2023年12月16日の『ウルトラマンブレーザー』(テレビ東京系)は第22話「ソンポヒーロー」を放送。今回登場した「どくろ怪獣レッドキング」と「冷凍怪獣ギガス」は、ウルトラマンシリーズの原点『ウルトラマン』(1966~1967年)以来、およそ57年ぶりの「共演」となった。
空想特撮シリーズ『ウルトラマン』の第8話「怪獣無法地帯」でデビューを飾ったレッドキングは、チャンドラー、マグラー、スフラン、ピグモンといった怪獣たちが多数棲息する多々良島でもっとも凶暴と恐れられ、実際チャンドラーの片翼をもぎとったり、岩石を落として善良なピグモンの命を奪ったりと、弱肉強食の世界に君臨する「王」として存在感を発揮した。
一躍人気怪獣となったレッドキングは、第25話「怪彗星ツイフオン」で堂々の再登場を果たす。遠い宇宙の彼方から、赤い尾をひいて地球に接近してきた巨大彗星ツイフォンの恐怖を描いたこのエピソードは、1967年の正月(1月1日)放送にふさわしい大スケールの娯楽特撮巨編として、高い人気を誇っている。
日本アルプスの岩山の中から出現した「怪彗星ツイフオン」のレッドキングは、廃棄処分となった水爆を6個も飲み込んでいるという設定。日本アルプスにはすでにギガスの姿が認められており、さらにツイフォンに乗って飛来したと思しき彗星怪獣ドラコまで現れ、美しい銀世界の雪山を舞台に巨大怪獣が三つどもえの激闘を繰り広げるスペクタクルが見どころとなった。
「ソンポヒーロー」冒頭では、「怪彗星ツイフオン」に登場した個体を想起させる黄金色のレッドキングと、ギガスの迫力満点の大決闘が展開した。雪に覆われた美しい山々のビジュアルも、当時のイメージを見事に踏襲している。しかし今回のギガスは『ウルトラマン』当時よりも少々頼りない風貌で、戦闘意欲まんまんのレッドキングに最初から押されているようにも見える。両怪獣のバトルシーンに『ウルトラファイト』(1970~1971年)で多用された軽快な音楽(初出は『ウルトラマン』第30話のBGM)が使われたのも、遊び心のある粋な演出だといえる。
日本怪獣損害保険のさえない営業マン・テツオが担当している平凡な住宅地に、あろうことかギガスとレッドキングが現出。これによって大パニックに陥る町内や、保険勧誘を通じて親しくなった孤独なおばあさん・ミチコとテツオの心あたたまる交流描写などがドラマを盛り上げた。
ウルトラマンブレーザー、およびアースガロンとの対決シーンでは、ギガスが冷凍怪獣の名に恥じない「口から強力な冷気を噴出」という特殊能力を「初披露」し、頼りないツラがまえながら、親分のレッドキングをサポートする意外な頑張りを見せた。一方レッドキングは、戦闘に際して指をポキポキ鳴らしたり、腕を組み合わせてウォームアップしたりと『ウルトラマン』当時の印象的なしぐさを再現し、今もなお現役バリバリ、やる気まんまんなところを見せていた。
怪獣との戦いに臨むSKaRD(スカード)隊員とは別に、ふだん目立たない保険会社の営業マンにスポットを当てた今回は、特撮怪獣ドラマの無限の可能性を示す好編となった。次回の第23話「ヴィジター99」からは『ウルトラマンブレーザー』の最終章となり、これまでのエピソードで巧みに張り巡らされていた伏線が次々と回収されていくようだ。かつてないウルトラマン像、そして怪獣に挑む人間たちのリアルな姿を描こうとしている意欲作『ウルトラマンブレーザー』、最後まで絶対に目が離せない。
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