藤井聡太棋聖への挑戦権を争うヒューリック杯第95期棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)は決勝トーナメントが進行中。4月3日(水)には2回戦の佐々木大地七段対大橋貴洸七段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りの力戦から抜け出した佐々木七段が102手で勝利。強敵を制してベスト4入りを果たしています。

まずは大橋七段がリード

振り駒で先手番を得た大橋七段は珍しく横歩取りを志向。対して後手の佐々木七段が飛車先の歩交換を保留した手からは定跡を外す意図が見て取れます。囲いを簡潔に済ませた佐々木七段は中段に浮遊する先手の飛車を狙った角打ちで積極的に形を決めていきました。

ジリジリとした間合いの計り合いは続きますが、ペースをつかんだのは大橋七段でした。右辺への合わせの歩で飛車を好位置につけたのが佐々木七段の軽視した軽妙手。駒の損得こそないものの、後手が打った角の働きを弱めて先手不満のないわかれに落ち着きました。

佐々木七段が作戦負け跳ね返す

主導権を得た大橋七段は歩の手筋を連発して敵陣を乱します。模様の良さの具体化を目指した一連の手順でしたが、感想戦で大橋七段は決め手に欠いた本譜を思えばさらに力を溜める方針が優ったとの結論に。実戦は局面がほぐれて後手の遊び駒も働きが増しています。

苦しい中盤戦を乗り越えた佐々木七段は銀取りを放置して反撃開始。ノータイムで打った飛車取りの桂が好手で、この飛車をどかせば自玉に怖いところがありません。終局時刻は18時59分、最後まで気持ちよく攻め切った佐々木七段が快勝でベスト4入りを決めました。

佐々木七段は次戦で佐藤天彦九段―西田拓也五段戦の勝者と対戦します。

水留啓(将棋情報局)

  • 2年連続での棋聖挑戦が現実味を帯びてきた佐々木七段(写真は第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    2年連続での棋聖挑戦が現実味を帯びてきた佐々木七段(写真は第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)