「スーパーシティ」や「スマートシティ」という言葉をご存じでしょうか。AIやIoT、ビッグデータなどのデジタル技術の活用によって、都市の課題を解決し住民の生活の質(QOL)向上をめざす都市、それがスーパーシティ・スマートシティです。

そして、このスーパーシティ型の国家戦略特区に指定されているのが大阪府・大阪市です。

今回は、大阪府のスーパーシティ構想やスマートシティ戦略を最前線で推進する大阪府の狩野さんと、その実現を全面的にバックアップするNTT西日本の瀬野さんをお迎えし、最先端の取り組みについてお話を伺いました。

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PROFILE

 狩野 俊明さん
大阪府 スマートシティ戦略部 戦略推進室
戦略企画課 課長

大阪府のスーパーシティ・スマートシティを牽引する第一人者。住民QOL向上や都市競争力向上に向け、データ連携基盤(ORDEN)・住民向け総合行政ポータル(my door OSAKA)の整備を推進するとともに、全国に先駆けて「データ連携基盤の共同利用」を提唱。

 瀬野 恭彦さん
NTT西日本 エンタープライズビジネス営業部 デジタルビジネス推進部門
デジタルプラットフォーム担当 スマートシティシニアアーキテクト

NTT西日本におけるスマートシティの第一人者、スペシャリスト人材。スマートシティを推進するアーキテクトとして、中央省庁、自治体、経済団体等と連携した戦略立案やORDENを含む先端的プロジェクトの推進に従事。

住民のQOL向上と都市競争力の強化へ。大阪がめざす未来の都市づくり

──大阪ではスーパーシティやスマートシティに関して、どのようなテーマを掲げ、どのような未来をめざしているのでしょうか?

狩野さん

大阪府・大阪市は、住民のQOL向上や都市競争力の強化を目的に、2020年からスマートシティの取り組みを進め、2022年には内閣府のスーパーシティ型国家戦略特区に指定されました。分野横断型でさまざまなデータやサービスをつないで付加価値を創出する、大阪広域データ連携基盤「ORDEN」の整備を進め、住民の暮らしを豊かにするサービスの社会実装に取り組んでいます。


  • 大阪スーパーシティ・スマートシティの全体概要

狩野さん

直近では、行政サービスのワンポータル化や民間企業によるイノベーション創出も支援しております。将来的には、これらの取り組みを大阪全体や他の都道府県へと展開し、日本全体で持続可能で快適な未来都市を実現したいと思っています。


──すでに動いている取り組みがあれば教えていただけますか?

狩野さん

例えば、行政サービスの分野では、住民向けの総合行政ポータル「my door OSAKA(マイド・ア・おおさか)」の提供を始めています。


  • 「my door OSAKA」について

狩野さん

これは、府と市町村の行政サービスをワンID・ワンポータルで提供するもので、住民一人一人に合った最適な情報配信や行政サービスへの電子申請を、一つのサービスで受けられるようになります。スマートフォン一つでお住まいのエリアの市役所にアクセスできるような感覚で、住民の皆さまの利便性を大きく向上させる取り組みとなっています。


  • 狩野さん

──行政サービス以外の分野だと、どういったものがあるのでしょうか?

狩野さん

観光分野では、2025年8月にAI観光案内サービス「めぐろっと」をリリースしました。大阪府に加え、石川県、滋賀県、奈良県、鳥取県、高知県の6府県の観光情報を統合し、利用者の趣味嗜好に応じてAIが観光スポットをレコメンドするサービスです。


  • AI観光案内サービス「めぐろっと」について

狩野さん

個々人に合わせた情報をお届けすることで、多くの皆さまに最適な観光体験をしていただけるようにという想いで提供しており、観光促進と地域を越えたサービス提供の両面で注目されています。


  • 「めぐろっと」の機能概要

狩野さん

そのほか、交通分野では、混雑緩和・周遊促進を目的として「OSAKAエコライドサービス」や「AI交通量予測システム」の実証も進めています。こちらは、万博などの大規模イベント開催期間中の移動最適化はもちろんのこと、将来的な都市交通のスマート化にもつながる重要な取り組みとなります。


  • OSAKAエコライドについて

未来都市の実現に不可欠なインフラ。
大阪広域データ連携基盤「ORDEN」が果たす役割

  • インタビューの様子

──こうしたサービスはどのような技術によって支えられているんですか?

狩野さん

これらのサービスは、すべて「ORDEN」という大阪広域データ連携基盤の上で展開されています。「ORDEN」は、官民が持つ多様なデータを連携・活用するための基盤として機能しており、スーパーシティやスマートシティの実現に不可欠なインフラとして重要な役割を持っています。


  • 大阪広域データ連携基盤「ORDEN」について

従来は、さまざまなサービスが分野や領域別に提供されていましたが、「ORDEN」が多岐にわたる分野のデータを一元的に連携させる「ハブ」の役割を担うことで、サービス間のデータ連携を促進させ、さらなる住民のQOL向上につながるサービスの提供が可能になります。

狩野さん

「ORDEN」は、住民の皆さまのQOL向上と都市の競争力強化を行うために必要不可欠な、未来志向の社会基盤だと考えています。


  • 狩野さん

──その「ORDEN」を大阪府と整備してこられたのがNTT西日本ということですね。

瀬野さん

はい。「ORDEN」は、NTT西日本グループが提供する地方公共団体向けのデータ連携基盤サービスを指しており、大阪府様と連携して構築・運用しているものとなります。


  • データ連携基盤サービスのHP

    データ連携基盤サービスのHP

「ORDEN」は、国が提供する推奨モジュールを採用することで、相互運用性を確保しながら、さまざまな自治体や民間事業者が保有するデータを効率的に連携できる機能を提供しています。運営分野においても、NTTグループが有するセキュリティやプライバシーに関する技術、ノウハウを用いることで、安心してデータを利活用できる環境を整備しています。

瀬野さん

最近では、「ORDEN」を他の都道府県と共同で利用するという大阪府様の考えにNTT西日本も賛同し、スマートシティの実現に向けて、共同利用を推進しているところです。


  • 瀬野さん

──大阪府にとってNTT西日本はどのような存在ですか?

狩野さん

通信という社会インフラを提供しておられるNTT西日本だからこそ、このような公共性の高いデータ連携基盤の構築・運用はもちろん、コンサルティングを含めさまざまなサポートをいただけており、共創パートナーとして非常に心強く感じています。


  • インタビューの様子

直近では、大阪府が主催して全国45道府県(※2025年9月時点)とともに、「自治体データ連携基盤共用化研究会」を開催し、地域を越えたデータ連携基盤の共同利用に関する検討を進めているといいますが、こちらについても「NTT西日本のフォローに助けられている」と狩野さんは目を細めました。

  • 「自治体データ連携基盤共用化研究会」の説明図

コスト削減・運用負荷軽減・サービスの横展開――。
データ連携基盤を共同利用するメリット

  • インタビューの様子

──「データ連携基盤の共同利用」とのキーワードが出ましたが、データ連携基盤を他の自治体と共同利用することに、どのようなメリットがあるのでしょうか?

瀬野さん

費用対効果の高い持続可能なスマートシティを実現できると考えています。各自治体が個別にデータ連携基盤を整備する場合、技術をはじめ、運用・財政面でも大きな負担が伴います。また、データ連携基盤の構築には、ITインフラに関する高度な技術や専門知識が求められるため、小規模な自治体が予算やコスト、人材を確保して実際に運用・構築するのは非常にハードルが高いと思っています。


  • データ連携基盤の共同利用によるメリット
実際「自治体データ連携基盤共用化研究会」のアンケートでも、コストの高さや運用の負担を課題として挙げる自治体が多いといいます。

瀬野さん

こうした課題に対し、自治体の皆さまが共通のデータ連携基盤を利用することで、初期投資や運用コスト、ランニングコストの低減を図れると考えています。また、複数の地域で基盤を活用することで、さまざまなデータ連携やサービスを生み出しやすいというメリットもあります。データが一元的に管理されているため、すぐにデータを引き出しやすく、サービスの横展開も容易になります。広域観光サービスの「めぐろっと」も、この一例といえるでしょう。


  • 瀬野さん

狩野さん

従来の自治体観光サービスは、自治体が独自に導入・PR・ユーザー獲得を行わねばならず、非常に負担の大きいサービスでした。その点「めぐろっと」は、これまでの自治体観光サービスとは異なるため、広域での観光促進や情報共有に大きな効果が期待できると思っています。


  • 狩野さんと瀬野さん

狩野さん

「めぐろっと」はあくまで一例ですが、データ連携基盤の共同利用には、「安価で高品質なサービス」を持続的に運用できるメリットがあると考えています。また、他の地域で提供されるサービスの中にいいものがあれば、自地域でも同じようなものを安価に取り入れ、サービスの横展開ができる点も魅力に感じています。


  • データ連携基盤の共同利用によるメリット

地域課題の解決へ。データ連携基盤「ORDEN」を活用した未来への展望

  • アナウンサー

──最後にこれからの展望をお聞かせいただけますか?

狩野さん

府内の市町村や府外の自治体との共同利用を積極的に進め、住民の皆さまのさらなるQOL向上に努めていきたいです。そして、自治体間の垣根を越えた連携と共創によって、未来の都市モデルを全国に先駆けて提示していきたいと思っています。


  • 狩野さん

狩野さん

そして、この実現には「ORDEN」の存在が欠かせません。共同利用にご参画いただける自治体やNTT西日本と共に、データ利活用による地域社会の発展に取り組んでいきたいと考えています。


瀬野さん

2026年度も引き続き大阪府様と共にデータ連携基盤「ORDEN」の共同利用の推進と、サービスの拡充を進められればと思っています。


  • 瀬野さん

瀬野さん

また「ORDEN」の利用は、民間企業にとっても多くのメリットがあります。「ORDEN」には、行政・医療・交通・防災など多様な分野のデータを一元的に統合できるため、民間企業はこれらのデータの有効活用することで、新たなサービスや事業の創出が可能となります。


  • インタビューの様子

瀬野さん

加えて、今年から大阪府様と「イノベーションデータラボ」という官と民が連携したピッチイベントも開催しており、「ORDEN」のデータを活用したサービスを作るための支援プログラムも始めています。これからも大阪府様と共に、データ連携基盤を持続可能な新たなインフラサービスとして世の中に提供し、基盤を活用して創出されるサービスを通じて、地域課題の解決に取り組んでいきたいと思っています。


  • インタビューの様子

大阪から始まった挑戦が、自治体や分野の垣根を越えて、やがて日本全体の暮らしを変えていく。そんなワクワクする未来も見えた今回。大阪のスーパーシティは、まさに未来への扉を開く壮大なプロジェクトといえるのではないでしょうか。

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インタビューの内容をYouTubeでも公開中

NTT西日本のデータ連携基盤
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