育ててもらった恩があっても、血のつながりがあっても、母親のことが嫌いな人はいます。母親が嫌いな自分を責める必要はありません。

本記事では母親を嫌いになる原因や嫌われる母親の特徴を紹介。母親嫌いにより思い悩んでしまうときの心得や、母親との付き合い方、関係改善のきっかけとなり得ることもまとめました。

  • 母親を嫌いになる原因や対処法とは

    母親のことを嫌いになる原因や、嫌いな母親への対処法を解説します。

「母親が嫌い」と思う原因とは

家族だからといって、親のことを無条件に愛せるわけではありません。相性や育てられ方などが原因で、母親を嫌いになる人もいます。

ここでは、母親を嫌いになる原因として考えられる例を紹介します。

愛情不足

子どものときに、母親から十分に愛情をもらえなかったことにより、母親を嫌いになるという可能性があります。

例えば、そもそも母親と接する機会が少ない、無視をされる、目を合わせてくれない、スキンシップが少ないなどの状態で育てられると、子どもは親からの愛情が足りていないと感じるでしょう。

「自分は必要ない」「愛されていない」と感じ、母親が嫌いという感情につながると考えられます。

母親が子どもに愛情を注いでいるつもりでも、その気持ちが子どもに伝わっていない場合もあります。

過干渉

子どもは成長するにつれ、大人同様に自分の意見や考えを持ちます。学校や習い事などで、家族とは離れた、自分独自の人間関係も築きます。

そんな中で、子どもの行動や思考を束縛・支配する、いわゆる「過干渉」の母親は、子どもからうっとうしいと思われるでしょう。

過干渉な状態にうんざりした子どもはやがて、大切なことは言わずに隠すようになる可能性もあります。

母親は、子どもを大切に思うからこそ、全てを管理したくなるのかもしれません。しかし子どもは親の所有物ではなく、何でも親の思い通りに動かせる存在ではありません。

全く褒めてもらえない

子どもを全く褒めない母親がいます。

このような母親は、仮に子どもが試験や部活動で頑張ったとしても「なぜこんな簡単なミスをしたの?」「次は満点を取りなさい」など、できない部分に目をつけて責めてしまいます。「できている部分は当たり前」として、褒めることはめったにありません。

褒めない親は、子どもにとって「恐怖の対象」になる可能性があります。やがて、自分を肯定してくれない母親を嫌いになってしまうと考えられます。

他者と比較される

周りの人との比較で、母親を嫌いになるケースがあります。例えば兄弟や親戚、近所の子などと比べられて否定されると、子どもの自己肯定感は下がるでしょう。

例えば「お兄ちゃんは頭が良いのに……」「◯◯ちゃんはもう△△できるのにお前は……」といった発言は子どもを傷付け、子どもは「愛されていない」と感じるでしょう。

「そんなに○○ちゃんがいいなら、私じゃなくて○○ちゃんのお母さんになればいいのに」とすら思ってしまう可能性があります。

夢や理想の押し付け

幼少期から、「医者を目指しなさい」「あなたはサッカー選手になるのよ」「プロのバレリーナになれるように頑張ろうね」など、子どもの将来を勝手に決めてしまう母親もいます。

これは、親が自分の夢をかなえられなかった代わりに、子どもにかなえさせようとしているケースが多いと言えます。または、それが最善だという自分の意見を、一方的に押し付けているのです。

洗脳のように夢を刷り込まれると、夢がかなわかったときや、やりたいことが見つかったときに、その子どもはどうすればいいか分からなくなります。

「母親に無理やりやらされた」「本当はサッカーなんてやりたくなかった」など、押し付けられたことが原因で、母親を嫌いになる可能性があります。

毒親だから

毒親とは、子どもに悪影響を与える親のことを指します。

身体的虐待やネグレクトなどの分かりやすい行為だけでなく、その子の存在や個性を認めない、気持ちを軽視する行為、価値観の押し付けなどをする親も毒親に含まれます。

子どものバイト代を巻き上げる、子どもに年が離れた弟妹の世話をさせるなどの場合もあてはまるでしょう。

そのような親に育てられた子どもは、母親に対して嫌悪感を抱いたり、大人になってからも対人関係に問題を抱えたりしてしまいます。

嫌われる母親にありがちな特徴

ここからは子どもから嫌われる母親によく見られる特徴を解説します。以下で紹介する特徴が自分の母親に当てはまる場合は、関わり方を見直した方がいいかもしれません。

感情的に怒る

感情的に怒る母親は、子どもにとっては恐怖の対象です。

  • しつけの観点ではなく、自分の気に入らないことがあったタイミングで怒る
  • 汚い言葉で罵倒してくる
  • 物を投げたり暴力を振るったりしてくる
  • 怒りのスイッチが分からない、機嫌にムラがある
  • 急に口を利かなくなる

例えばこのような行動をとる母親は、子どもから恐れられます。子どもが成長すると、子どもから対話ができないと判断され、距離を取られるでしょう。

極度の心配性

極度の心配性で、子どものことが常に気になる母親がいます。「何時に帰るの?」「誰と遊んでいるの?」「返信がないけど大丈夫?」など、心配が理由で過度に干渉するような母親です。

心配性の母親の多くは、真面目な性格です。「子どもをきちんと管理したい」「子どもを守りたい」といった気持ちから、子どもの過ごし方が気になりがちです。

しかし子どもの言動や行動を細かく管理し過ぎて、まるで支配するようになると、やがては子どもに疎ましく思われてしまうでしょう。

子どもの意思を全く聞かない

子どもが自分の意思を伝えているにもかかわらず、全く聞き入れようとしない母親は嫌われるでしょう。「自分の方が正しい」と妄信して、自分の意見を曲げない母親も同様です。

子どもに対して自分の意見を押し付けたり、子どもの好きなものを平気で否定したりする親もいます。

もちろん、子どものわがままを受け入れて甘やかすのは良くないことです。しかしその子自身に関わることで、周囲に迷惑が掛からず、かなえてあげるのに無理がない範囲であれば、子どもの意思も尊重するべきです。

子どもの意思を全く尊重しないと、「母親は何も分かってくれない」と思われ、嫌われるでしょう。

兄弟間で差別する

日頃から兄弟間で差別をされると、子どもは深く悲しみ、差別行為をする母親を嫌いになるでしょう。

「お兄ちゃん/お姉ちゃんはできるのに、なぜあなたはできないの?」「年上なんだから我慢しなさい」などの発言は、子どもを傷付けると考えられます。

また、けんかの内容に関わらず常に年上だけを怒る、兄弟で一人だけ外食に連れて行かないなどの不公平な行為も、母親が嫌われる原因になり得ます。

ダブルバインドをしている

ダブルバインドとは二重拘束、つまり2つの矛盾している発言を受けて、身動きが取れなくなる状態を指します。

例えば母親が子どもに対し、「分からないのに勝手に行動するな!」と言った後に、「そんなこと、いちいち質問しないで自分で考えろ!」と言ったとします。子どもは、どちらの意見に従えばいいか分からず、混乱するでしょう。

子どもは「いつも言っている内容が違う」「すぐに意見が変わるから、どうせ聞いても無駄だ」と思い、母親に不信感を抱くでしょう。

母親嫌いで悩んだときはどうすればいいのか、その心得

  • 母親嫌いで悩んだときのポイント

母親が嫌いな方は、「母親を一生嫌いなままでもいいのか」「母親を憎いと思ってしまう自分は悪いのか」と悩んでしまうかもしれません。そのように思い悩んだときに、心にとどめておいてほしいポイントを紹介します。

母親を嫌う自分を責めない

まず、母親を嫌いな自分を責めてはいけません。

「母親を嫌いになってはいけない」「母親を嫌いになる自分がおかしい」と悩むこともあるでしょう。しかし、母親を嫌いになるには、相応の理由があるはずです。それは、あなたのせいではありません。

自分を精神的に追い込まないようにしましょう。

母親のことを許さなくてもいい

どうしても母親のことが嫌いで、母親にされたことを許せない、という方もいるでしょう。

母親を憎んでいるのなら、無理に許す必要はないでしょう。

許せないことに、罪悪感を抱く必要もありません。

ストレスを発散する

ストレス発散は、根本的な解決にはつながりません。しかし、たまっている負の感情を取り除くことはできるでしょう。自分の精神を守るために、モヤモヤしたときは適度なストレス発散を行いましょう。

ストレスの発散方法としては、仕事や趣味に没頭する、友人と話して笑う、運動する、日光浴をするなどが挙げられます。

嫌いな母親との付き合い方

  • 嫌いな母親への対処法

母親のことが嫌いでも、家族である限り簡単に関係は切れません。そのため、うまく付き合う必要があります。以下で紹介する方法を使い、自分の心を守る付き合い方をしましょう。

嫌いな理由を考える

最初に、なぜ母親のことを嫌いになったのか、理由を考えてみましょう。漠然と「母親が嫌い」と思うと、何をされても嫌いという気持ちがあふれてしまいます。

母親の嫌いな所を書き出し、客観的に整理しましょう。そうすることで、どのような行動が嫌いなのか、どういったときに嫌な気持ちになるかが分かります。

原因が分かると、その状況のときにすぐ対応ができます。また、そのような状況にならないための対策も考えられるでしょう。

母親の良いところを探してみる

逆に、母親の良いところや嫌いではないところも探してみましょう。

「毎日おいしいごはんを作ってくれた」など当たり前だと思っていたことや、「○○の話をニコニコして聞いてくれた」などのようにささいなことでも構いません。

母親の良いところを書き出すと、「自分は母親のここは好きだ」と冷静になれるでしょう。

母親に期待しない

「母親とは、◯◯のような人だ」「母親とは、◯◯であるべきだ」と、期待しすぎるのはやめましょう。

「こういう母親になってほしい」「母親らしいことをしてほしい」という気持ちが強いと、「なぜ理想の母親ではないのか」と感じストレスがたまります。

幻想は抱かず、ありのままの母親を受け入れます。母親も一人の人間で、完璧ではないことを前提にして、うまく付き合いましょう。

話し合ってみる

自分の気持ちを知ってほしい、そして相手の気持ちを知りたいと思うなら、一度母親と話し合ってみるのもいいでしょう。自分の気持ちを伝えると、相手の立場の話が聞ける可能性があります。

お互いのコミュニケーション不足が原因で関係性が悪い場合、話し合いをきっかけに関係が改善する可能性があります。

ただし、母親のヒステリーや頭の固さが原因の場合、話し合いにより関係性が悪化するかもしれません。話し合いにならず、嫌な言葉を投げ掛けられる恐れもあります。

母親の性格を踏まえ、話し合いのきっかけを見つけましょう。

距離を置く

関係の改善が難しければ、できる限り物理的な距離を取りましょう。

特に母親からの過干渉で悩んでいる方は、実家暮らしの場合は別居をする、話す時間や回数を決める、自分のプライベートには入らないよう約束するなどの方法がおすすめです。

すぐに言い合いになる方も、なるべく母親との関わりを避け、母親と会わないようにしましょう。

もしかすると母親側も、子どもとの関係に悩んでいる可能性があります。お互いに自分のペースで生活ができるよう、程よい距離を保ちましょう。

カウンセリングを受けてみる

カウンセリングの受診を検討するのも一つの方法です。

親子関係に関するカウンセリング機関は数多くあります。自分が受けやすいと思う場所や機関を探し、受診してみましょう。行政やNPOによる、無料相談を受け付けている窓口もあります。

第三者が介入すると、これまで思い付かなかった方法で解決の糸口が見つかる可能性が出てきます。

母親嫌いが改善できるかもしれないきっかけ

母親が嫌いでも、ふとしたきっかけで改善する可能性もあります。ここからは、母親嫌いを解決できるかもしれないきっかけを紹介します。

もちろん、これらのタイミングで気持ちの変化が起こらなかったとしても、自分を責める必要は全くありません。

自分が親になったとき

自分が親になったタイミングで、母親の気持ちが分かり、母親との関係を再構築できるケースがあります。

「母親も一人の人間なんだ」「親も苦労していた」「親に理想を抱いていたのではないか」と、親目線で気付けるでしょう。子どもの頃は想像できなかった、母親の感情が分かるかもしれません。

母親に共感の気持ちが芽生えたとき、母親の苦労を理解して、許そうと思える可能性があります。

自分の苦しさと向き合えるようになったとき

一度母親と距離を置くことで、自分自身と向き合えるようになったとき、母親との関係が改善できる可能性があります。

特に実家を離れて暮らす経験は、子どもを精神的にも成長させます。心に余裕ができて、母親嫌いが直るかもしれません。

親が病気になったとき

母親が病気になったとき、お互いにこのままの関係ではいけないと感じる場合があります。

これまでのことを互いに謝ったり、素直な気持ちを伝えられたりするかもしれません。

「元気なうちに本当の気持ちを伝えたい」「母親の気持ちを知りたい」「少しでも親孝行をしたい」と、動くきっかけになり得るでしょう。

親が年老いて介護が必要になったとき

母親が年齢を重ねると、自分が幼い頃の母親とは違う印象を抱きます。年を取り弱った母親を見て、「嫌いなままでいいのか」「自分が面倒を見なくては」という気持ちになるかもしれません。

母親の性格も、数々の経験を経て、若い頃より穏やかになる可能性があります。弱々しさを感じ、怖かった印象がなくなるケースも考えられます。

「母親が嫌い」ということは、悪いことではない

長年一緒に過ごした母親だからこそ、好きなところも嫌いなところも見えます。母親が嫌いなことは、決して悪いことでも特殊なことでもありません。

ただ嫌いになった原因やきっかけを分析することで、気持ちを整理できる可能性があります。

母親との関係性を改善したい場合は、無理をせずに少しずつ行動してみましょう。