2004年に放送されたウルトラマンシリーズの意欲作『ウルトラマンネクサス』が、オンライン配信サービス「TSUBURAYA IMAGINATION」にて、2023年10月2日より配信開始となる。これを記念し、『ウルトラマンネクサス』の主人公・孤門一輝を演じた川久保拓司に単独インタビューを行った。

  • 『ウルトラマンネクサス』主人公・孤門一輝を演じた川久保拓司

    主人公・孤門一輝を演じた川久保拓司 撮影:大塚素久(SYASYA)

人間を捕食する恐怖の異生獣「スペースビースト」を秘密裏に殲滅する使命を帯びる組織「TLT」の実働部隊「ナイトレイダー」に配属された孤門だが、周囲の冷ややかな対応や、まさに激務としか言いようのないビーストとの戦いの毎日に、何度もくじけそうになるという過酷なエピソードが続いた。従来のウルトラマンシリーズに多く見られた「明るさ、楽しさ」よりも「重厚さ、真剣さ」という部分が強調され、土曜日の朝7時30分に放送されるテレビ番組としては異例といえる、ミステリアスなストーリーと衝撃的な演出描写が視聴者の度肝を抜いた本作。数々の困難を乗り越えて精神的に成長を遂げていく孤門と共に、ウルトラマンネクサスの「絆」を受け継いだ適能者(デュナミスト)である姫矢准(演:桐島優介)、千樹憐(演:内山眞人)の凄絶な「戦い」のドラマが描かれる。

姫矢から憐、そして次なる人物……と、本作ではウルトラマンの変身者がストーリーの進行と共に交代していくのが大きな特徴となり、視聴者である子どもたちへ「人が生きる上で大切なものとは何か」を伝えたいという、熱いドラマが展開した。

――ついに『ウルトラマンネクサス』が「TSUBURAYA IMAGINATION」で配信されるとのことです。これを聞いたときの川久保さんのお気持ちはどうでしたか。

30分の番組を毎週1話ずつ観て「次はどうなるのかな」とワクワクする楽しみ方はもちろんいいと思うのですが、いくつかのエピソードをまとめて視聴する「一気観」という面白さもありますよね。だから、今回『ウルトラマンネクサス』が配信されるというのは、とても楽しみに思っていました。

――川久保さんも各種サブスクで連続ドラマを観るとき、何話かをまとめて「一気観」をするほうですか?

けっこう、そういうタイプです(笑)。特に謎解きを中心とした連続ストーリーなら、次まで待っていられないというか、何本か溜めて、一挙に観たいほうですね。

――単発エピソードで一体の怪獣が登場するというのが基本のウルトラマンシリーズにあって、『ウルトラマンネクサス』では複数回にわたって同一のスペースビーストが出現し、これに対抗するナイトレイダーやネクサスの死闘が繰り広げられる「連続ドラマ」のスタイルを取っていましたから、一気に何話かをまとめて観られるサブスクは最適の視聴方法かもしれませんね。

『ウルトラマンネクサス』だと毎回のエピソードで、どこかモヤっとしたまま終わったり、謎が解けるとともに新しい謎が深まったり、巧みな構成になっていますから、次が気になったらすぐ観られる、というのはとてもいいですね。すでに全話観ている方は、この先はこうなるんだな、すでにこの段階でこういう伏線が張られているのか……なんて思いながらもう一度観ても楽しめますし、まだ観たことがない方には、時間の許す限りスリリングなエピソードをまとめてご覧になってほしいです。第1話って、ウルトラマンネクサスがスペースビーストのペドレオンをパンチで倒すところで終わっていますよね。命を救われた孤門一輝の目の前に巨大な拳が見えて、見上げていくと「銀色の巨人」の姿があって、こっちを向いている……。あの瞬間は、劇中の孤門にとっても、演じる僕にとっても衝撃的で、鮮烈な記憶として残っています。

――現在、川久保さんには2人のお子さんがいらっしゃるとうかがいました。お2人ともウルトラマンのことはお好きですか?

上が7歳、下が3歳、どちらも男の子で、ウルトラマンは大好きです。今年の夏も親子で「ウルサマ」(ウルトラヒーローズEXPO2023サマーフェスティバルin池袋サンシャインシティ)を楽しんでいました。会場には渋谷浩康プロデューサーがいらっしゃって、アテンドをしてくださいました。最初、長男のほうは「俺、ウルトラマンならいろんなこと知ってるぜ!」と澄ましていたのに、ショーが始まってウルトラマンゼロがすぐ近くまでやってきたとたん「あっ、ゼロさんが来た!!」と大興奮していたんです(笑)。兄弟とも、ショーのあとはあのグッズ、このグッズが欲しい!とか、福引で目当ての商品が出なくて悔しい~!とか、そんな騒ぎも含めて、親と子が心から楽しむことのできるウルサマって最高だなと思いました。

――ご兄弟はお父さんがかつて『ウルトラマンネクサス』の孤門隊員だったことを知っているのでしょうか。

わりと早い段階から、DVDをいっしょに観るようにしていましたね。僕が画面に映ったとき、テレビと僕の顔をキョロキョロ観たりして「えっ、どういうこと?」ってビックリしていましたけど(笑)、うまく伝わったようでホッとしました。

――警視庁の山岳救助レンジャー部隊から、詳細も知らされずにナイトレイダーに配属が決まり、数々の試練にさらされながらビーストとの戦いを行わなければならない孤門の姿には、観ている私たちの精神にもダメージが来るような過酷さを感じましたが、その過酷さを乗り越えたところに、強さや希望といった前向きなものがある、というシリーズ展開については、どう思われましたか。

第16話で、襲いかかる残酷な事態に耐えられなくなった孤門が、装備を一つずつ外しながら逃げていくシーンがありました。あのとき孤門はあきらめてしまいそうになりますが、そんなとき、ネクサスや仲間たちが救ってくれて、ふたたびナイトレイダーの任務を頑張ろうとするんです。生きることは楽しいし、すばらしいし、輝いているんだけど、その中には辛いこと、厳しいことがいっぱいあると思うんです。『ウルトラマンネクサス』はそんな辛く厳しいことを乗り越えて、次の段階へ踏み出そうというメッセージが強く込められていました。後に「あきらめるな!」という言葉が自分にとっての励ましに聞こえました、というファンの方からの声をたくさんいただいて、そんなときはスタッフ・キャストみんなでこの作品を妥協せずに作り上げてよかったなと、しみじみ思いました。2022年にNHKで行われた「全ウルトラマン大投票」でもウルトラマンネクサスが8位にランクインされていて、あのときも「ネクサスが愛されていて、良かったな~」と感激しました(笑)。

  • 『ウルトラマンネクサス』主人公・孤門一輝を演じた川久保拓司

――ナイトレイダー元副隊長の溝呂木眞也(演:俊藤光利)にまつわる秘密など、ミステリアスな要素の多かった作品でしたが、川久保さんはラストに向けての展開がどうなるかを事前に聞かされていたりしましたか?

毎回の台本をいただくまで、次の展開は一切知りませんでした。だから1話ごとに驚き、とまどい、困難に直面する孤門と同じ気持ちで、次の瞬間どんな運命が待ち受けているかわからないまま演じていました。孤門と僕の精神がリンクしていたため、あまりにも辛いことばかり起きている時期には、撮影所へ行く足取りが重かったですからね。特に、前半は辛かったです。