旬とは?

果物の旬とは、その果物の味が最もよい食べごろの時期で、栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなるので、安い価格でおいしく栄養価の高い状態の果物を手に入れることができます。

旬のなかには、さらに三つの時期があります。「走り」は出回り始めの初物の時期。「盛り」は最も多く出回る時期。そして「名残」は最盛期を過ぎて徐々に店頭から姿を消すものです。これらは季節のうつろいだけでなく、味わいの変化も感じさせてくれます。

10月が「走り」の果物

ようやく秋本番ですが冬に向けて柑橘類のシーズンが始まります。トップバッターは昔から日本人におなじみの温州(うんしゅう)ミカンです。一方で、近年、日本でも栽培され始めたアボカドやスターフルーツなど、南国産フルーツのいくつかも秋から冬にかけてが旬です。そのユニークな色や形、独特の味や食感も走りの果物で楽しんでみてはいかがでしょう。

アボカド

メキシコなどからの輸入品が多いアボカドですが、近年は日本での栽培に挑戦する生産者が増えてきています。外国産は一年中出回っている印象がありますが、国産の旬は10~1月。朝晩の寒暖差が大きくなると脂がのっておいしくなります。完熟で収穫できることが一番の特徴で、品種にもよりますが、しずく型で果皮が薄く、柔らかく口の中で溶けるような味わいです。森のバターといわれるように栄養価が高く、たんぱく質、ビタミンB1、B2、E、葉酸が豊富。熟したものはビニール袋に入れて冷蔵庫で2〜3日保存できます。

調理例:ハワイ風アボカドまぐろ丼、エビとアボカドのクリームパスタ、アボカドと豆腐のグラタン

温州ミカン

世界中に100種類以上もあるといわれる柑橘類。なかでも日本を代表するのが温州ミカンで、露地栽培の極早生(ごくわせ)品種の収穫が9月から始まり、12月に収穫される晩生(おくて)品種は3月まで貯蔵出荷されます。ビタミンCが豊富で、筋や袋には毛細血管を丈夫にするビタミンPが含まれ、オレンジ色の成分βークリプトキサンチンは骨粗しょう症の予防に寄与するという研究結果も公表されています。走りの温州みかんはサイズが小ぶりで、半分に切ってお弁当や料理の彩りにもぴったり。保存は風通しのよい冷暗所で。

調理例:温州ミカンの丸ごとコンポート、ポークジンジャーのミカンソース、皮ごと焼きミカン

スターフルーツ

果実は10cmほどの長円形で断面が五角形の星型をしているのでスターフルーツ。五斂子(ゴレンシ)とも言います。熟すと黄緑色から黄色に変化して甘みが増します。果皮は薄くむかずに食べられます。インドネシアのジャワ島付近の森林に自生するためこの辺りが原産地と見られています。日本では沖縄県や宮崎県で栽培され、秋から冬にかけてが収穫期。甘さ控えめで、酸味があって爽やかな味わい。ビタミンCのほか、カルシウム、マグネシウム、リンなどのミネラルも豊富です。追熟させる場合は20℃前後の室内に置き、完熟果はビニール袋に入れて冷蔵庫で保存します。

調理例:ピクルス、コンポート、スターフルーツとレタスのサラダ

10月が「盛り」の果物

一般的な柑橘類より酸味が強く、その酸味や香りを利用する香酸柑橘類も、秋になると次々と盛りを迎えます。日本の秋の代表的な果物、柿の収穫量も増えてたくさん出回る時期なので、いろいろな食べ方にチャレンジしてみるチャンス。山に自生するアケビなどの古くからあって珍しい果物も旬には店先に並ぶので、見つけたら試してみてはいかがでしょう。

カキ(柿)

東アジア特有の果樹で、日本でも奈良時代から栽培され、アジアやヨーロッパでも日本名の「kaki(カキ)」の呼び名が通用します。各地に多くの古木が残り、地方品種は1000以上といわれています。大きく分けると「甘ガキ品種」と「渋ガキ品種」があり、熟すと渋みがなくなる甘ガキはそのまま食べられ、渋みが残る渋ガキはアルコールや炭酸ガスを使って渋抜きをして、または干し柿として出荷されます。ビタミンC、カロテンが豊富で、渋みの元はタンニンで抗酸化作用があります。硬い果肉が好みの場合は収穫後早めに、柔らかい果肉が好みの場合は常温で数日置いてから食べます。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1週間。

調理例:カキの白あえ、完熟ガキ入りダイコンとニンジンの紅白なます、カキとカブのサラダ

カボス

大分県特産の香酸柑橘でユズの近縁種。直経4cmほどの大きさで、熟すと濃い緑色から黄色に変化します。果汁が多く、香りのよい完熟前の緑果の搾り汁は、焼き魚、ちり鍋、刺し身、お吸い物などに。大分県では乾燥させたカボスの果皮が、七味唐辛子の材料にも使われています。果汁は12月上旬に最も多くなりますが、果汁と酸の含有量は8~10月に多くなります。栄養素は、クエン酸、リンゴ酸、ビタミンCを多く含んでいます。冷暗所に置くか、保存袋に入れて冷蔵庫で保存します。

調理例:カボスポン酢、カボスのマーマレード、きのことタラのカボス蒸し

アケビ(木通)

つる性落葉低木で全国の山間部に自生するほか、山形県をはじめ愛媛県、長野県などで栽培されて出回っています。旬は秋で9~10月に実が大きくなり、熟すと果皮がきれいな紫色になり、完熟するとぱっくりと割れます。中の果肉は小さい種をたくさん含んだ半透明の白いゼリー状でほんのりと甘みがあります。果肉は生食できてビタミンCが多く含まれています。果皮は苦みが強いため、塩ゆでした後に水にさらしてあく抜きをし、炒め物や揚げ物にして秋の味覚として食されています。割れていない果実は、ラップに包むかビニール袋に入れて冷蔵庫で保存。割れているものは日持ちがしないのですぐに食べましょう。

調理例:アケビの皮のしょうゆ炒め、アケビの皮の天ぷら、アケビの皮の肉みそ詰め

10月が「名残」の果物

日本ナシ、ブドウなど、残暑が厳しい頃から品種をリレーして出回っていた果物はいよいよ終盤に。香酸柑橘類のスダチもまたカボスやユズに変わろうとしているところです。十分に熟した名残の果物は、生食でおいしいのはもちろんのこと、保存食に加工して少しでも長く旬を味わってみてはいかがでしょう。

スダチ

9~10月に出回る香酸柑橘類。徳島県の特産品で国内生産量の9割を占めています。カボスより一回り小さく、種子が少ないのが特徴です。ビタミンCが豊富で、昔から酢として使われてきました。果汁は爽やかな酸味があり、秋の味覚として同じ時期に出回るマツタケやサンマと好相性。果皮はおろしてめん類の薬味にしたり、薄く刻んでお吸い物の風味付けに。徳島県ではすだちみそにも加工されています。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で2週間程度。冷凍保存する場合は2つにカットして冷凍用保存袋に入れておくと使いやすくなります。

調理例:スダチみそ、スダチ紅茶、スダチと鶏肉の塩味スープ

ブドウ

夏から続いてきたブドウの品種リレーは、10月にピオーネ(冒頭写真)、ナガノパープル、甲斐路(かいじ)などの品種でシーズンを締めくくります。果皮は黒紫色で果肉が薄緑色のピオーネは、巨峰よりも大粒で濃厚な食味の人気品種。皮ごと食べることもでき、ジベレリン処理された種なし果実が増えています。ブドウはつるに近い肩の部分のほうが甘みが強いので、下の先端部分から上に向かって食べるのがおすすめ。皮には視力回復によいアントシアニンなどのポリフェノールが含まれています。保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で2~3日。1粒ずつ房からばらして1カ月程度の冷凍保存が可能です。

調理例:ピオーネのクラフティ、ブドウのゼリー寄せ、豚肉とブドウの煮込み

プルーン

プルーンはスモモの一種で、ヨーロッパ原産の西洋スモモの総称です。主に輸入品のドライフルーツが通年販売されていますが、日本でも生食用が栽培され、7月下旬から10月頃まで品種をリレーして店先に並びます。晩生種は、小玉で甘みの強いサンプルーン(冒頭写真)、大玉で甘みの強いオータムキュート、同じく大玉で少し酸味の強いプレジデントなどがあります。生果はリンゴ酸やクエン酸が多く、ポリフェノールを含む皮ごと食べられます。保存は紙袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。完熟果は日持ちがしないのですぐに食べきりましょう。冷凍保存は二つにカットして種を取り除いておくと使いやすいでしょう。

調理例:プルーンの赤ワイン煮、鶏手羽元とプルーンの甘辛煮込み、ドライプルーン

日本ナシ(和ナシ)

日本ナシも夏から秋にかけて品種をリレーする果物です。多くの品種がありますが、大きく分けると、果皮のコルク層が厚く黄褐色の「赤なし」、果皮が薄く淡黄緑色の「青なし」があります。10月に出回る晩生種は、あきづき(写真)、新高(にいたか)、新興(しんこう)、にっこりなどの赤梨が中心で、いずれも甘みが強く大玉です。低カロリーで、ショ糖、果糖、たんぱく質分解酵素のプロアテーゼを含んでいます。保存は乾燥を防ぐためビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。冷凍には不向きなのでシーズン中、存分に生食するのがおすすめです。

調理例:ナシのドレッシング、豚肉とナシの黒酢炒め、ナシとミズナのシャキシャキサラダ

まとめ

秋の味覚といわれるように季節感のある10月が旬の果物。「走り」「盛り」「名残」の果物を知ることで、食べ逃しのないように秋を楽しみたいものです。秋の果物には、古くから日本で食べられてきたものも多く、新しい食べ方でおいしさを再発見するものもあれば、国産フルーツとして出回ることで旬を再認識するものもあります。実りの秋、種類も豊富でおいしさを増した国産果物を楽しんでみてください。

参考書籍
からだにおいしい野菜の便利帳(板木利隆監修|髙橋書店発行)
草土花図鑑シリーズ4 野菜+果物(芦澤正和、内田正宏、小崎格監修|草土出版発行)