「明日のために、今日つながろう。」をテーマに掲げ、26~27日に生放送された日本テレビ系大型特番『24時間テレビ46』。メインパーソナリティーになにわ男子、チャリティーパーソナリティーの1人に芦田愛菜という若い世代を番組の顔に迎えた今回は、“未来志向”を前面に打ち出すスタイルとなった。

  • 『24時間テレビ』

    『24時間テレビ』

■企画内容や募金の使い道に目立つ“子ども”の存在

総合プロデューサーの吉無田剛氏は、本番前に応じたマイナビニュースの取材に、今回の『24時間テレビ』を“第3ステージ”と位置付けていることを明かしていた。1978年からの立ち上げの草創期を“第1ステージ”、チャリティーマラソンや「サライ」が生まれた92年からを“第2ステージ”、そしてコロナ禍を経た今回が“第3ステージ”という構図だ。

新たなステージに移行するということは、そこから5年・10年先を見据える土台を作ることになり、自ずとコンセプトも“未来志向”に。その思いは、『24時間テレビ』歴代すべての回に出演する徳光和夫が「第1期は欽ちゃん(萩本欽一)がスタートさせました。第2期はダウンタウンがスタートさせました。まさに今回は第3期、未来の子どもたちに向かって発信する『24時間テレビ』になると思います」と事前番組で決意を述べていたことから、出演者にも強く浸透していることをうかがわせた。

“未来志向”を象徴するように、オープニングは「車いすの少年となにわ男子が挑むウォーターショー」という“少年”が主役の企画。番組冒頭でメインパーソナリティーがメイン会場ではなく、都内某所のプールで体力を消耗する企画に挑むというのは、若いなにわ男子ならではのフットワークの軽さとエネルギッシュさを印象付けるスタートとなった。

その後も、「骨肉腫になったサッカー少年」「高校生422人・100m走でつなぐ42.195キロ」「『はなちゃんのみそ汁』20歳になったはなちゃんは今…」「難病に立ち向かう25歳の女子大学生」「車いすテニス小田凱人」「防空壕で歌う少女」「6歳のインフルエンサー」「有働由美子が5年ぶりに会いたいウガンダの少女」など、子どもたちをはじめとする若い世代にフィーチャーしたコーナーを次々に展開していく。

募金の使い道も、“未来志向”だ。これまではリフト付きバスや訪問入浴車の贈呈など、「福祉」の分野を中心に支援してきたが、今年はそれに加えて“子どもたちの未来のため”に使うことを宣言。寄付された学校制服をメンテナンスして無償提供する「制服バンク」や、不登校児の学習機会、子ども食堂への支援につなげることを放送中に何度も告知し、なにわ男子のメンバーが「子どもたちの未来のため、皆さまのご協力よろしくお願いいたします」と呼びかけた。

■ヒロミ、内村光良の“おじさん”世代が背中を見せる

未来世代が主役のコーナーが多く展開される中で、通し企画で活躍したのは“おじさん”世代の大物芸人たちだった。

チャリティーランナーのヒロミ(58)は、自身が走る理由を「もうすぐ還暦だから、人生の終わりのほうに近づいているのは感じてるんだよね。50歳を過ぎて感じたのは、技術もあるし、経験もあるし、後輩たちに渡していくようなことを考える年代だということ。次の世代へ渡していかないといけないんだけど…」「まだまだ行けまっせというのを、自分でも証明したい」と語り、その姿に『ウチのガヤがすみません!』からヒロミを慕う後輩芸人たちが次々に駆けつけて挑戦を盛り上げ、2人の息子たちが懸命に伴走して“父の背中”を見つめ続けた。

一方、「イッテQ!遠泳部 琵琶湖横断6時間チャレンジ」では、練習でチームトップの記録を叩き出して第一泳者となった内村光良(59)が「もう部員たちを信じて泳ぐのみ」と後輩たちを信頼し、メンバーのなにわ男子・高橋恭平は「部長の背中には僕たちが全員いるんで、助けますんで、頑張ってください!」と声をかけていた。

それぞれ、B21スペシャル、ウッチャンナンチャンとして「お笑い第三世代」と呼ばれて80年代終盤から頭角を現した2人が、そろって下の世代に背中を見せ、それを見た者たちが刺激を受けて奮闘する構図はまさに“未来志向”であり、世代を超えて“つながる”ことを体現しているように見えた。その背景には、吉無田総合Pが「“ボーダーレス”な感覚が伝わってきます」と印象を語る、なにわ男子のキャラクターもあるのではないかと感じる。

  • チャリティーマラソンのゴールを喜ぶヒロミ(中央)と後輩芸人たち (C)日テレ

また、『チャリティー笑点』では、最古参メンバーの林家木久扇が「芸というものは、次の世代にバトンタッチしなくちゃいけません。私の座布団の芸も、新しい人にバトンタッチいたします。今日の24時間テレビのテーマが、『明日のために、今日つながろう。』ということでございましたので、私は背中を押されたわけでございます」と、来年3月での番組卒業を生発表。さらに加山雄三は、自身が作曲した「サライ」を、昨年で最後の歌唱としている。

今年7月に放送された『FNS27時間テレビ』(フジテレビ)も、お笑いBIG3(タモリ、ビートたけし、明石家さんま)、ダウンタウン、ナインティナインといった面々から、千鳥、かまいたち、ダイアンへという“世代交代”をテーマの1つに持っていた。『24時間テレビ』のみならず、大きな変革期を迎えているテレビ界全体が、次の世代へのバトンタッチをより意識する時期に入っているのかもしれない。

■なにわ男子が次々に今後を見据えたコメント

本番を終えたなにわ男子の7人は、報道陣の取材に「達成感がすごいです」(西畑大吾)、「ちょっと不安な気持ちもあったんですけど、最後に大きな拍手を頂いてホッとできました」(藤原丈一郎)と皆が充実の表情。

その上で、「1人の人間として、大人として頑張っていきたい」(大西流星)、「本当にいい経験ばかりで楽しかったので、これからも頑張っていこうと思いました」(高橋恭平)、「ここから来年、再来年に向けて頑張っていかないと」(長尾謙杜)、「『24時間テレビ』で経験したことを生かせるように頑張っていきたい」(道枝駿佑)など、メンバーから次々に今後を見据えたコメントが出てきたのが印象的だった。

フィナーレの最後で、総合司会の羽鳥慎一が「コロナによるこの3年で『24時間テレビ』は大きな分岐点を迎えたのではないかと思います。コロナ後の新しい『24時間テレビ』の礎を作ろうという思いを持って、“福祉”、“災害復興”、“環境保全”というチャリティーの柱に、今回は“子どもの未来”を加えました。将来の子どもたちのために、世代を超えた社会のつながりを考える番組にしたいという思いから、『明日のために、今日つながろう。』というテーマを掲げさせていただきました。皆さんが未来のために、そして『明日のために、今日つながろう。』と少しでも考えてくださったら幸いです」と呼びかけていたが、果たして今年の『24時間テレビ』は“第3ステージ”の土台を作ることができたのか。

今後、視聴率を含む様々な番組指標や最終的な募金総額などで評価されることになるが、長尾は「若い僕たちだからこそできた『24時間テレビ』になったのかなと思います」とも語っており、少なくとも24時間を走り抜けた演者たちは、“未来志向”というコンセプトに手応えを感じているようだ。