で、半日陰を好むため、夏場の直射日光の強い時期は木陰に移したり、日除けをすると良いでしょう。成長するにつれて、どんどん葉が増えていくので株分けをしましょう。

収穫

クワンソウは、茎の白い部分、花とつぼみ、若い葉を食用にできます。
花は9〜11月に咲きます。朝に開花して夕方にしぼむ一日花ですが、ひと株に次々と咲くので2〜3カ月にわたって花を楽しむことができます。花は咲いている状態で摘み取り、花粉を落としてサラダや酢漬けにして食べます。

つぼみは開花する直前に収穫します。ハサミや手で花茎の付け根から優しく摘み取ります。葉茎は年中収穫でき、2〜6月に茎の白い部分を食用にします。手で摘むか、ハサミを使って付け根から収穫します。定期的に収穫することで植物が健康に育ち、新しい芽や花の出現が促進されます。

クワンソウのおいしい食べ方

クワンソウの白茎は、肉などのたんぱく質と相性が良く、もともとは豚肉や牛肉、魚と一緒に煮込む薬膳料理の素材でした。炒める、揚げる、煮込むなど、さまざまな調理法に適しています。

洗って加熱して食べる

主に食用とされるクワンソウの葉茎は、根を切って株で売られていることが多く、見た目はネギやセロリに似ています。クワンソウは生食せず、必ず火を通して食べます。調理する際に葉を1枚ずつはがして流水で洗い、サラダやあえものに使うときは沸騰した湯で5〜10秒ほど下茹でします。シャキシャキ食感は損なわれず、風味も増して、よりおいしく食べられます。特に花、つぼみ、葉はよく加熱してください。

クワンソウの保存方法

収穫後のクワンソウは、できるだけ早く調理して食べるのが理想です。保存する場合は、冷蔵庫に立てて置き、できるだけ早く使い切ります。

クワンソウをおいしく食べるレシピ5選

クワンソウの食べ方は、沖縄の人に聞くのが一番。沖縄料理レシピネット「」から、クワンソウを使ったレシピを紹介します。

クワンソウのお浸し

クワンソウの白茎とモヤシを下茹でして、だし・しょうゆ・みりんの合わせ調味料であえたシンプルな一品で、シャキシャキ食感のハーモニーが楽しめます。

クワンソウのポタージュ

スープの具材や煮込みにも適したクワンソウをひと手間かけてポタージュに。安眠作用も手伝って、ほっこりとした気分になる一品です。

クワンソウのナムル3種

下ゆでしたクワンソウを韓国風の味付けで、ごま油、とうがらし酢、にんにくしょうゆの3種を食べ比べ。クセがないので味がよく絡みます。

クワンソウのペペロンチーノソース!

細かく切ったクワンソウと赤パプリカ、赤唐辛子などの香味野菜にたっぷりのオリーブオイルを加えてさっと加熱。保存容器に入れ、パスタソースやご飯のお供に。

タコとクワンソウのさっぱり和え

安眠効果のあるクワンソウのつぼみと、疲労回復に良いタウリンを含むタコの組み合わせは、彩りも良く、夕食の前菜にぴったりです。

薬用・食用・鑑賞に、栽培も楽しいクワンソウ

沖縄で「ねむりぐさ」の別名を持つクワンソウは、琉球王朝時代から薬膳料理の食材として利用されてきた伝統的農産物です。近年の研究で睡眠改善の効果が明らかになり、乾燥加工した葉や花がハーブティやサプリメントの材料として流通しています。

沖縄では野菜としても食卓に上り、主に根元の白茎を食用とします。沖縄県外でクワンソウの青果に出会う機会は滅多にないので、郷土料理などで見つけたらぜひ味わってみたい島野菜のひとつです。

クワンソウはユリ科の植物で、沖縄や南九州では道路脇などにも自生して、秋になるとオレンジ色の花を咲かせます。苗を購入して育てれば、食用の白茎も楽しむことができるかもしれません。鑑賞しても美しく、花やつぼみは食用花に、葉は乾燥させて煎じ茶に、根以外は余すことなく活用できるのも栽培のモチベーションになるでしょう。

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