JR東海は26日、愛知県小牧市の小牧研究施設にて、「トンネル検査ロボット」プロトタイプの報道公開を実施した。「トンネル検査ロボット」は従来からの人力による打音検査に代わり、自動でトンネルを検査するものとなる。
同社はトンネル検査に関して、コンクリート表面の目視検査に加え、検査員がハンマーで壁面を打ち、内部の状態を把握する打音検査も行っている。しかし、打音検査は検査員の身体的負担(首や腰を痛めるなど)が大きい上に、経験にもとづく技量も求められる。今回の報道公開において、筆者も実際に小牧研究施設のトンネル内で打音検査を体験したが、若い人であっても長時間の作業で体に負担がかかることは容易に想像がついた。
今後の労働人口減少に対応するとともに、作業の効率化もめざし、同社はロボットによる打音検査の自動化を検討してきた。その結果、「トンネル検査ロボット」のプロトタイプが完成した。
「トンネル検査ロボット」は、ハンマーの代わりになる接触式検査装置を取り付けたロボットアームとレーザー測量機で構成される。ロボットは大型トラックに載せられ、検査箇所へは大型トラックで移動し、そのまま検査できる。つまり、わざわざロボットを降ろす必要がなくなる。
小牧研究施設内のトンネルでデモを実施し、最初にレーザ測量機によるトンネル内壁の自動計測が行われた。接触式検査装置を使ってトンネル壁面に一定の力で押し付け、連続的に検査を実施するために必要な作業だという。内壁とロボットの位置関係、壁面の状態を把握する。
次に、得られた情報をもとにロボットアームがトンネル壁面に近づき、打撃装置で壁面を打ち付けながら、壁面上を移動する。壁面を打撃して振動をセンサーで直接取得することで、より正確な検査を実現。移動時に「カタカタ」と音が聞こえ、ロボットが人間に代わって打音検査を行っていることがよくわかった。検査結果はロボットが出力するカラーの図を通じて確認可能。異常箇所が図で示され、より客観的に評価できる。
ところで、人力による打音検査と「トンネル検査ロボット」による検査を比べた場合、どちらがより高品質な検査を行えるのだろうか。JR東海の実験によると、「トンネル検査ロボット」に軍配があがったという。ロボットにより、深さ100mm以下かつ広さ150mm×150mm以上の欠陥検出も可能とのことだった。
今後、「トンネル検査ロボット」の基本動作の確認が行われ、将来的に中央新幹線への導入をめざすとしている。新幹線や在来線での利用については、架線を避けるための改良が必要だという。なお、「トンネル検査ロボット」が導入されたとしても、現場での検査がすべてロボットに置き換えられるわけではない。特殊な部分は検査員に頼る必要があり、人間とロボットのそれぞれの得意分野を組み合わせることが重要という認識をJR東海は持っている。