第100回大会を記念して、様々な盛り上げ展開を実施している。12月12日にはかつての選手や監督・家族・旅館の女将まで取材して秘話を紹介する名物コーナーを書籍化した『箱根駅伝「今昔物語」100年をつなぐ言葉のたすき』を刊行。同30日には伝説のシーンをドキュメンタリーや証言、再現ドラマで描く初のゴールデン特番『箱根駅伝 伝説のシーン表と裏 3時間SP』を放送した。

さらに、9月には番組公式ページで87年以降の本戦ダイジェストなど400本を超えるアーカイブ動画を公開。「100回大会に向けて2年がかりで準備しました。編集は大変でしたが、中継と一緒でたすきリレーは全部見せると決めたんです。これまで中継した全大会分なので、我々が見ると勉強にもなります」といい、今後の大会のダイジェストも公開してアーカイブ化する計画だ。

全国の大学に門戸が開かれた予選会は、初めて地上波で全国ネット中継。「予選会を初めて見る視聴者も多かったと思うので、ルールを丁寧に説明したり、なるべくたくさんの大学を映して、名前を呼ぶというのは、本大会と同じポリシーで臨みました」といい、その結果、「数字が全てはないですが、関東以外の地区の視聴率もとても良かったです。予選会から全国放送ができたことで、100回大会へ大きな弾みになったと思います」と手応えを語った。

また、本戦当日の放送センターは、「ゲストの方の人数が増えて、豪華になります。『今昔物語』も100回大会を意識したものになります」と特別仕様を予告するが、大前提として「箱根駅伝をテレビが変えてはいけない」という姿勢は堅持する。

「100回目といっても、走る選手にとっては大事な1回ですので、あまりこちらが目新しいことや奇をてらったことをやるのも違うのではないかと思います。“良い放送だったね”と言われるよりも“良いレースだったね”と言われることが、我々にとっても一番の喜びですので」

今年は、コロナによる制限のない大会として4年ぶりの開催となるため、「もちろん全選手に頑張ってほしいですが、最終学年の4年生にとっては、最初で最後のコロナの規制がない箱根になるので、特に頑張ってほしい気持ちがあります」という思いも。主催者である関東学連のスタッフも、現在の学生たちはコロナ禍での大会運営しか経験していないため、より多くの沿道観戦が予想される中での準備が大変だそうで、「本当に一緒に頑張らせていただきたいというのが、僕らの思いです」と話した。

東京農大の大根の収穫を取材できる理由

毎年1月2日・3日に行われる『箱根駅伝』だが、ディレクターやアナウンサーたちは1人1~2校を担当し、予選会を含む全ての出場大学を、年間を通して取材。大会翌日の1月4日から新チームが始動する大学に足を運び、その後も、入学前から練習に参加する新入部員を確認するなどし、3月には『箱根駅伝』に向けた取材方針を決める。

春には入寮、新人戦、関東インカレ。夏には合宿、日本インカレ。そして秋になると駅伝シーズンに突入し、10月の『箱根駅伝』予選会を経て、正月の本番へ。このように、各大学の駅伝部・陸上競技部におけるイベントを追いかけながら、普段からチームに寄り添って取材を重ねているからこそ、本戦の中継で選手たちの裏側のドラマを伝えることができる。

今回の予選会の中継番組では、10年ぶりの本戦出場を決めた東京農業大学の応援団が名物の大根踊りで使用する、大根の収穫作業の様子を伝えていたが、こうしたニッチなトピックを紹介することができるのも、足繁く通う取材の賜物だ。