「哲学」と聞くと、少し難しい印象がある人も多いでしょう。しかし、哲学者たちの名言・格言であれば、すっと理解できるかもしれません。
本記事では、哲学の名言を世界中から集めました。ニーチェ、孔子、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、カント、マルクス、西田幾多郎などによる、人生に役立つ言葉が盛りだくさんです。それぞれの哲学者の概要や、哲学とは何なのか、その意味もまとめました。
【哲学の名言集】フリードリヒ・ニーチェの名言一覧
フリードリッヒ・ニーチェ(1844年~1900年)は、ドイツの哲学者・詩人であり、現代哲学に多大な影響を与えた思想家の一人です。
ニーチェの思想は「永劫回帰」「ニヒリズム(虚無主義)」「超人」などの概念で知られています。
「神は死んだ」
「神は死んだ」はニーチェの言葉の中で、最も有名とも言える名言です。
当時のヨーロッパではキリスト教の信仰が人々の価値観に深く影響し、キリスト教の教えが生き方の基準になっていました。
ニーチェは、キリスト教の信仰が崩壊することによって、自分たちは新たな価値観を見つけ出せると考えました。
「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」
ニーチェの著書『善悪の彼岸』で用いられた言葉です。
一般的には、深淵、つまり難解な問題との戦いに夢中になっていると、いつしか我を失い、自分も悪者だと見なされる可能性があることと解釈されています。
ニーチェの名言・格言集 -「神は死んだ」などの言葉や思想から人生を考える
【哲学の名言集】ピタゴラスの名言一覧
ピタゴラス(紀元前570年ごろ~紀元前496年ごろ)は、古代ギリシャの哲学者・数学者です。
宗教的・数学的な研究を行うピタゴラス学派という団体の創設者で、教えを広めるために多くの弟子を持ちました。
「必要性とは、可能性の隣人である」
人類の歴史や科学の進歩は、必要性と可能性が常に隣り合って発展してきたとも言えるでしょう。人間は、不可能と言われてきたことを可能にしてきました。
必要性があるからこそ可能性が生まれ、可能にするために人間は努力してきたのです。
もし実現したい未来があり世の中に必要だと感じられるなら、必ず実現方法が見つかるという前向きな考えが含まれています。
「多くの言葉で少しを語るのではなく、少しの言葉で多くを語りなさい」
この言葉は、多くの言葉を使って説明するよりも、簡潔な言葉で、要点を的確に伝えることが大切であるということを意味しています。
言葉が多いと、大切な点がぼやけてしまいます。特に現代の情報過多な社会においては、相手に必要な情報を効率的に伝えることはより大切です。
また、物事を熟知している人ほど、ペラペラと多くを語らない、という解釈もあります。
【哲学の名言集】ソクラテスの名言一覧
ソクラテス(紀元前469年ごろ~紀元前399年)は、古代ギリシャの哲学者です。現代の哲学や倫理学の基礎を築いたとされており、「哲学の祖」と呼ばれています。
相手にさまざまな問いを投げ掛け、答えに含まれる矛盾を指摘することで無知を自覚させる「ソクラテスの問答法」が有名です。
「徳は知である」
この言葉は、人間の徳は、知識に基づいて形成されるという意味が込められています。
人が善い、正しい行いをするためには、善悪を判断できる知識が必要だとであると彼は考えたのです。
「善く生きる」
ソクラテスは自著を残さなかったため、この言葉は、弟子であるプラトンの著書『ソクラテスの弁明』内に記されています。
善い行いをして内面を磨くことで、良い魂を得られるという意味が込められています。
「汝自身を知れ」
この言葉はデルフォイのアポロン神殿において、玄関の柱に刻まれていたとされる言葉です。ソクラテス自身の言葉であるかどうかは諸説ありますが、少なくとも座右の銘としてよく述べていたそうです。
自己認識や自己理解、客観的な自己評価などの重要性を表しています。
ソクラテスの名言とは - 問答法の詳細や「弁明」などの関連著書を紹介
【哲学の名言集】プラトンの名言一覧
プラトン(紀元前427年ごろ~紀元前347年)は古代ギリシャの哲学者であり、ソクラテスの弟子で、事物の本質、模範を表す「イデア論」が有名です。
彼の代表的な著作には『饗宴』『ソクラテスの弁明』『国家』などがあります。
「石工達曰く、小さな石なくして大きな石だけで石垣は建てられない」
この言葉は、小さな石も大きな石も大切だという意味です。小さな石も大きな石を支える基盤や補完する役割を果たし、全体の完成度や強固さに貢献するという意味が込められています。
つまり社会や組織においても全ての個人が大切であり、それぞれの役割や貢献が全体の成果につながることを示しています。
「自分に打ち勝つことが、もっとも偉大な勝利である」
日々の生活の中で、良くないこと、楽なことなどへの誘惑は付き物です。
その誘惑に打ち勝ち、自分を律することは難しいことですが、一番大切であるということを表す言葉です。
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【哲学の名言集】アリストテレスの名言一覧
アリストテレス(紀元前384年~紀元前322年)は、古代ギリシャの哲学者・科学者です。
プラトンの弟子であり、晩年はアテネにリュケイオンと呼ばれる学校を創設。自らの哲学体系を確立し多くの著作を残しました。
「批判を避けたいのであれば、何もせず、何も言わず、何者にもなるべきではない」
この言葉は、批判を避けたいと思うならば、何も行動を起こさず、何も言葉を発しないで、他者と異なる存在になることを避けるべきであると示しています。
逆に言えば、自己を表現することにはリスクや批判がつきものであり、自分自身を持って他者と異なる存在になることは、批判を受ける可能性を覚悟しなければならないことを意味しています。
「人は物事を繰り返す存在である。従って、優秀さとは行動によって得られる物ではない。習慣になっていなければならないのだ」
優れたパフォーマンスを発揮するためには、習慣化されることが重要であり、持続的な努力や習慣を大切にする姿勢が必要であるという意味を持っています。
良い行いは思い出したようにするものではなく、普段から日常的にしてこそ身になる、ということですね。
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【哲学の名言集】シャルル・ド・モンテスキューの名言一覧
シャルル・ド・モンテスキュー(1689年~1755年)は、フランスの政治哲学者、啓蒙(けいもう)思想家、法学者、歴史家です。
彼の最も有名な著作は、『法の精神』(1748年)です。この著作において、彼は政治制度や政府のあり方を考察し、三権分立の原則を提唱しました。
「偉大なことを成し遂げる人は、常に大胆な冒険者である」
この言葉は、偉大な成果を上げるには、大胆で冒険的な行動をとる必要性があることを示しています。
何かを成し遂げるには、恐れずに、果敢にチャレンジすることが必要なのです。
「真に偉大な人間になるためには、人々の上に立つのではなく、彼らと共に立たなければならない」
この言葉は、真に偉大な人間になるためには、他者と協力し共に立ち上がることが重要であることを示しています。
単に自分自身を優位に置いて、独りよがりに行動するのではなく、他者と共にあることがリーダーシップにおいて大切な要素なのです。
【哲学の名言集】デビッド・ヒュームの名言一覧
デビッド・ヒューム(1711年~1776年)は、イギリスを代表するスコットランド出身の哲学者、政治家、経済思想家、啓蒙思想家として知られています。
彼の最も有名な著書は、『人性論』(『人間本性論』と訳されることもあります)です。
「いかなる著述の企ても、私の『人性論』ほど不運なものはなかった。それは『印刷機から死んで産れ』おちたのである。狂信家のあいだに、ささやきの一つを起こすような評判すら得られなかったのである」
この言葉は、自身の著書『人性論』が、世間から目立った反応を得られなかったことから述べられた言葉です。
名言というより迷言かもしれませんが、現代において『人性論』が優れた哲学書の一つとして評価され、彼の代表作とされているのは、歴史の皮肉を感じさせます。
優れた発言や革新的な発言は、周囲から理解を得づらいものだというエピソードを含めて、深く考えさせられるものがあります。
【哲学の名言集】イマヌエル・カントの名言一覧
イマヌエル・カント(1724年~1804年)は、ドイツの哲学者で、近代哲学の祖とも呼ばれています。
『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』など多くの著書が残っています。
「哲学は学べない。学べるのは哲学することだけである」
「哲学」とは、一つの回答を求めて学ぶものではありません。
哲学的な思考を持って考えることを繰り返しているうちに、視野が広がり、さまざまな可能性が見えてくることを哲学と呼ぶのでしょう。
「存在するとは、行動することである」
何か思っていることがあっても、心に秘めたままで行動しなければ、誰にも知ってもらえません。
知ってもらえないということは、存在しないことと同じとも言えるでしょう。
勇気を出して、行動することの大切さを説く言葉です。
【哲学の名言集】ヘーゲルの名言一覧
ゲオルク・ウィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(1770年~1831年)は、ドイツの哲学者です。
最も重要な著書の一つに『精神現象学』(1807年)があり、これは彼の哲学的体系において中心的な著作の一つとされています。
また彼の政治哲学に関する著書『法の哲学』(1821年)も、重要な著作として知られています。
「この世で情熱なしに達成された偉大なことなどない」
この言葉は、その事柄が好きだから努力をし、努力をするから偉大なことにつながることを意味しています。
何かを成し遂げるのならば、嫌々やらされるのではなく、自らが情熱を持って全力で取り組むことが大切です。
「歴史を学ぶと、我々が歴史から学んでいないことが分かる」
この言葉は、歴史とは出来事自体だけでなく、そのときの人々の行動や、社会の変遷を学ぶ学問であることを意味しています。
一方で歴史から学ぶことは難しく、それゆえ愚かな歴史が繰り返されている事実を皮肉ってもいます。
過去の経験や出来事を学ぶことによって、今の自分のことを見つめ直すことができます。現在や未来を理解し、改善するための示唆を、歴史を学ぶことで得られるのです。
【哲学の名言集】セーレン・オービュエ・キルケゴールの名言一覧
セーレン・オービュエ・キルケゴール(1813年~1855年)は、デンマークの哲学者・神学者であり、実存哲学の先駆者として知られています。
「人生は、後ろ向きにしか理解できないが、前を向いてしか生きられない」
この名言は、キルケゴールの人生観や信念を反映していると言えるでしょう。
彼は「後悔をしても過去を変えることはできない。人生を肯定的な視点で理解し、前向きな態度で捉えるべきだ」と主張していると考えられます。
過去から学びを得ることは大切ですが、とらわれることなく、未来を前向きに考えながら現在を生きることが大切です。
「祈りは神を変えず、祈る者を変える」
この言葉は、祈るだけでは神様は願いをかなえてくれないこと、しかし祈る者自身を変える効果があることを表していると考えられます。
祈ること、つまり心の中での自分との対話や自省には、自己啓発や内面的な変容を促し、自己の成長や改善を促す力があると言えるでしょう。
【哲学の名言集】カール・マルクスの名言
カール・マルクス(1818年~1883年)は、ドイツの哲学者・経済学者・革命家です。科学的社会主義の創始者で、『資本論』や『共産党宣言』などの著作で有名です。
彼と彼の同士であるエンゲルスの思想は、「マルクス主義」と呼ばれています。
「私は醜い男である。しかし、私は自分のために最も美しい女性を買うことができる。だから、私は醜くない。というのも、醜さの作用、人をしてぞっとさせるその力は貨幣によって無効にされているからだ」
この言葉には、貨幣や経済の観点から、社会の構造を批判する内容が含まれています。
お金さえあれば、なんでも帳消しにできることのおかしさ、不条理さを皮肉っているのです。
【哲学の名言集】マルティン・ハイデガーの名言一覧
マルティン・ハイデガー(1889年~1976年)はドイツの哲学者です。
1927年に『存在と時間』という著書を発表し、これが彼の最も重要な著作の一つとなりました。
「経験を積んだ人は、物事がこうであるということを知っているが、なぜそうであるかということを知らない」
経験を積むことで、事実や現象を知識として身に付けることができます。しかし、その背後にある原因や理由、本質を理解する人は意外と少ないものです。
自分が知っていることに関しても、改めてその物事がなぜそうなっているのか問い直すことが重要であると示しています。
「良心は、ただただ常に沈黙という形で語る」
この言葉は、内面の声を重視するように示した言葉です。
人々は外部からの圧力や社会的な期待、自己の欲望や利益などに惑わされ、良心の声を聞き流したり無視したりすることがあります。
しかしこの名言は、良心はいつも沈黙という形で語りかけていること、その存在を見つめることで善い行いができることを示しています。
【哲学の名言集】エーリヒ・フロムの名言一覧
エーリヒ・フロム(1900年~1980年)は、精神分析学者、社会心理学者、社会思想家などとして知られる人物です。ドイツで生まれ、ナチスに追われて1934年にアメリカへ亡命しました。
代表的な著書には『自由からの逃走』などがあり、新フロイト派の代表者の一人です。
「たくさん持っている人が豊かなのではなく、たくさん与える人が豊かなのだ」
物質的(お金)の豊かさが人間の豊かさを決定するのではなく、他者に対する思いやりを持つことが、真の豊かさであるという考えを示しています。
持つことよりも、困っている他者を助けたいという気持ちが大切なのです。
「自分の役に立たないものを愛するときにはじめて、愛は開花する」
この言葉の「愛」は、恋愛での「愛」に限りません。愛に対する一般的な考え方を問い直しています。
無償の愛や他者を思いやる愛、分かり合うことに意味があると示しているのです。
【哲学の名言集】孔子の名言一覧
孔子という名前は、学生時代の漢文などの授業で聞き覚えがある人も多いでしょう。
孔子(紀元前552年~紀元前479年)は、古代中国の思想家であり、儒教の祖です。弟子が孔子の言葉や教えをまとめた文献として『論語(ろんご)』が有名です。
「子路、君に事えんことを問う。子曰く、欺くことなかれ。而してこれを犯せ」
現代語に訳すと「子路という弟子が孔子に、君主に仕えるとはどういうことか、と問うた。『偽ってはいけない。そして君主が誤っているときには、真正面から逆らってでも諫めよ』と孔子はおっしゃった」となります。
仕事やプライベートで目上の人に接するときに、現代でも通用する考え方です。
「子曰く。先ず行う。その言や、しかるのちにこれに従う」
この言葉を現代語に訳すと「孔子は『まず行動で示しなさい。言葉はその後でついてくるのだから』とおっしゃった」となります。
何事か成し遂げるにはまず行動があり、言葉や理屈は後からついてくるという意味です。口だけで行動しない人は、周囲からの信頼を失ってしまいます。
とにかく行動をすることの大切さを、孔子は教えてくれています。
【哲学の名言集】西田幾多郎の名言一覧
西田 幾多郎(にしだ いくたろう/1870年~1945年)は、日本の近代哲学を代表する人物の一人で、京都大学などで教授も歴任しました。
有名な著書には『善の研究』『自覚に於ける直観と反省』『哲学の根本問題』などがあり、彼の哲学は「西田哲学」と呼ばれています。
「花が花の本性を現じたる時最も美なるが如く、人間が人間の本性を現じたる時は美の頂上に達するのである」
この言葉は、人間の本性を花の姿に例えています。花が自然な姿であり、それぞれの花が、それぞれに一生懸命花を咲かせ自分を表現する瞬間が、最も美しいとされることを示しています。
人間も同じで、いろんなことを考えてあれこれと手を回すよりも、無心で自分のできる努力を行い、花開いた才が美しいということを表しています。
「衝突矛盾のある処に精神あり、精神のある処には矛盾衝突がある」
異なる価値観や意見を持つ人と出会ったときに、意見がぶつかり合うことがあります。
しかし、異なる視点や意見を尊重し、対話や協力を通じて解決を図ることで、より深い人間関係が形成されるという考えが、この言葉には含まれていると考えられます。
そもそも哲学とは? - 「智や学びを愛すること」を意味する言葉
哲学とは、英語のphilosophyを日本語に訳したものです。もともとphilosophyはギリシャ語のphilosophiaに由来しており、これは「sophia(智)をphilein(愛する)」という意味からきています。
「哲学」とは、世界や人生などのさまざまな抽象的な問いについて探求し、根本原理を深く考察する学問のことです。平たく言うと「本当のことを知りたい」という気持ちを大切にすることなのです。
哲学の考え方は、ビジネスや日常生活での人間関係や、自分の将来を考えるときなどに役立てることも可能です。哲学的な視点から物事を考えることで、視野が広がり、理解が深まるでしょう。
有名な哲学者たちの一言から、生きる上でためになる真理を学ぼう
本記事では、15人の哲学者による名言を紹介しました。
仕事や将来、人間関係に悩んだときなど、自分の人生を見つめ直す際に参考にしてみてください。