住友商事と東急電鉄は、総務省の「令和5年度 地域デジタル基盤活用推進事業(実証事業)」として、ローカル5GとAIを活用した線路巡視に関する共同実証実験を10月から実施すると発表した。
人手不足や熟練技術者の減少などにより、鉄道業界では作業現場の自動化と省力化、安全性向上が急務となっている。そのために必要なインフラとして、高速大容量で超低遅延、かつ多数同時接続ができ、独立したネットワーク網を構築できるローカル5Gの活用が期待されている現状にある。
今回の実証実験では、電車の前方に設置した高精細カメラで撮影した映像をローカル5GでAI解析用サーバに伝送し、線路設備などの異常を解析する。これまで係員が現地に毎日出向き、1日数時間かけて路線全体を目視で確認していた巡視業務について、AIが解析した異常該当箇所のみ現地確認し、1日数十分で終えるしくみに置き換えることをめざす。
両社は2021年度から実証実験を進め、2022年度は横浜高速鉄道などとともに実証実験を行い、AI解析精度などを向上させてきた。今年度は横浜高速鉄道に加え、名古屋市交通局、JR九州、西日本鉄道、伊豆急行の各社局と共同で実証実験を行い、都市環境・地下環境・地方環境とさまざまな路線環境データを集積し、AIによる異常解析の精度向上を図る。
具体的には、1回の走行で約90%以上の異常検知率、かつ1日複数回の走行で100%の異常検知率達成を図り、2024年度の東急東横線内での実装をめざす。将来的には、鉄道業界全体において使用可能な汎用性の高いソリューションの構築をめざすとしている。