藤井聡太王位への挑戦権を争う伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、挑戦者決定戦の渡辺明九段―斎藤慎太郎八段戦が5月30日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かりのねじり合いから抜け出して113手で勝利した渡辺九段が自身初となる王位挑戦を決めました。
20局目の対決
両者の対戦はこれまで19局あり、渡辺九段の13勝6敗。振り駒が行われた本局は先手となった渡辺九段が相掛かりに誘導し、首尾よく横歩を取って先手番の利を具体化することに成功します。対して後手の斎藤八段は力強く金銀を繰り出し歩損の代償を手得に求めました。
斎藤八段の抑え込み策を受けた渡辺九段は大駒の軽やかな活用でペースをつかみます。追われた飛車を5筋にかわして後手の棒銀を遊び駒にしたのがその準備。続いてこの飛車を切って金と刺し違えたのが継続の狙いでした。手順に角がさばければ十分にお釣りがきます。
渡辺九段が勝ち切る
自陣に飛車を打ち込まれた渡辺九段ですがこれも読み筋通り。しっかり金を引いて中住まいを補強すれば自陣に怖いところはありません。反対に手番を握って3筋の拠点に香を打ち込んだのが反撃の狼煙で、数手後に王手飛車取りが決まって方針がわかりやすくなりました。
終局時刻は19時35分、最後は自玉の詰みを認めた斎藤八段が駒を投じて渡辺九段の勝ちが決まりました。自身初となる王位挑戦を決めた渡辺九段は局後「(藤井王位への)今までの借りを返せるように頑張りたい」と七番勝負への意気込みを語りました。
水留啓(将棋情報局)