萩原利久&早見あかりは未来&めぐるにぴったり

――辻先生から見て、萩原さんが演じる未来はいかがでしたか。

辻:「実写になるとこうだよね」と、説得力を感じるほどぴったりだと思いました。萩原さんは、たたずまいから“未来くん感”があって……“未来くん感”って何なんだって感じですが(笑)。シュッとしてクールで、ご本人は明るい方だと思うのですが、未来を演じているときの目の暗さがかっこいいです。目の形なのか、とにかく“目”がすごく未来くんです。

――目の形という表現が、漫画家の先生ならではですね(笑)。ちなみに早見さんは、「普通の人だったらトラブルになってしまいそうなことも、『めぐるだから許されるよね』と思わせる女性なので、そんな説得力のある明るさを作るためには大きなパワーやエネルギーが必要」と、めぐる役の苦労を語っていました。

辻:僕もめぐるは、皆の話の中心に必ずいて、こんな人はいないと思うような、「漫画でしか成立しないキャラクター」になるパワフルさを意識して描いていたので、きっと大変だったと思います。実写でめぐるの感情を再現するのはかなり難しいだろうし、演技でどう表現するのか、とても想像のできない領域というか。でも早見さんもすごく明るい方だと思うので、もともとめぐるの要素を持っていた方なのかなと。髪型も原作と同じで、身長も意外と小柄で、ビジュアルからめぐるにぴったり。大満足の配役でした。

――真戸原さんは、原作とドラマを比べていかがでしたか。

真戸原:いち視聴者としての意見になりますが、再現性が高いなという印象で、楽しませていただいています。ドラマを見ていて、「いいところでCMにいくんだな」と思ってしまったとき、僕はもう完全にハマってるなと(笑)。僕はめぐるが、「未来くんが泣いてるの初めて見た」(ドラマでは第1話ラスト)と言うところが好きで。結婚していても、知らないこと、見せてない顔があるんだと感じたシーンでした。

辻:ラブラブで仲のいい夫婦だけど、まだまだお互いに言っていないことがあるという背景を意識して描いたシーンだと思います。後付けかもしれませんが(笑)。そのシーンも含め、生身の人間が演じることで、漫画だと見せずに進むようなキャラクターの内面を視聴者が自然と感じ取れるところは実写ならではだなと、改めて感じました。

辻氏、「皆が動いている姿を見られてうれしい」

――そのほか先生が、ドラマで動いているところを見られてうれしいというキャラクターはいますか。

辻:漫画でも大きく動かしていた四季村さん(時任勇気)、干支さん(大西礼芳)は、ドラマでもどんどん未来たちと絡んでほしいと思いながら見ています。ほかのキャラクターも、もっともっと動いているところが見たくて、「もう事件はいいから、ただ皆が会話してるところを見せてくれ!」と思ってしまうぐらいです(笑)。原作だと名前がなかった編集長も、ドラマ化にあたって名前をつけてもらったりと、膨らませていただいた部分もあるので、僕は皆が動いている姿を見られてうれしいです。

――登場人物が“時”にまつわる名前になっているのが、面白いですよね。

辻:とにかく登場人物が多いので、“時”という関連性を持たせると考えやすいのかなと、思いついた単語や調べて知った言葉を、キャラクターとの相性を見ながら割り振っていきました。未来とめぐるは一番最初に思いついたので、タイトルも最初に決まりましたね。

――また、萩原さんのインタビューでは、「“タイムリープ”を演じていると頭の中がぐちゃぐちゃになる」と、苦戦していることを語っていたのですが、どう整理して作品を描いていきましたか。

辻:最初の企画段階で、「ここで過去に戻って、そのときの日付は何日」「ここでめぐるが死んで、戻るのは何度目」と、時系列を整理した図を作りました。最後までその図通りに進行して、変更することはなかったです。俳優さんたちのインタビューを読むと、いろいろなシーンをバラバラに撮影しなきゃいけないですし、演じるのはすごく大変そうで、描くほうがずっと楽だと思います。

――いえ、演じるのも描くのも、どちらもとんでもなく難しいと思います!

辻:僕は担当の編集さんにかなり管理していただきました。「この日にち違います」、「この人はこの時点でこの事実を知らないんじゃないですか」、「ここでこの情報を出したら犯人ってバレちゃいますよ」とその都度指摘していただいたりして、助けられました。

音楽における“タイムリープ”に似た手法とは

――真戸原さんも作詞や作曲で、辻先生と同じく「ものを書く人間」として、タイムリープというテーマにどんなロマンがあるなと感じますか。

真戸原:僕の場合は、サビから始めるかとか、もう一度この歌詞を使うか、とか4分くらいの構成を考えているくらいですが、音楽には、ビートルズも使っている「リバース」という手法があって。たとえば「ドレミファソラシド」「ドシラソファミレド」と演奏した音をデータでひっくり返すことで、ただ逆に弾くのとは違う、特別な音質での「ドレミファソラシド」「ドシラソファミレド」が作れるんです。タイムリープに近いかもしれません。

辻:へぇー!

――すごいですね、聞いてみたいです。では最後に辻先生から、ドラマ『めぐる未来』今後の見どころを教えてください。

辻:今は未来が1人でアタフタしている状態ですが、ここからは夫婦として協力して、謎に向かっていく姿が見られます。自分自身で描いているときも特に好きなパートだったのですが、さらに夫婦の絆も深まっていくので楽しみにしていてほしいです。そして、未来の成長と、二人の行く末にも注目してください。『めぐる未来』がドラマ化されることになって、初めて脚本というものを読ませていただいたのですが、実際に映像になるとどうなるのかイメージできない部分がたくさんあったので、僕も視聴者の方と一緒に、引き続き楽しみにしています。

――先生が大切にされている“夫婦の物語”がさらに加速していきそうですね。ありがとうございました。

  • 『卵と鶏』第1巻 (C)辻やもり/芳文社

  • アンダーグラフ

■辻やもり
11月17日生まれ、漫画家。2018年デビュー。『めぐる未来』(芳文社 芳文社コミックス刊)全5巻発売中。現在、週刊漫画TIMESで、『卵と鶏』を連載している。コミックス第1巻が3月14日に発売。
■真戸原直人
1977年7月27日生まれ、大阪府出身。2000 年に結成したロックバンド・アンダーグラフのボーカル&ギターを務めている。2004 年のデビュー曲「ツバサ」がCD 累計売上40万枚のヒット作に。代表作にアニメ『弱虫ペダル』 の ED 曲「風を呼べ」、NHK みんなのうたにも選ばれた「こころ」など。バンド結成20周年を迎え、今年は3月17日に東京・APIA40で「Debut 20th Anniversary year 『The Acoustic Request Live』Vol.3」、9月22日に東京・COTTON CLUBで「UNDER GRAPH Debut 20th Anniversary Live ~僕らは変わらずに、 変わり続ける旅をする。 2024 ~」を開催する。個人では、日産自動車や東京ガスのCMナレーションを担当し、V6や私立恵比寿中学への作詞提供も行うなどマルチに活躍。