「ジャパンモビリティショー2023」の報道陣向け公開日を足を棒にしながら歩き回ってきたのだが、初公開の際、周辺から「おー!」というひときわ大きな反応が出たクルマがあった。ホンダの「プレリュードコンセプト」(PRELUDE Concept)だ。いったいどんなクルマなのか、ホンダの説明員に聞いてきた。
昔のプレリュードの関係は?
プレリュードコンセプトはモビリティショー開催まで車名が伏せられた「隠し玉」だった。公開となった現在でも、ホンダのHPを見ると解説文はかなりそっけない。どんなクルマなのか、説明員の話をもとにお伝えしていこう。
まず車名だ。「プレリュード」(Prelude)には「前奏」とか「序曲」といった意味があるのだが、問題はそこではない。かつてホンダは、「プレリュード」というクルマを作っていたのだ。だから、車名発表の際にクルマに詳しい報道陣から歓声が上がったわけだ。プレリュードコンセプトとホンダ車のプレリュードには、どんな関係があるのか。ホンダ説明員の解説は以下の通り。
「プレリュードは、その時代時代を象徴するようなスペシャリティクーペとしてやってきたモデルです。最終モデルが生産終了となってから、もう20年くらい経過しています。プレリュードコンセプトでは、20年前を経験していただいている方も、さらには若い世代の方とも関係性を作りたいと思っています。例えば当時、若いときにプレリュードに乗っていた方が、今度は娘さんと一緒に乗るといったようなシーンを想定しています」
プレリュードコンセプトは「鋭意開発中」で、「おそらく数年以内には」市場に登場する見込み。「クルマの開発でターゲットユーザーを決めることが多いんですが、その観点でいえば、どの世代でも、精神的に若いマインドをお持ちの方に乗っていただきたいなと考えています」とのことだった。
ホンダは2040年までに新車販売の100%をEV(電気自動車)あるいはFCEV(水素で走る燃料電池自動車)にすると宣言している。モビリティショーの会場には各社が出展したEVが並んでいたこともあって、プレリュードコンセプトも当然ながらEVなのだろうと思ったのだが、聞けばこのクルマ、いわゆるハイブリッド車(HV)として構想しているという。「シビック」や「ZR-V」など多くのホンダ車が搭載する「e:HEV」というシステムだ。
2022年4月、ホンダがクルマの電動化戦略を発表した際、スポーツモデルとして2台のベールに包まれたクルマが紹介された。プレリュードコンセプトはそのうちの1台だったようだ。
どんなスポーツカー?
2040年の完全電動化を宣言したホンダだが、クルマを一足飛びにEVあるいはFCEVに置き換えようとは考えてはいない。「(電動化の進み方には)段階があると考えていまして、グローバルの状況や各市場の様子を見ながら、何がベストなのか判断していきたいと思っています。その際にハイブリッド車というのはひとつの回答になります」というのがホンダ説明員の言葉だ。
ホンダの新しいハイブリッドスポーツカーはどんなクルマになるのか。「日常生活の中で乗ったときに、ものすごく気持ちいい爽快感のあるクルマ」を目指しているというのがホンダの説明だ。
走って楽しい、飛ばすと面白いスポーツカーは「タイプR」も含め世の中に増えてきたが、それらのクルマは「日常生活の中で使えるレベルを超えているのでは」というのがホンダ説明員の見方。確かに、ものすごい動力性能のスポーツカーに乗っていても、日本の道路では楽しみ切れないという感じがする。つまり、オーバースペックなのだ。プレリュードコンセプトでは「もしかすると、スペック上は目を引く数値ではないかも」しれないが、ダイナミクスの観点などから、とにかく乗って楽しいクルマを作りたいとのことだった。
「操る楽しみは忘れたくない」との言葉も飛び出したので、プレリュードコンセプトにはマニュアル(MT)車もあるのかと聞いてみたのだが、この点については「現時点ではお答えできません」との回答しか得られなかった。