テレビ東京系で放送中のドラマ『きのう何食べた? season2』(毎週金曜24:12~)。よしながふみ氏による同名コミックの実写化作である同作は、2LDKのマンションアパートで同居する、料理上手で几帳面・倹約家の弁護士・筧史朗、通称・シロさん(西島秀俊)と、恋人で人当たりの良い美容師・矢吹賢二、通称・ケンジ(内野聖陽)の毎日の食卓を通して浮かび上がる、男2人暮らしの人生の機微を描く。2019年にseason1が放送され人気を博して以来、SPドラマ、2021年の映画化を経て待望のseason2に。第1話再生数は同局の歴代1位を記録するなど、ますます勢いを増している。

今回は、シロさんとケンジのゲイ仲間である航(通称:ジルベール)を演じる磯村勇斗にインタビュー。実際の社会をとりまく状況に対してエンターテインメントとしてのテレビドラマが担うもの、そしてテレビ東京のドラマの面白さについても話を聞いた。

  • 磯村勇斗

    磯村勇斗 撮影:泉山美代子

■磯村勇斗がドラマ『きのう何食べた?』5年間で感じたこととは

――season1が放送されてから5年経ち、その間にLGBTQ+の方々をとりまく環境も変化していると思います。磯村さんは航を演じて、どのように感じていましたか?

最初のシーズンから確かに4~5年経っていて、その間に日本でもLGBTQ+に関してのニュースが放送されたり、関心も深まってきてはいるなと感じつつ、僕も海外に住んでいる友人は「まだ日本は遅れている」という話をしていました。ただ『きのう何食べた?』という多様性の含まれるドラマがたくさんの人に愛されているということは、ドラマを観てくださる皆さんがこの物語を自然に受け止めてくれているということなのかなとも思います。難しい問題だと思うのですが、ドラマは関心を持ってもらう一つのツールでもあるだろうし、皆さんに応援していただける作品になっていることをうれしく思います。

磯村勇斗

――そんな作品に参加する上での使命感などはありますか?

どんな役に対しても、責任感を持つことは根底にあります。その上で、当事者の方に失礼のないように敬意を持って演じるというところは、season1の時から1番大事に心がけていました。役者だけじゃなくて、作品に携わるみんなで共有しながら作品を作っていくということを大事に取り組んできました。

――今回は航の過去のエピソードも出てきましたが、理解が深まった点などはありましたか?

今までも、航はたまに筧さんたちの前で自分たちの関係に対して強いことや、諦めみたいなことをポロッと吐露するところがあったんですけど、「season2」ではどうしてそういうことを言っていたのか、背景が少しわかるエピソードだな、と。観ている方にも、より深くご覧いただけるんじゃないかなと思いました。

――磯村さんにとって、このドラマの魅力はどんなところにありますか?

とにかく優しいドラマだと思います。心が温まるし、性別というものも関係なしに、人間同士の深い愛情であったり、お互いにしかわからないものがある。生きている中で、好きな人ができればそういう気持ちにもなるし、多種多様でいろんな思いを持ってお付き合いをしている方たちがいるので、すごく視野が広がるドラマだと思います。

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――season1がドラマ化される際に、「テレ東なら期待できる」という声もあったと思います。磯村さんも、テレ東ならではと思う点、信頼できる点などは感じていましたか?

ええもう、やっぱりテレ東さんはすごいですよ!(笑) 冗談みたいに言ってしまいましたけど、テレ東さんの作るドラマは攻めたものが多かったり、なかなか普通は描けないものを描いて挑戦していくという、クリエイティブな発想が含まれている印象があります。

僕も数本しか携わっていないんですけど、一緒に創作をしていけるイメージがあって、撮影現場に行くのが楽しいですし、メッセージ性がありつつエンターテインメントとしても成立させていく企画力、発想力がすごいなと思います。新鋭の監督や映画監督が撮ったりもするし、ジャンルにとらわれないでドラマを作られている、面白いことをしてくださるイメージがあります。

『何食べ』もseason1が始まった時は、こんなに長く航を演じることになるとはまったく予想していませんでした。これだけたくさんの方に愛していただける作品、役にもなかなか出会うことがないので、自分を航としてキャスティングしてくださった制作陣の皆さんにも感謝しています。

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■磯村勇斗
1992年9月11日生まれ、静岡県出身。2015年、『仮面ライダーゴースト』にレギュラー出演。2017年には連続テレビ小説『ひよっこ』でヒロインの相手役を務めて注目を集めた。近年の主な出演作に、映画『東京リベンジャーズ』(21年・23年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)、『PLAN 75』『ビリーバーズ』(22年)、『渇水』『波紋』『月』『正欲』(23年)、ドラマ『今日から俺は!!』(18年~)、『恋する母たち』(20年)、Netflix作品『今際の国のアリス シーズン2』(22年)など。公開待機作に映画『若き見知らぬ者たち』(2024年公開)がある。