旬とは
果物の旬とは、その果物の味が最もよい食べごろの時期で、栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなるので、安い価格でおいしく栄養価の高い状態の果物を手に入れることができます。
旬のなかには、さらに三つの時期があります。「走り」は出回り始めの初物の時期。「盛り」は最も多く出回る時期。そして「名残」は最盛期を過ぎて徐々に店頭から姿を消す果物です。これらは季節のうつろいを感じさせてくれるだけでなく、味わいも変わっていきます。
走りの果物は、若くあっさりとした味わいですが、季節を先取りする喜びがあります。盛りは最も風味がよく味がのっているので、そのまま生食はもちろん、調理食材としても広く使える果物もあります。名残は水分が少なくなりますが、その分、果物の個性がより感じられるでしょう。
旬の果物には、私たちがその時期を健やかに過ごすために必要な栄養も含まれています。9月の走り、盛り、名残の果物を知って毎日の食卓をより豊かに彩りましょう。
9月が「走り」の果物
9月は柿、リンゴ、洋梨の早生(わせ)品種が出始め、秋の訪れを感じさせてくれます。初物はそのまま生食で味わうのはもちろん、料理のアクセントにもなります。
柿
日本の秋を代表する果物の一つで、奈良時代から栽培され、アジアやヨーロッパでも「kaki(カキ)」の名前が通用するほど。旬は9月から11月ごろまで。9月に刀根早生(とねわせ)や西村早生などの早生種が出回ります。早生柿は小ぶりですっきりとした甘さで、色どりもよく、サラダの食材にも向いています。栄養価も高く、ビタミンC、カロテン、食物繊維が豊富です。
保存はビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1週間程度。その際、ヘタに湿らせたキッチンペーパーをかぶせて柿をラップで包み、ヘタを下にして保存するとより鮮度が保てます。リンゴと一緒に袋に入れると、追熟が促進されて早く柔らかくなります。
調理例:柿とリンゴのマリネ、柿のクリームチーズサンド
洋梨
洋梨の旬は9月から11月ごろまで。ひょうたん型のバートレットなどの早生種が8月下旬から9月初めに収穫されます。収穫したての果実は固いため18°C前後の温度で5~10日おいて追熟して出荷されます。和梨と同様に食物繊維が豊富に含まれています。洋梨は果肉が緻密でとろけるような食感と濃厚な味と芳香が特徴。走りの洋梨はコンポート(シロップ煮)に向いています。種部分はスプーンでくり抜くと簡単に取り除けます。
未熟なものはビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で1カ月ほど保存できます。すぐに食べたいときは20℃で追熟させ、熟したものは早めに食べきりましょう。
調理例:コンポート、洋梨と生ハムのサラダ
リンゴ
リンゴの旬は9月から11月ごろまで。9月下旬にふじの早生種である早生ふじなどが出回ります。袋をかけずに日光を当てて栽培したふじをサンふじと呼びます。旬の間にさまざまな品種がリレーして出回り、味の違いが楽しめます。走りは皮が薄く柔らかいので、スターカット(輪切り)やスティックカットで食べるのがおすすめ。リンゴの皮には果肉と比べて食物繊維、ビタミンC、ポリフェノールが多く含まれています。
保存はビニール袋に入れて冷暗所に。長期保存する場合は冷蔵庫へ。
調理例:りんごとカマンベールチーズの焼きサラダ、りんごとキュウリのポテトサラダ
9月が「盛り」の果物
9月はイチジク、ブドウ、和梨、クリなど、秋の味覚が出回ります。いつもと違う食べ方や、家庭で購入される機会が少ないクリやイチジクにもぜひチャレンジを。
イチジク
旬は8月から11月ごろまで。イチジクは実の中に花をつけ、外からは見えないため「無花果」と書きます。冬越しした幼実が夏に熟す夏果と、新梢(しんしょう)について秋に熟す秋果があり、秋果のほうが小ぶりですが味は濃厚です。食物繊維が豊富で、タンパク質分解酵素のフィシンを含むので食後のデザートにも最適。皮は軸から下に向かってはがすとむきやすいです。
やわらかく傷みやすいので、ビニール袋に入れて冷蔵庫で保存して1日以内に食べることをおすすめします。すぐに食べられないときはコンポート(シロップ煮)にして保存を。
調理例:いちじくのコンポート、甘露煮、いちじくとモッツァレラチーズのスライスサラダ
ブドウ
旬は8月から10月ごろまで。世界の広い地域で生産され、その多くはワイン原料ですが、日本では9割が生食用です。品種も多く、9月はシャインマスカットや巨峰が出回る時期。近年は大粒で種のない皮ごと食べられる品種が人気ですが、食べ比べて好きなぶどうを探す楽しみも。主成分の果糖やブドウ糖は疲労回復、皮に含まれるアントシアニンは視力回復を助けるので疲れた時のおやつにピッタリです。
保存する場合は、ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室に入れ3日で食べきるようにします。お弁当に入れる時は粒を取らずに軸を切って入れると風味が落ちにくくなります。
調理例:冷凍ぶどう、ぶどうのホットフルーツティー、ポークソテーぶどうソース
和梨
旬は9月から10月下旬。和梨は品種によって少しずつ収穫期が異なり、さまざまな品種をリレーで楽しむことができます。9月は、幸水が終わり、二十世紀、南水、新高などが出回ります。みずみずしくシャリシャリした独特の食感は、石細胞によるもの。果皮の色によって二つに分けられ、赤梨は柔らかくしっかりとした甘さ、青梨は甘みと酸味のバランスがよくすっきりとした味わい。スティック状に切ると皮ごと手軽に食べられます。ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ入れることで、1週間程度保存可能です。
調理例:蒸し梨、中華風梨の甘いスープ、焼肉のタレ
クリ
旬は9月から10月にかけて。日本で栽培されているニホングリは、縄文時代の遺跡から出土しているるほど歴史の古い果物です。外側の硬い鬼皮と内側の渋皮に覆われ、下ごしらえに手がかかりますが、熱湯に浸すとむきやすくなります。専用のクリむき機を備えておくのもいいでしょう。渋皮をむいたら2~3時間水に浸してあく抜きをします。炭水化物とビタミンB1、B2を含み、ゆでぐり、焼きぐりのほか、菓子やくりご飯の素材にも。
冷凍保存する場合は、皮をむいてゆでてから。長期間常温に置くと、身が縮んだり虫が入ったりすることがあるので注意が必要です。
調理例:くりおこわ、くり渋皮煮、くりと鶏肉のうま煮
9月が「名残」の果物
夏を代表する果物の桃は、晩生(おくて)品種でそのジューシーさと甘さを楽しんでいただくのがおすすめ。爽やかな酸味と芳香のスモモは、皮ごと食べられる手軽さで、リフレッシュしたいときのおやつにもピッタリ。
桃
旬は7月から9月まで。9月は晩生種の川中島白桃、さくら白桃、黄金桃などが出荷されます。果肉の色で大きく二つに分かれ、白桃は柔らかく多汁で甘みが濃く、黄桃は果肉が硬めで加工用として使われますが、最近は生食用にも栽培されています。晩生種は比較的大ぶりで果肉がしっかりとしていて糖度が高くなります。
熟していないものは常温で追熟。冷やしすぎると味が落ちるので、食べる寸前に冷蔵庫に入れて冷やすとよりおいしく食べられます。
調理例:桃のフルーツサンドイッチ、桃のコンポート、桃の冷製ポタージュ
スモモ(プラム)
旬は6月から9月まで。大別すると日本スモモ(プラム)と西洋スモモ(プルーン)があり、9月は日本のスモモの晩生品種のソルダム、太陽、サンセプト、秋姫などと、西洋スモモのプルーンが出回ります。スモモは適度な甘みと酸味のバランスが特徴ですが、品種によって果皮・果肉の色、味が多種多様。皮ごと食べられます。
スモモは未完熟で店頭に並ぶことが多く、硬いものは常温保存で追熟させて酸味抜きをします。完熟しているスモモは、紙袋に入れて冷蔵庫で保存し、なるべく早く食べきりましょう。
調理例:すももジャム、焼きすももアイスクリーム添え、すももとリーフレタスのサラダ
まとめ
夏から秋への季節の変わり目、店頭に並ぶ果物のラインナップも変わりつつあります。果物はそのまま生食できるだけでなく、デザートにアレンジでき、おかずやサラダのアクセントにもなる便利食材。カットの仕方で、食べやすさや見た目の印象も変わります。走り、盛り、名残の果物を盛り合わせて楽しめるのもこの時期ならでは。
秋といっても厳しい残暑が続く9月、果物でおいしく水分と栄養を補給しながら乗り切って、食欲の秋本番を迎えましょう。
参考書籍
からだにおいしい野菜の便利帳(板木利隆監修|髙橋書店発行)
草土花図鑑シリーズ4 野菜+果物(芦澤正和、内田正宏、小崎格監修|草土出版発行)