女優の武井咲が、30年ぶりとなる地上波ドラマ復帰を果たす先輩・後藤久美子と、テレビ朝日系ドラマ『顔』(2024年1月3日 21:00~)でW主演を務める。これまで幾度となく実写化されてきた不朽の名作『顔』を浅野妙子氏の手で現代版へと大胆にアップデートする今作。殺人を犯した「覆面アーティスト」井野聖良(武井)と殺人犯を目撃した「弁護士」石岡弓子(後藤)による、追いつ追われつのサスペンスが展開していく。

自身の代表作ともいえる松本清張作品『黒革の手帖』第2弾の『拐帯行』以来、第2子出産の産休を経て約3年ぶりのドラマ復帰となる武井。覆面アーティストの役作りや今後の女優業の展望について聞くと、身近なアーティストである夫の全面協力や、娘の応援といった家族のエピソードが飛び出した。

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    女優の武井咲 撮影:宮田浩史

夫がディレクターになりレコーディング

――覆面アーティスト・井野聖良という役作りはどんなふうにされましたか。

今回ギターを弾いたり、歌を歌うシーンがあると聞いて、覆面ってことは私じゃなくて代役の方がいらっしゃるのかな? と思ってたんですけど(笑)。台本を読んだときに、聖良にとって歌は自分の一番の軸になる部分だと感じましたし、それをほかの方がやるという考えは、自分の中で全くなくなって。監督やプロデューサーに「私にやらせてもらえないですか、私の声で聞いてみてもらえませんか」と自分からお願いしたんです。夫に協力してもらってレコーディングをして、どの曲がいいかと私の声で仮歌を聞いていただいて曲も決まりました。一番近くに夫というアーティストがいたので、たくさん音楽のことを聞きましたね。

――旦那さんからどんなアドバイスをいただいたのか、教えてください。

候補曲がいくつかあったのですが、ドラマに合うかどうか、自分の歌声でスタッフの皆さんに判断してもらいたいという思いを夫に伝えたら、「じゃあレコーディングしよう」と言ってくれて。ドラマには2曲登場するのですが、夫がディレクターをしてくれたので、私もすごく安心できました。普段から「私はこういうふうにやりたいんだよね」という考えをよく話している分、すべて言葉にしなくても理解してくれるというスムーズさもあって、自分が不安に感じていることをそっと助けてくれるというか……本当に助けられました。

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『Mステ』チームの演出に緊張し“子鹿”に

――本当に心強い存在ですね。お仕事で歌うのはかなり久しぶりですか。プライベートで歌う機会はありましたか。

そうですね。一度CDをリリースさせていただいたことがあるのですが、それ以来です。自宅で鼻歌を歌っていたぐらいで(笑)。

――久しぶりに本格的な歌に挑戦した感想を教えてください。

もう、緊張しましたね。声も手も震えました。ドラマの中で歌うシーンは『ミュージックステーション』チームの方々が演出してくださって、本当に素晴らしい環境の中で歌わせていただいたんです。プレッシャーで子鹿みたいになっていました(笑)。

――さすがテレビ朝日さんのドラマですね。もう『Mステ』に出たも同然では。

いやいやもうそんな!(笑) 恐れ多いですが、スタッフさんたちには、熱意を持って作品にお力添えいただいて。ドライアイスのような演出や、照明にもたくさんの方が携わってくれて、素敵なステージにしていただきました。

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娘の「寂しいけど頑張ってね」という応援が力に

――今回の物語の中では、後藤さん演じる弓子と紗由美の物語も描かれます。紗由美が巻き込まれた事件に弓子がどう手を差し伸べるか、というストーリーを読んで感じたことを教えてください。

やっぱり自分より大切な存在がいるという弓子さんの思いには共感しました。今回の物語で起こる事件はとてもディープなお話なのでとても想像ができないですが、子どもには「私は一番の味方だよ」と常日頃伝えています。私自身も両親がずっとそう言ってくれていたので、同じように「親はいつどんなときも味方」ということは、覚えていてほしいなと思います。

――武井さんもご両親のその言葉に救われてきたんでしょうか。

そうですね。現場にはマネージャーさんたちもいてくれて決して一人ではないですが、女優として“戦うとき”は自分1人だったりするので、そんなときに絶対的に味方でいてくれる家族の存在は心強く思えました。

――武井さんが久しぶりに主演ドラマのお仕事をされるということで、ご家族はどんな反応なのか、教えてください。

すごく楽しみにしてくれています。「ママ、仕事行ってくるね」と言うと、「寂しいけど頑張ってね」と応援してくれて、その純粋な気持ちに救われていますし、支えられていますね。

武井咲

今後は母親役にも挑戦してみたい

――ドラマの中には、武井さんが演じる聖良が「歌うことは戦い」と話すシーンがあります。武井さんにとって、演じることとは。

演じること……自分が一番集中できる場所でもあるし、熱を爆発させられる場所でもあるし、言葉で表現するのが難しいですが、私にとっても“戦い”かもしれません。一つひとつ積み重ねてきたお芝居が、完成して一本の作品になったときの喜びは、何にも変えられない、ほかのどんなときにも感じられないもので、癖になるんです。あとは、自分自身の人生の変化も活かせるお仕事なので、奥が深いなと感じます。

――いろいろな経験をすることで、女優としてのアウトプットが変化したと感じることもあるのでしょうか。

経験しないとできないことがあると思います。結婚する前とあとでは物事の捉え方や見え方も違うので、人生の変化がお芝居にプラスの影響をすごく与えてくれているなって。

――では、出産を経たことで母親の役をやってみたいという目標も。

やってみたいです! まだ子どもは我が子しか知らないので……もちろん普通はそうなんですけど(笑)。母親役を演じることで自分がどんな気持ちになるのかとても楽しみですし、まだ経験したことのない役柄にどんどん挑戦したいです。

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■武井咲
1993年12月25日生まれ、愛知県出身。2007年、雑誌『セブンティーン』の専属モデルとしてキャリアをスタート。2008年に『櫻の園-さくらのその-』で映画デビュー。『るろうに剣心』シリーズ(12年、14年、21年)で、幅広い層から支持される。『愛と誠』『今日、恋をはじめます』(12年)、『黒革の手帖』(17年、21年)などに出演。
■スタイリスト:二見綾子/ヘアメイク:竹下あゆみ/■衣装:カーディガン、シャツ、パンツ:すべてAKIRANAKA/アキラナカ(問い合わせ先:ハルミ△ショールーム)