日本初開催となる「フォーミュラE」(ABB FIA フォーミュラE選手権)の決勝が間近に迫っている。今回は、決勝前日に日本から唯一参戦している日産フォーミュラEチームのガレージに潜入し、レースに向けて準備を進める様子を見ることができたのでレポートしたい。
フォーミュラEマシンの圧倒的な性能を確認
フォーミュラE世界選手権の第5戦「2024東京E-Prix」大会は、もうすぐ決勝が始まるころだろう。今回は、決勝前日(つまり昨日)に、レースに向けた準備を行う日産フォーミュラEチームのピットガレージを見学してきた。
ガレージ見学に先駆けて、チーム広報からは「日産がフォーミュラEに参戦する意義」は3つあるとの説明を受けた。第1は「量産EVのパイオニアとしての専門性を世に発信すること」、第2は「EVのエキサイティングな世界を表現すること」、第3は「レースが日産のイノベーションの実験台になっている」ということだ。
レースで使用する「GEN3」のマシンは、350kW(470PS)もの強力なパワーを発揮するモーターを、市販電気自動車(EV)「リーフ」の半分という軽いボディ(850kg)に搭載している。結果として動力性能は圧倒的で、停止状態から100km/hまでの加速に要する時間(いわゆるゼロヒャク加速)はわずか2.5秒、最高速度は322km/hというすばらしいパフォーマンスを発揮する。
5年前の「GEN2」時代は市販技術をレースに投入する「ロードtoトラック戦略」だったのが、現在ではその逆になり、レースでの学びを市販EVモデルに集約する「トラックtoロード戦略」に切り替わっているそうだ。
ガレージ内ではオリバー・ローランド選手がドライブする22号車とサッシャ・フェネストラズ選手がドライブする23号車が整備中だった。FIAから割り振られたゼッケンの「23」は、チーム名のニッサン(=23)をイメージさせてくれるのでいい数字だとあるスタッフは話していた。
ただし、カウルを取り外した後部のパワートレイン付近は撮影禁止とのこと。さらに、ガレージの半分を占めるエンジニア用のスペースは、レースの結果を左右する重要なエネルギーマネジメント調整の場であるため、完全なシークレットゾーンとなっていた。
東京のコースはバンピー? サスペンションを入念に調整
GEN3世代のレーシングカーはシャシーやボディ、バッテリー、タイヤ(ハンコック製)など、マシン全体の9割を他チームと共有するスペックカーであるため、日産独自の技術を投入できるのは、エネルギーマネジメントのソフト以外だとインバーターやMGU(モータージェネレーターユニット)、トランスミッション、リアサスペンションなど一部に限られるのだという。今回の東京コースは公道であるためバンピーなポイントが多いということで、撮影はできなかったが、リアサスペンションの調整を入念に行っている様子を見ることができた。
さらに、「GEN2」時代のステアリングも見ることができたのだが、中央にあるデジタル画面の周りには各種アナログボタンやダイヤルが所狭しと設置されていた。背面には何種類ものパドルが取り付けられている。レース中に最大のパフォーマンスを発揮するためには、これらを操作しながら細かく調整することが必要になるという。走行中のドライバーの仕事量が相当なものになることは、容易に想像できる。
見学時間の最後には両ドライバーがガレージに登場。決勝レースでの活躍を誓っていた。