――謎解き、伏線の多い作品だけに、現在撮影しているシーンでわからない部分があっても、わかっているような演技をしないといけない、なんてことがあるんですね。
たとえば、カグラギ(演:佳久創)に妹(スズメ/演:加村真美)がいたことは第14話で明らかになりますけど、それまでは台本をいただくまで、私たちもまったく知らされていなかったんです。以前の回で、ラクレス(演:矢野聖人)と向き合ったカグラギの表情に、そういう部分(妹がラクレスの人質となっている)が見えていたりします。ストーリーの進行を追いかけていくのが面白い一方で、こうやって前の回を見返しても興味深いというのが、『王様戦隊キングオージャー』という作品の楽しみどころです。
――映画ならではのスペシャル感のある場面は、どんなところですか。
ゲストの方々がとても豪華なんです。特に強く印象に残ったのは、前トウフ女王殿のイロキを演じられた雛形あきこさんです。雛形さんとは、私が演技のお仕事に初めて取り組んだ『ブラックシンデレラ』(2021年)というドラマでご一緒させていただきました。美人社長の役で、私とは母娘の間柄でした。ヒメノを演じるにあたっては、あのときの雛形さんの仕草を意識して「令嬢とはこんな感じ」とインスピレーションをもらっていましたから、こういう形でお会いすることができて、本当にうれしく思いました。
――死の国=ハーカバーカでは、ヒメノが亡くなった両親と再会されるそうですね。
そうです。私自身はまだ親しい人と死別した経験がないので、「亡くなった両親に会う」というヒメノの心境がリアルに想像できないままでいました。それなら、いま元気な両親とたくさん話そう!と思って、撮影前に実家の両親といっぱい話す時間を作りました。
――父ディード役のクラウスさん、母メタリー役のダーブロウ友紗さんとは、何かコミュニケーションを取られましたか。
ヒメノの両親なので、そこは強く意識しました。お芝居をしながらもお互いの感情をぶつけあっているので、リアルな関係性が築けたのではと思います。ダーブロウさんは小さい息子さんのお母さんですから「演技をしていて、つい感動しちゃうね」ってお話していました。この映画は、お母さん目線で共感できたり、子どもの目線でヒメノたちを応援したり、幅広い世代にそれぞれの共演を得られるのではないかと思います。ぜひご家族で映画を見に来てくださったらうれしいですね。
――上堀内佳寿也監督は初期エピソードの第1~5話を撮られていました。あれから回を重ね、成長したヒメノの姿をお見せできたのではないですか。
上堀内監督からは「アフレコのとき、すごく声が出るようになったね」と言っていただけました。私自身は、そんなに声の大きな方ではないと思っていたのですが、カマリキオージャーの激しいアクションをモニターで見るうちに、声も鍛えられたのかもしれません(笑)。そういった変化、成長したところを、最初から入っているメイン監督の上堀内監督に認めてもらえたのはうれしいです。
――スパイダークモノス/ジェラミー・ブラシエリ(演:池田匡志)を迎えて6人となった王様戦隊キングオージャーの全員名乗りが第19話で見られましたが、紆余曲折を経て6人が仲間になったことについての感想を聞かせてください。
リタのセリフに「1人では無力だ」というものがあります。今まで個々で民を守るため戦ってきた王たちが、最大の危機を脱するため、みんな手を取り合いながら頑張る。自分ひとりだけじゃなくて、まわりの人をも巻き込んで、ひとつの大きな何かを作り上げるという展開には、素直に感動します。
――実際の6人のチームワークもいいとうかがっています。村上さんとしては、どんな瞬間に「結束」の強さを感じますか?
私たちの結束の出方としては「誰かがボケたら、絶対に別の誰かが拾って、ツッコミを入れる」というのが挙げられますね。謎の結束感(笑)。1日の撮影が長引いてきて、だんだん予定よりも遅くなると、みんな体力を消耗して、疲れてくるんです。そういう局面で、誰かが何気なく放ったひと言であっても、誰かがちゃんと拾うんです。私、以前はまったくボケたりツッコんだり、みたいなのをするタイプじゃなかったんですけど、どんなことを言っても「きっと誰かが拾ってくれる」と信頼しているので、積極的にボケていく機会が増えました(笑)。
――疲れているときこそ、何気ないギャグの破壊力がすごいんだと思います。そういう状況で、いちばん面白いのはどなたなんですか。
みんなは声をそろえて私だと言います(笑)。それには理由があると思うんです。ふだん私はみんながにぎやかにおしゃべりしているのを、黙って聞いているのが好きなんです。そんな状態のまま夜を迎えれば、すでにみんな疲れているのに対して、黙っていたぶん私のエネルギーが余っている(笑)。昼間に温存していた勢いをラストスパートで出していくので「夜でも元気だね」と言われるわけです。キャストもスタッフも、いいチームワークが発揮できていると思います。全員『王様戦隊キングオージャー』をすばらしい作品にしようという目的に向かってまっすぐ突き進んでいて、それが結束力の強さとなり現れているのだと思っています。
――これまで放送された中で、村上さんが特に印象に残っているエピソードはどれでしょう。
どれも印象に残っているのですが、強いて選ぶとすると第16話「10才の裁判長」を挙げます。15年前に発生した「神の怒り」について、リタ(演:平川結月)だけはヒメノの主張を聞き入れ、調査の末「災害ではなく、人の手によって起こされたもの」だと証明してくれました。ヒメノが直接、リタに「もっふんプレミアムフィギュア」を手渡しに行ったのは、自分の言葉を信じてくれてありがとうという、信頼と感謝の気持ちからだったんです。あそこはヒメノの素直な思いを表すことができて、演じながらとても楽しかったシーンでした。
――すでに完成されたキャラクターであるヒメノが他者と向き合いながら、一歩ずつさらなる成長を見せていく姿を丁寧に描くのは、見ているファンのみなさんにとっても自分のことのようにうれしいのではないでしょうか。
そう言ってもらえると、ヒメノを演じる私自身もうれしく思います。
――吉満寛人さん演じる執事のセバスチャンとのコンビネーションも、ヒメノを語る上で忘れてはならない部分ですね。
吉満さんには毎回、とても感謝しています。最初のころはカッコよくセリフを言うことができない私にコツを教えてくださったり、「さっきのシーン、こんなところが良かったよ」と、細かい部分について褒めてくださいます。セバスチャンはちょっとヒメノに甘すぎるところがあるのですが、吉満さんもかなり私に甘いのではないかと、最近思うようになりました(笑)。
――画面からも、ヒメノとセバスチャンに強い信頼を感じることができます。
ヒメノが一言「セバス!」と言っただけで、セバスはいろいろなことを察してくれます。こうしてほしいとか、あれが必要だとか、流れですべてがわかるんです。メイド長(演:神里まつり)もエレガンス(演:水島麻理奈)も、みなさんヒメノには甘くて、わがままなヒメノ、女王を務めるヒメノを好きでいてくれるんだなと、一緒にお芝居をしながら感じています。
――映画の公開を経て、テレビシリーズの後半展開も気になるところです。村上さんとしては、今後ヒメノにこんなことをしてほしいという「要望」があったりするでしょうか?
ヤンマ(演:渡辺碧斗)がヒメノを頼り、協力を求めたのと同じように、ヒメノ自身も「誰かを頼る」という部分をもっと見せたいなと思います。ヒメノはこれまで、気を許せる仲間をあえて作らなかったと思うんです。きっと、大事な存在がいると、その人を失うのが怖くなるからです。これからは、それでも一緒にいたいと思わせる仲間に対して、ヒメノがどんなわがままを見せることができるのかを楽しみにしています。ヒメノがどんな風に成長し、すばらしい女王になることができるのか、みなさんもぜひ見守っていてください!
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