第72期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は二次予選が大詰め。3月28日(木)には計2局が行われました。このうち、関西将棋会館で指された山崎隆之八段―藤本渚五段の一戦は153手で藤本五段が勝利。競り合いの終盤戦を制して挑戦者決定トーナメント入りを果たしました。
相居飛車の力戦
山崎八段は斎藤慎太郎八段を破っての登場。対する藤本五段は一次予選から破竹の5連勝で本戦入りに王手をかけました。両者の初手合いとなった本局は振り駒で後手番を得た山崎八段が雁木調のオープニングを選択、居玉のまま両桂を跳ねる独自の構えを取ります。
仕掛けをめぐる間合いの計り合いののち山崎八段は左辺から動きますが、先手の藤本五段も攻め合いで応戦して譲りません。手に乗って角を差し出したのは後手玉の位置が不安定と見た若々しい踏み込み。しかし山崎八段は数手後に受けの好手を用意していました。
藤本五段が逆転で快挙
自玉そばにと金を作られた局面で軽く金をかわしたのが一手の猶予を生み出すプロ好みの一手。飛車角両方を失うことになるものの、手順に玉を逃げ出して瞬間の安全を買えば反撃に専念できる形です。山崎八段優勢に転じた終盤戦ですが、最後にドラマが待っていました。
山崎八段が歩を打って先手玉に迫った瞬間、飛車打ちの王手で切り返したのが藤本五段渾身の勝負手。自玉に絶対に詰みがないこの一瞬で後手玉を寄せきれれば逆転が見えてきます。山崎八段としては権利と思われた歩の利かしが入らなかったのが大きな誤算でした。
終局時刻は21時23分、最後は自玉の詰みを認めた山崎八段が投了。藤本五段は初参加となる本棋戦で挑戦者決定トーナメントに入る快挙を成し遂げるとともに、51勝目を挙げて充実の今年度を締めくくりました。
水留啓(将棋情報局)