■笑ってしまってNGを出したことも
――共演して初めて感じた意外な点はありましたか。
森山:自分の中を空洞化させることによって役を取り込んでいくという考え方がありますが、“器”としての自分をすごく理解している人なのかなと。芝居のイメージもしっかりと持って動いていて、熱量を持って現場に立っている姿を見られて刺激になりました。
向井:僕は、意外とよく笑うんだなって。
森山:(笑)。
向井:笑っちゃってNGということもありまして(笑)。
――たとえば、どんなシチュエーションだったんでしょうか。
向井:「もっと大きな声で」とひたすら言われ続けたシーンがあったんです。音楽が鳴っている場所だから大きな声で話してくださいという指示だったんですけど、実際には音楽が鳴っていないのでなんだか変な空間になっていて、そりゃ笑うよなっていう。あとは先ほども言った通り“毛色が違う役者さん”だという印象を持っていたので、小林がどんなふうにセリフを言うのか、台本がどう立体化されていくのかがすごく楽しみで。森山くんとだったら、その場でセッションのようなものが生まれてくるだろうから、自分の中でどう動こうとか、あまり決めずに現場に行っていました。どうボールが飛んできて、どう投げ返して、どんなキャッチボールができるのか、共演が初めてだったから読めなくてすごく楽しかったです。今回は受け手になる場面も多かったのですが、森山くんがシーンをどうコントロールするんだろうかワクワクしていましたし、実際にやってみると、予定調和じゃないシーンが出来上がって、クリエイティブだなと感じさせられました。
■お気に入りシーンはラップバトル
――これまで放送された話の中で、お気に入りのシーンを教えてください。
向井:個人的に初めての経験だったという意味でも、ラップバトルですかね。KICK THE CAN CREWのLITTLEさんに見ていただくという本格的な監修もあって、レコーディングにもLITTLEさんが来てくださったんですけど、結局撮影では生歌でやりました(笑)。ラップはテンポが速いので、イヤモニから聞こえる自分の声に合わせるように口を動かしてもズレるんですよね。生でやったほうがライブ感が出るし、お客さんの声も入れられるしということで。
――本番では上手くできましたか。
向井:そもそも孔明のラップはお経と言われているぐらいで、ラッパーの役ではないから完璧にやる必要もないし、意図している通りに、異物を見せているような異色のシーンになったのではないかと思っています。
■孔明の帽子は機械が仕込まれていて重い
――孔明が当時の衣装のまま現代にやってくるところも今作の面白さの1つになっていますが、衣装を着た感想を教えてください。
向井:衣装は本当に力が入っています。演出の渋谷さんの「現代の中で異質な存在に見えてほしい」というオーダーのもと、決定までに数回衣装合わせをしました。高いヒールを履いて、ボリューミーな衣装を着た孔明がクラブの中を歩いているだけでもう面白いですよね。僕からも、袖の部分にもう少しボリュームを持たせたほうがバランスがいいんじゃないか、迫力が出るんじゃないかと提案して、さらにボリュームアップさせた部分もあります。現代の人たちと圧倒的な差別化を図ることで、逆に孔明の説得力が増すと思うんです。いろいろな戦略を立てて一人のアーティストを導いていくうえで、こういう見た目の人がそれらしいこと言っていたら信じてしまう、そんな信頼感を生むインパクトが必要だなと。帽子には、計略を考えているときに煙が出るようにという渋谷さんのアイデアで、機械が仕込まれているので重いです(笑)。
森山:孔明だけではなく、僕やほかのキャラクターをどう色分けするか、原作からどう飛躍させるか、衣装さんがすごく考えてくれたよね。
森山:一つひとつのディテールに対してのこだわりが素晴らしかったです。そして、何と言っても孔明はデカい(笑)。足の先から頭のてっぺんまでで2メートル10センチぐらいになっていて、衣装としてしっかり作っているんだけど、ビジュアルの見せ方が「漫画だ!」と感じるインパクトでした。
■見どころは英子の成長
――最後に、今後の展開の見どころを教えてください。
向井:この作品の一番の軸は英子の成長物語。サマーソニアというステージに向けて英子がどう勝ち上がっていくのか、どんな成長を遂げていくのか、注目してください。
森山:英子と孔明がいろいろなものを乗り越えて、大きくなっていく姿を楽しんでいただけたら。クライマックスに向けてステージの規模も大きくなっていって、ますます盛り上がっていきます!
1982年2月7日生まれ、神奈川県出身。06年に芸能界デビューし、10年に連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(NHK)でヒロインの夫を演じて注目を集める。近年の主な出演作は、ドラマ『パンドラⅣ AI戦争』(18年)、『わたし、定時で帰ります。』(19年)、『麒麟がくる』(20年)、『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?』(22年)、『警部補ダイマジン』(23年)、映画『ザ・ファブル』(19年)、『引っ越し大名!』(同)、『ウェディング・ハイ』(22年)、『映画 イチケイのカラス』(23年)など。
1984年8月20日生まれ。兵庫県出身。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。2013年には文化庁文化交流使として、イスラエルに1年間滞在、Inbal Pinto&Avshalom Pollak Dance Companyを拠点にヨーロッパ諸国にて活動。「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。近年の映像出演作にドラマ『大河ドラマ いだてん〜東京オリムピック噺〜』(19年)、『プリズム』(22年)、映画『シン・仮面ライダー』、『山女』(23年)、『ほかげ』(23年公開予定)など。