JR東海は22日、東海道新幹線の車両が車両基地や駅に入るタイミングで、外観を自動で検査するシステムを開発したと発表した。システム導入後、人手による外観検査業務の多くを削減できる見込み。車両の外観を従来より高頻度に検査できるため、安全性がさらに向上するという。

  • 「外観検査装置」のイメージ。オレンジ枠がカメラ、赤枠が照明(提供 : JR東海)

東海道新幹線では、全車両の外観と機能の検査をおおむね2日以内の頻度で実施している。中でも外観の検査は、社員が全長400mの車両の屋根上と床下を徒歩で目視し、計測器具を用いて実施しているため、多くの労力を要している。そこで、将来の労働力人口減少を見据えつつ、業務改革の一環として外観検査システムを開発した。

このシステムは「外観検査装置」と「パンタグラフすり板検査装置」で構成される。「外観検査装置」は、車両基地の検査庫入口に、車両全体を取り巻くようにカメラやセンサを配置し、約10km/hで入庫する車体・床下機器等の外観を自動で撮影。異常の有無を検知する。新幹線車両の外観全体を自動で検査する国内初の技術であり、ボルトのわずかな緩みを精度良く検知する技術(特許出願済)等の解析プログラムはJR東海が独自に開発したのこと。

  • 「パンタグラフすり板検査装置設置」のイメージ(提供 : JR東海)

「パンタグラフすり板検査装置」は、駅の線路の真上に検査装置を設置し、駅に入る車両のパンタグラフすり板(走行中に架線と摺れる部品)の形状を自動で計測する。70km/hで走る新幹線車両のすり板を自動で高精度に検査できる国内初の技術(特許出願済)を開発し、駅への設置が可能に。発着する全車両ですり板の状態や厚さなど、少ない台数で高頻度に把握できるという。

今後の予定として、2024年度は「外観検査装置」を大井車両基地、「パンタグラフすり板検査装置」を品川駅に設置する。営業車両で検証を進め、最適な仕様を検討していく予定。その後、設置工事の期間を経て、2029年度頃に本格的な運用開始をめざす計画としている。