「一生に1度はオーロラが見てみたい」って思っているひとは多い。でも、どこに行けばいいのだろう。オーロラ観光といえば北欧やアイスランドなどが思い浮かぶが、特に有名なのはカナダのイエローナイフとホワイトホースだ。

それでも「結局どこに行けばいいの?」と思うひとも多いだろう。そんなときは、どのくらいオーロラが見たいのか、自分とよく相談するといい。

その旅で見たいのは「オーロラだけ」だろうか。

大自然も楽しみたい人には、ホワイトホースのあるカナダ・ユーコン準州を勧めたい。 その理由をオーロラ写真と一緒に説明しよう!

オーロラ観測の条件って?

まずはオーロラについて整理しよう。オーロラ観測の条件は3つ。

  • オーロラベルトの近くであること
  • 晴れていること
  • 暗いこと
  • 雲の上にオーロラが出ている…(ホワイトホースにて)

「オーロラベルトの近くであること」

オーロラとは、太陽エネルギーと地球の大気がぶつかり、緑から白、ときには赤く光る自然現象だ。日本語では極光(きょっこう)、英語ではノーザンライツとも呼ばれ、その名の通り地球の極地で発生する。オーロラが発生しやすい地磁気緯度55〜70度のあたりを「オーロラベルト」と呼び、その直下なら統計上年間200日以上、オーロラが出現している。冒頭に羅列した国々が、そのオーロラベルト直下というわけ。

「晴れていること」

オーロラは地球の大気と宇宙空間のはざま、地上100〜500キロメートルの上空で発光している。だから当然、星空が見えないくらい曇っていては、オーロラは見えない。雲海を見渡すジェット機が地上10キロメートルを飛んでいるのだから、いかにオーロラがはるか上空で発生してるかが分かるだろう。

「暗いこと」

オーロラの活動に気温は関係ないんだけど、どこも地球のはじっこの「極地」だから、夏は日が沈まず暗くならない。だから必然的にオーロラは冬のイメージがある。ただ、極地の冬は日本の「寒い」なんてもんじゃない。マイナス40度の世界は、川だって凍ってトラックが通る道になったりする。

2024年からオーロラ活発期!

オーロラの発生が太陽活動に関連することは、先に書いたとおり。では、いつ太陽が活発なのかというと、まさにこれから、なのだ。

太陽活動は約11年の周期。次の極大(太陽活動がもっとも活性化すること)は2024~5年付近だと予想されており、現在、その極大期に向かって活発になる。

先日、北海道で赤いオーロラが観測されたのもこのためだ。
いままさに、第25太陽活動が上昇を続け、2025年ころと予想されていた極大期が少し早まるのではとはなす専門家もいる。

これまでの知見から、2024年、そのあと数年(2028年頃まで)は オーロラが見えやすい時期になることが予想されている。

ちなみに、この期間以外にオーロラが見えないということはなく、あくまで活発なオーロラが見える頻度が高まるということだ。

海外旅行が再開してきた今、満を持してオーロラハントに旅立つ準備をはじめよう!

ショッピングがメインなら北欧、オーロラ重視ならカナダがおすすめ

  • アイスランドのヨークルスアゥルロゥン氷河湖で見たオーロラ

オーロラ観賞について調べたところ、少し前だとオーロラといえば北欧のイメージが強かったがこれはプロモーションによるもの。オーロラ観賞を目的にするなら晴天率に注意したい。クリスマスのイメージが強いフィンランドなど雪がふかふかと降り注ぐ地域には、当たり前だが分厚い雪雲が発生する。ただ、雪雲が発生する場所は寒さもそこまで冷え込まず真冬でマイナス15度前後。日本の真冬の装備くらいでオーロラ鑑賞ができる。
かわいらしい雑貨のショッピングや、流行のサウナなど、趣向を凝らした観光をまず楽しみたいなら北欧がおすすめ。オーロラは「運が良ければ見られる」くらいに思っておくと気が楽だ。

アイスランドは地球とは思えない絶景が続き最高だが、景勝地でオーロラを見ようと思うとガイドの手配が必要で、ある程度の旅人レベルが求められる。初心者にはまとまった予算が必要だ。

となると、オーロラ重視で楽しみたいならカナダがおすすめ、ということになる。

  • 地磁と関係しているオーロラは北極地点近くで発生しているとき、実は同じものが南半球でも発生してる。ただ、南半球はオーロラベルト直下に陸地がなく、観測が難しい。写真はニュージーランド・クライストチャーチ近郊で撮影した赤い「低緯度オーロラ」。

カナダならイエローナイフとホワイトホース、どっちがいいの?

  • 有名なイエローナイフのオーロラヴィレッジ。とにかく広い!

実は、わたしは前回のオーロラ活発期にオーロラに魅せられた元「オーロラ王国ブロガー観光大使」だ。オーロラ王国とはカナダのこと。オーロラベルトの直下であることに加え、晴天率が高い。寒さはガソリンも凍るマイナス40度の世界と想像を絶する寒さだが、その分乾燥していて雲が少ないのだ。

「何が何でも絶対オーロラがみたい」というガチ勢なら迷わずイエローナイフへ行って欲しい。カナダ中央北部ノースウェスト準州にあるイエローナイフは特に晴天率が高く、3日滞在すれば95%はオーロラが見られると言われている。

ほぼ全員の日本人オーロラ観光客は「オーロラヴィレッジ」という観賞地へ行くことになるが、世界的に見ても老舗なオーロラ観測に特化した施設なだけあってよくできている。暖をとりながらオーロラ出現を待つ「ティピ」と呼ばれる先住民テントは写真に撮っても絵になるし、なにより広い。

ただ、イエローナイフは観光スポットが少なく、郊外のドライブへはガイドが必須。レンタカーがなくても街中で滞在を完結させることはできるが、極地の絶景を楽しみたいならそれなりにお金がかかる。

オーロラは重視したいけれど、観光もそれなりに楽しみたいならホワイトホースはどうだろう。

ゴールドラッシュの歴史残る、大自然の街ホワイトホース

  • ユーコン川沿いにマイルズトレイルという散歩道があって、憩いの場になっている

日本から一番近いカナダ・西部のバンクーバーから飛行機で2時間半。ホワイトホースはアラスカの東に隣接するユーコン準州の州都だ。高台にある空港から車で10分ほど下ると、ユーコン川沿いにあるダウンタウンに到着する。

  • かつて海路からホワイトホースをつないだ「ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルート」は観光列車としてカークロスから乗車できる

ここは1896年に起こったクロンダイクゴールドラッシュで発展した街で、その当時は一攫千金を狙った冒険者達で賑わった。それは、アラスカの港町スカグウェーからホワイトホースまでの渓谷に鉄道を走らせたほど。
当時激流だったユーコン川は激しい白波が立ち、これが白馬に見えたことからこの土地はホワイトホースと名付けられた。この川を下って、黄金が見つかったドーソンシティを目指したという。

2023年9月、世界遺産に登録されたドーソンシティ一帯

  • ドーソンシティ近くにあるトゥームストーン準州立公園は東京都と同じくらいの広さを有し、8月下旬から9月上旬にかけて「ツンドラ紅葉」で真っ赤に染まる

ただ、そのゴールドラッシュは2年で終わり、採掘地のメインはアラスカへ移動。ホワイトホースはその中継地点として変わらずに発展し、観光の街としても栄えてきた背景がある。現在もドーソンシティでの金採掘は行われており、2023年9月にはドーソン・シティ以北の一帯がユネスコ世界遺産として登録された。雄大な自然を楽しむ観光地として四季を問わず人気というわけ。

自然の魅力を感じるには郊外が一番だが、ユーコン川沿いに発展している街中は歩くだけでも楽しい。

でもできれば、1回はガイドさんにお願いして大自然を感じてきて欲しい。

  • 植生の違いを感じられる山歩きが楽しい。写真はホワイトホース近くにあるサム・マクジー・ハイク・トレイルヘット。見晴らしが良いところまで2時間程度で行ける

そう、決して勝手気ままに気持ちの良い山道を歩いてはいけない。野生動物優位のユーコン準州では、ハイウェイの隣を悠々とグリズリーが歩き、人間の存在なんてちっぽけなのだ。

きちんとした知識と装備を身につけたプロと一緒に、大自然にお邪魔しよう。

  • 高速道路沿いに野生のグリズリーが歩いていた

究極のオーロラ観賞「オーロラフライト」に搭乗!

  • オーロラ目掛けて飛ぶ世界初の観光用「オーロラフライト」で撮った写真

世界的にオーロラ観賞が観光の要になったのは最近のことだ。実は、オーロラブームの火付け役は日本などアジア諸国だったのだが、近年メキシコ人の観光客が増えているという。
国境が開き、カナダとの直行便ができたことが大きなきっかけではあるが、初めて目にする雪景色に子どもから老人まで大はしゃぎするそうだ。

それにともない、ホワイトホースでのオーロラ観光地も整備されてきた。
これまでは郊外のセレブ向けロッジに滞在するか、個人ガイドを雇う必要があったが、ツアー会社などが日帰り利用できる観賞地をオープン。ホテルからバスでピックアップしてもらい、オーロラ観賞を楽しむことができる。

  • ホワイトホースの繁華街から空港までは車で15分と好立地

また、ホワイトホースでは世界的に見ても珍しいアクティビティが体験できるようになった。それが「オーロラフライト」だ。ユーコン準州の航空会社エアノースのB737という機体を使い、オーロラを目指して飛んでいく。

  • 出始めのオーロラは上空にあったが、強くなるとどんどん降りてきた

オーロラ観測用のチャーター飛行機はこれまで存在していたが、それは研究者や報道関係者向けのもの。観光目的のチャーター便はホワイトホース空港発のエアノース社が初めてだという。
これは、オーロラベルト直下の町に、地元航空会社があり、空港がダウンタウンからほど近いという幸運に恵まれてのこと。

  • 窓をのぞき込まないと、オーロラの全景がわからない。体感ではオーロラに飛び込んだようだった

現在は阪急交通社が企画するツアーに参加して貸切チャーター機に搭乗できる。飛行機の中は空調も効いていて快適で、雨が降ろうが曇ろうが、その上を飛んでいるため問題ない。おまけに決まった航路はなく、機長がオーロラ目指して飛び、オーロラの真下に来たら右の席でも左の席でも見えやすいよう旋回してくれた。

  • オーロラ撮影の長時間露光を利用して、「ユーコン」と書いてみた

それでもオーロラとの遭遇は時の運だ。でも、なるべく確率を高めることはできる。しかもこれからオーロラ活発期だ。
カナダ・ホワイトホースには「一生に1度」では済ませたくないと思うようなオーロラ観賞体験があった。