フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、5日に放送される『からだに記す女たち ~女体書道を願うわけ~』。肌に書を記す「女体書道」のモデルになる女性たちを追った作品だ。
書家の小林覚さんが、女性の希望する詩や言葉を体に書き、アート作品として写真に残す「女体書道」。彼女たちが自らの肌をあらわにしてまでモデルを志願する背景には、どんな思いがあるのか。彼女たちを取材した髙橋麻樹ディレクターに話を聞いた――。
■それぞれの思いが書に…アートだけではない深さ
「女体書道」は口コミや個展で広まり、今では「モデルをしたい」という女性たちが後を絶たず、中には「2年も待った」という人がいるほどの人気。高橋Dは、取材に入る前にその写真集を見ただけでは、なぜ女性たちが体に書を記すことを望むのか理解しきれなかったというが、実際にその瞬間を目の当たりにして、大きく印象が変わった。
「女性の肌は、若かったら張りがあって脂が墨を弾いたり、逆に年令を重ねると墨がしっくりきて馴染んだりするので、それぞれの年代ならではの表現になるんです。さらに、人によって絵はもちろん、書体も変わってくるので、それが一人ひとりの個性になって出るというのを知って興味深く思いました」
放送では紹介していないが、女性が表現したい文字に合わせて、小林さんが自宅の庭にある花や木を持ってきて、それを髪の毛に挿すという演出も。そうしたビジュアル面に加え、「その人が抱えている悩み事などが文字に表れているので、写真で見たときにアートとして楽しめるのと同時に、それだけではない深さがあります」と、女体書道の特色を捉えた。
書き入れる文字は、女性側が「こういう思いを書いてほしい」と伝え、それを受けて小林さんがデザインや言葉を提案。その人の体の大きさによって文字数にも限度があるため、構図も踏まえて双方が納得するまで打ち合わせする。最終的に決まるのは、本番当日までギリギリになることもあるという。
■自分のことを包み隠さず語る女性たち
今回の番組制作のきっかけは、小林さんの大学の先輩に当たる元フジテレビの笠井信輔アナウンサーの紹介。これまでテレビの取材は断っていた小林さんだが、番組側からの「小林さんではなく、モデルである女性たちを番組のテーマにしたい」という提案を受け、応じることになった。
彼女たちには共通して、自分のことを包み隠さず話してくれる印象があったという。
「私がインタビューすると、まるで物語の主人公であるかのように、ご自身のことをめちゃくちゃ話してくれるんです。自分の思いや家族に言えないことなど、抱えているものがどんどん出てきて、こちらが“そこまで聞いてないのに”というところまで、赤裸々にしゃべってくれました」
様々な悩みや葛藤を抱えていた彼女たちは、女体書道のモデルという“主人公”になることで、次のステップに進む勇気を得ているようだ。しかし、「女体書道をやったからといって、誰もが変われるということではなくて、やっぱり自分次第なんだと思います。生きていく中で、“自分はこんなものじゃない”とか“もっと輝けるはずだ”と、一生懸命もがくことが大きいのではないでしょうか」と受け止めた。
自身の肌を大きく露出することになり、当然顔出しNGの人もいたが、「取材していくうちに、『やっぱり顔出しても大丈夫です』と変わる人がいたんです」といい、実際に放送で顔出しNGなのは、1人のみ。高橋Dは「なぜ途中からOKしてくれたのか、よく分からないんです」と語るが、女体書道の本番に向けて心境の変化があったのかもれない。