冠MCの矢作と藪木氏は、20年以上の付き合い。最初におぎやはぎと仕事をしたのは、照明スタッフ時代に担当した小堺一機司会の若手ネタ番組『小堺君の面白お台場亭』で、その後バラエティ制作に移ると、ネタ番組のオーディションで顔を合わせるようになった。

そんな中、CSでやっていたユニットコント番組『OFJ龍(ドラゴン)』を担当していた頃、フジテレビの若手ディレクターが推薦する若手芸人・アーティストが、ネタやパフォーマンスを披露する深夜の長時間特番『登龍門F』に、藪木氏がアンジャッシュ&エレキコミックのユニットコントを推薦。普段の番組で組んでいるだけあって完成度が際立ち、その放送の帰り際に矢作から「なんでこんな完成度高いの!?」と声をかけられたのが印象に残っているという。

その後、『やりかた大図鑑』『うつけもん』『オサレもん』『ツギクルもん』『笑わせたもん勝ちトーナメント KYO-ICHI』でMCに起用。フジ退社後は『#っぽいウタ』『どこかで見たことある雰囲気バラエティー! #っぽいネタ』(中京テレビ)、そして矢作ピンでの『芸能人の前にパパであるべし! PAPAPAダン!!!』(中京テレビ)と、関係が続いている。

今回の番組で矢作を起用したのは、「日頃の子育てで感じることをパパたちが語り合う『PAPAPAダン!!!』という番組で、矢作さんの家庭での様子など今まで見えなかったバックボーンが見えてきて、個人的にも奥さんやお子さんにお会いしたのもあって、半年くらい前に“建築って興味あります?”って聞いたんです。そしたら、子どもが2人できてそろそろ一軒家を考えてもいいんじゃないかという時期だったので、お願いしました」とのこと。

また、「矢作さんがいると、どんな人とも合わせられるし、空気が良くなるし、番組自体のクオリティも品も上がるので、この番組にぴったりだと思って。根っこのところではお笑い芸人なんですけど、それを見せない感じがするから、僕にとって特別な存在なんです」と信頼を寄せている。

“どんな人とも合わせられる”理由は、「懐が深いということだと思います。ツッコミを入れるにも、パパーン!といかないで、“そうだね、そうだね、こうだよね”って、1回クッションで受け止めた後に返せるから、相手も嫌な気持ちにならないんですよね」と分析。さらに、「芸人界においてはある意味、浮世離れしてる感じがありますよね。昔は芸人さんがいい車乗ると嫉妬の対象になると言われてたけど、全然いい車乗ってましたし(笑)。でも、芸人さんですよって感じのところにいてもハマるんですよ」という適応能力の高さを感じている。

それだけに、「おぎやはぎさんを生かせなかったら、下手な演出家と思われるから難しいんですよ(笑)。矢作さんと小木さんが出ていなきゃいけない場所にちゃんと置かず、企画が前面に出すぎた番組で、“おぎやはぎ使って生かしてないの?”って思われると、恥ずかしいんです」とプレッシャーも吐露した。

建築ネタは尽きず、矢作の新築に密着も!?

同じ建築家でも全くコンセプトの違う設計があり、「資料で集めたものを見ると“うわー! こんな解決の仕方するんだ!”っていうのが結構あるんです」と、建築のネタは尽きない。

それに加え、「矢作さんが“家建てる時は頼みたいわ~”って言ってたので、番組が紹介した建築家に依頼をすることもあるかもしれないし、密着することもあるかもしれないですが、そこはいろんな広がりがあるのかなと思います」と、今後の番組の構想を語る。

この番組は、藪木氏の所属会社・Sunny Picturesが制作を担当し、自身は「企画演出プロデューサー」という形で制作を指揮しているが、社長であり妻の藪木加佳氏も「プロデューサー」として参加。

「こういう志向が強い番組はミニマムな体制で作らないと良さが出ないと思っているので、『PAPAPAダン!!!』に続いて制作に入ってもらいました。Sunny Picturesの社長としてだけでなく、彼女はもともとタレントのマネージャーで、事務所さんや演者さんのケアもできるので、助かっています」といい、この制作側のファミリー感も“家”を題材にした番組にマッチしているようだ。

  • 藪木健太郎氏

●藪木健太郎
1971年生まれ、三重県出身。早稲田大学卒業後、95年にフジテレビジョン入社。照明部から02年にバラエティ制作に異動して『アヤパン』『力の限りゴーゴゴー!!』『笑う犬』『新堂本兄弟』『爆笑ヒットパレード』などを担当。『爆笑レッドカーペット』『爆笑レッドシアター』『うつけもんシリーズ』『THE MANZAI(第2期)』『ENGEIグランドスラム』などのネタ・演芸番組を立ち上げ、18年から共同テレビジョンに出向。『ザ・ベストワン』『賞金奪い合いネタバトル ソウドリ~SOUDORI~』(TBS)、『NHKだめ自慢~みんながでるテレビ~』(NHK)、『#っぽいウタ』、『両親ラブストーリー~オヤコイ』(読売テレビ)、『ザ・マスクド・シンガー』(Amazonプライム・ビデオ)などを制作し、22年3月末で出向元のフジテレビを退社。メイクスマイルカンパニー「Sunny Pictures(サニー・ピクチャーズ)」を設立し、『芸能人の前にパパであるべし! PAPAPAダン!!!』(中京テレビ)の演出や、現在は『お笑い4コマパーティー ロロロロ』(同)の監修も務める。