JR西日本は、多機能鉄道重機の完成報告会を8月8日に実施した。多機能鉄道重機は、これまで高所で人が実施していた多様な設備メンテナンスに対応する汎用性の高い作業用の機械となる。2020年に開発が始まり、人機一体や日本信号と共同で開発を進めてきた。

  • アームを広げた多機能鉄道重機

今年7月から、JR西日本グループの西日本電気システムが、営業線での鉄道設備メンテナンスにおいて多機能鉄道重機の使用を開始した。今回公開された多機能鉄道重機は、2022年9月に京都鉄道博物館で公開された「試作機」とは異なり、改良を加えた「製品機」である。製品機は1台のみであり、当面は架線を支える架線支持物の塗装や支障樹木の伐採に使用される。

導入により、作業に要する人出が約3割減少するほか、性別・年齢によらず高所での従事作業が可能になるなど、さまざまな効果が期待されている。

  • 多機能鉄道重機の製品機が公開された

  • VRゴーグルを着用した状態で操作する

  • アームの先端にツールを付ける

多機能鉄道重機は、人に代わって作業を担う人型ロボット、人型ロボットを広範囲に動かすブーム、人型ロボットとブームを実際に操縦する操縦室、人型ロボット等を載せる鉄道工事用車両という4つのパートから成り立っている。鉄道工事用車両は道路と鉄道の両方で走行できる。

完成報告会では、支障樹木の伐採と架線支持物の塗装を想定したデモンストレーションが行われた。人型ロボットのアームの先端にチェーンソーを取り付けたツールを設置。もう一方の手でほうきを支え、人がのこぎりで切るようなシーンが見られた。支障樹木の伐採において、チェーンソーのツールだけで、片手で切り落とすことも可能だという。

続いて、ローラーのツールに持ち替えて、ローラーをビル柱に押し当てた。先端に設置されるツールは、多機能鉄道重機向けに新規に作られた。多機能鉄道重機はツールを新規に製造することで、さまざまな作業が可能になるというしくみになっている。

  • ほうきを樹木に見立て、切ろうとしている

  • ローラーを柱に押し当てようとしている

  • VRゴーグルから見られた風景

  • 操縦桿を使ってアームを自由に動かした

  • 操縦室にあるモニターでセットする

  • 操作する際に取り付けるVRゴーグル

筆者も多機能鉄道重機に試乗した。試作機でも試乗の経験はあったが、製品機は試作機と比べて、アームの動くスピードが遅くなっている。試作機はスピード重視だったが、製品機では安全性を考慮し、アームのスピードを遅めに調整したという。

なお、多機能鉄道重機の操作に関して、法的な免許はないが、JR西日本ではクレーン運転士の免許保有者に操作させているとのことだった。当面は現在の製品機1台で運用するとしており、将来的にさまざまな調整を行った上で台数を増やしたいと考えているものの、具体的には未定だという。