俳優の野村周平と塩野瑛久がW主演するFODオリジナルドラマ『REAL 恋愛殺人捜査班』が、7月5日から配信されている。実際に起きた恋愛にまつわる殺人事件をモチーフに、“リアル”な恋愛ドロ沼劇をエンタテインメントたっぷりに描いた新感覚のミステリー作品だ。

総合演出を務めるのは、長江俊和監督。『奇跡体験!アンビリバボー』や『世界法廷ミステリー』などの情報バラエティのディレクターを務めるほか、カルト的人気を誇る『放送禁止』シリーズなどのフェイクドキュメンタリー、新感覚の“恐怖クイズ番組”『世界で一番怖い答え』の監修、直近では累計約25万部のヒットシリーズ『出版禁止』の最新作『出版禁止 ろろるの村滞在記』の執筆、そして今作の系譜と言っていい、実際の“愛憎劇”をドラマ化した『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』の演出など、様々な分野で活躍するクリエイターだ。そんな長江監督に、このドラマの制作秘話や見どころを聞いた――。

  • 『REAL 恋愛殺人捜査班』総合演出の長江俊和監督

    『REAL 恋愛殺人捜査班』総合演出の長江俊和監督

海外にも出していける作品に

今作は現実で実際に起こった恋愛にまつわる事件をモチーフにした作品で、これは同じく実在した世界の愛憎劇をドラマに仕立てた『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』の系譜とも言っていい作品。制作の経緯について聞いてみると、長江監督は「去年の3月にも『アイゾウ』をやったんですが、そこからさらにパワーアップしたものをやりたい!というところから始まりました」と振り返る。

前作では警視正にストーカーをしていたという突飛なキャラクターの女性刑事が主人公だったが、今作で男性2人のバディものになっている点については、「プロデューサーのみんなと話をした時に、やっぱり“あぶ刑事”や“相棒”もそうですし、刑事ものの王道として男性2人のバディものをやりたいよねということで、今回の企画になっていきました」と明かす。

さらに、「今、こういった実話をモチーフにした犯罪ミステリーみたいなものが海外でもウケているという話があったので、海外にも出していける作品になるといいなということで、今回は配信での企画として成立していったという感じです」と教えてくれた。

『アイゾウ』では、単発作品を皮切りに、連続ものから、スペシャル版へと、7つの実際の事件を元にドラマへと昇華させてきたが、それだけ多数のエピソードを仕上げることができるほどに、世界では特異な事件が起きているのだろうか。そのリサーチ方法について聞いてみると、「例えば『世界法廷ミステリー』にも携わっているのですが、ドラマ化する上での題材というのは本当に豊富にあるんです。今だとネットで調べるとたくさん出てきたりしますし、番組のリサーチで、海外のスタッフから、日本ではキャッチできない事件のニュースなども教えてもらったりするので、そういったところからの情報も大きいですね」とのこと。

では、前作『アイゾウ』との違いはどこにあるのだろうか。

「『アイゾウ』は題材となる事件を明確にして、ある程度事実に沿って作っていったんですが、今回の『REAL』では元になった事件を軸に、違う事件からもヒントを得たりと、事件を明確にしない作りにしました。あと前回は、事件によっては、記事や資料があまりなくて、事実関係がよく分からないということもあったんです。ですが今回は、映像化した場合のリアリティを追求する上でも、エンタテインメントとして仕上げる上でも大胆に脚色をしていったので、そういった点も違う部分だと思いますね。確かに『アイゾウ』から発展した企画ではあるんですが、それについては一旦忘れて、一つの刑事のバディものとして、『アイゾウ』のことは考えずに作りました」

  • 塩野瑛久(左)と野村周平 (C)フジテレビ

全てのフィクションが、実は事実を元に作られている

ドラマにすることで“リアル”な部分が逆にウソ臭く見えてしまう点も出てくる。そのさじ加減の難しさについては、「まず単純にこのドラマを見て面白いか面白くないか?ミステリーとして成立しているかどうか? というところに力点を置きました。だからウソ臭いんじゃないかとか、そう思う方もいるかもしれません。ですが今回は『REAL』というタイトルにも助けてもらって、本当にあったことを前提にインスピレーションを得て作っていったので、このドラマが本当にエンタテインメントとして面白く、興味深く皆さんに見ていただけるように工夫したつもりです。ですからドラマとしての面白さをぜひ楽しんでもらいたいですね」と強調。

続けて、「大きな話で言うと、ドラマはもちろん小説もそうですが、全てのエンタテインメントや物語は、実話が元になっているということがあるんです。さかのぼると、歌舞伎にしても、その当時の幕府のいざこざやスキャンダルを、形を変えて表現していたということがあるので、そういう意味で全てのフィクションが、実は事実を元に作られている。人間が生きていて、それを元にしたものを物語にするわけですから、そこにはモチーフとなる事実があるはずなんです。それは今回の企画の『REAL』につながるものだと思うので、そういう魅力をこの作品で感じてもらいたいですね」と呼びかけた。

そんなこだわりをもって作られた“リアル”には、主人公2人が所属している「恋愛感情のもつれによる犯罪特別対策班」というかなり説明的な名称にも隠されている。

「もっとカッコいい名前にしても良かったんですが(笑)、いろいろ調べたら、実際に警察庁が出している資料に『恋愛感情のもつれに起因する~』という文言が書かれた項目があったんです。だからそういった説明的な部署名があってもおかしくないと思って、それこそ“リアル”を目指して付けました」