フェラーリ「SF90XXストラダーレ」が日本初公開となった。ロードカーとして初めて車名に「XX」を冠する新型車は驚異の性能を持ち、価格は1億円近いそうだが、製造予定の799台は完売であるとのこと。どんな魅力のあるクルマなのか、実車を取材してきた。

  • フェラーリ「SF90XXストラダーレ」

    日本初公開の会場は「IHIステージアラウンド東京」(江東区豊洲)。大きな舞台に登場した真っ白な「SF90XXストラダーレ」が放つオーラは圧倒的だった(本稿の写真は撮影:原アキラ)

どんな性能?

SF90XXが搭載するのは、リアにある排気量3,990ccのV型8気筒ツインターボエンジンに前2基、後1基のモーターを組み合わせたPHEVのパワートレインだ。

エンジンには洗練された排気ダクトを採用。燃焼室とピストンに特殊加工を施したことなどにより、最高出力はノーマルに比べ17PSアップとなる797PS/7,900rpmを達成している。最大トルクは804Nm/6,250rpmだ。

  • フェラーリ「SF90XXストラダーレ」
  • フェラーリ「SF90XXストラダーレ」
  • フードを開けてみると、エンジンをリアミッドの低く深い位置に搭載していることがわかる

電気モーターはノーマル比13PSアップの233PSを発生。システム合計は1,030PSとなる。ベースモデルから合計で30PSの馬力アップだ。バッテリーを充電しておけば最大25kmを電気のみで走行可能。最高速度は135km/h。燃料消費率(WLTPサイクル)は7.2L/100kmとなっている。

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    「SF90XXストラダーレ」はシステム合計で1,030PSを発揮する驚異のPHEVだ

V8エンジンは二次空気導入装置を装着しないことで3.5kgの軽量化に成功。全回転域で美しいハーモニーを奏でるサウンドは電動化してもフェラーリらしさを感じられる部分だ。変速ロジックを変更した8速DCTのトランスミッションにより、中・高回転域でアクセルを戻した際には破裂音に似たサウンドを発生させ、ドライビング時の興奮を高める仕組みになっているという。

走行モードセレクター「eマネッティーノ」で「Qualifying」を選択すれば、2秒間だけ出力限界を引き上げられる「エクストラ・ブースト」機能や、「296GTB」で実績がある「ABS EVOコントローラー」など、サーキットで最高のパフォーマンスを発揮するための最新技術がてんこ盛りなところもSF90XXストラダーレの特徴。スペックは0-100km/h加速2.3秒、0-200km/h加速6.5秒、最高速度320km/hと超高性能だ。ストッピングパワー(ブレーキで止まる力)は100km/hからで29.2m、200km/hからで108.1mとのこと。

内外装の特徴は?

エクステリアで目立つのは、ロードカーとしてはF50以来の採用となる大型の固定式リアウイングだ。ロングテールデザインや「シャットオフ・ガーニー」の再設計による効果も相まって、最大で530kgものダウンフォースを獲得している。ベースモデルの2倍だ。確かに大きなウイングではあるが、ボディのフォルムに完璧に融合していて、突飛な感じがしないまとまり具合がすばらしい。

  • フェラーリ「SF90XXストラダーレ」
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  • ボディサイズは全長4,850mm、全幅2,014mm、全高1,225mm、ホイールベースは2,650mm。乾燥重量は1,560kgだ

  • フェラーリ「SF90XXストラダーレ」
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  • エクステリアの目玉はロードカーとしては超大型のリアウイングだろう

「ハンマーヘッドシャーク」デザインを採用したフロント部は、ノーズ中央のボックスからボンネットにエアを流す「Sダクト」やサイズと幅を拡大したスプリッターとディフューザーで完全武装。前後のホイールアーチ上にある3本のルーバーがアクセントとなり、全体のスタイルを引き締めている。

  • フェラーリ「SF90XXストラダーレ」
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  • フェラーリ「SF90XXストラダーレ」
  • 顔面は完全武装といった感じ

インテリアはブラックのバケット型シートを採用。一体型に見えるがバックレストの角度は調整可能だ。着座した時のホールド感は最高。カーボンファイバーのチューブラー構造とすることで1.3kgの軽量化を実現している。

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  • バケット型シートのホールド感は最高!

高機能ファブリックとカーボンファイバーを多用したセンタートンネルやフロアマットはシンプルでありながら、このクルマがどれだけ軽量化に配慮しているのかを雄弁に語りかけてくる。中央に「プランシングホース」(フェラーリの跳ね馬エンブレムのこと)が鎮座するステアリングをすかして見ると、奥には“お約束”であるイエローベースの大型回転計が。ドライバーに挑みかかってくるかのような迫力だ。

  • フェラーリ「SF90XXストラダーレ」

    まあ、お約束ですね

「SF90XXストラダーレ」誕生の背景は?

フェラーリのスペシャルモデルというと「599GTO」「812コンペティツィオーネ」「488ピスタ」などが思い浮かぶ。2005年に始まった「XXプログラム」からは、選ばれしフェラーリファン向けのサーキット専用モデルとして「F599FXX-EVO」や「FXX-K EVO」が登場した。

こうしたスペシャルな流れをくむSF90XXストラダーレは、いったいどんな経緯で生まれたのか。フェラーリ極東・中東地域のディーター・クネヒテル代表はこう語る。

「今回は、公道走行が可能な初のXXモデルとしてSF90XXストラダーレを開発しました。新しいコンセプトです。ベースモデルは車名の通りプラグインハイブリッド車(PHEV)の『SF90』です」

  • フェラーリ「SF90XXストラダーレ」

    左がディーター・クネヒテル氏、右がフェラーリ・ジャパン社長のドナート・ロマニエッロ氏

SF90XXストラダーレの特徴は? これもクネヒテル代表に聞いてみた。

「最も大きな特徴は、フェラーリの歴史を永遠に変えた『F40』や『F50』のようなエクストラリアウイングを復活させ、斬新な空力ソリューションを採用したことです。PHEVシステムは最高出力1,030PSを発生しますが、これはロードカー最強といえます。とてつもない速さや感動的なサウンドを楽しめるモデルでありながら効率性が高く、道路交通法に準拠しつつもレーシングカーのような爽快な体験を再現することができます」

ベースモデルから30PSのパワーアップと10kgのダイエットを果たしたSF90XXストラダーレ。価格は77万ユーロと聞くからベースモデルの倍近くに跳ね上がるわけだが、製造予定台数799台が完売しているという事実がこのモデルの魅力を物語っている。