東京国立近代美術館で、「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が始まりました。いよいよ完成の時期が視野に収まってきた“未完の聖堂”、サグラダ・ファミリア。本展は、世界中の人々を魅了してやまないこのサグラダ・ファミリア聖堂に焦点を絞り、100点を超える図面や模型、写真や資料、さらに最新の映像を通して「ガウディ建築」の真髄に迫っています。
1852年にスペイン・カタルーニャ地方のレウスに生まれた建築家、アントニ・ガウディ。バルセロナ市内に点在するカサ・ミラやグエル公園など、彼が手がけた建築はほぼすべてがスペインの国宝や重要文化財に指定され、うち7点は世界遺産にも登録されています。
なかでもサグラダ・ファミリア聖堂は、1882年の着工から140年が経った現在も建築が続いているバルセロナのシンボルです。想像を超えるほど圧倒的なスケールと、独創性あふれる唯一無二のデザイン。この途方もなく壮大な聖堂に、ガウディは43年間、心血を注ぎ、全建築人生を捧げました。
そんなロマンが時代を超えて人々を熱狂させ続けるのか、日本でも根強い人気を誇るガウディ。この展覧会のキュレーターを務める東京国立近代美術館の鈴木勝雄さんは、「これまでも色々な形でガウディ展が開催されてきましたが、本展はすべてのガウディ建築を網羅的に扱うものではありません。タイトルが示す通り、サグラダ・ファミリア聖堂を中心に据えて、ガウディの創造の源泉をひもときながら、図面や模型で制作のプロセスに注目することによって、ガウディの息遣いとともに、試行錯誤の過程を確認していくものです」と、企画の意図を語ります。
展示の始まりは、バルセロナでの学生時代から。本の世界にどっぷりつかるのが好きだったガウディが愛読していた蔵書や、建築論を記した自筆のノートなどから建築家になるまでの過程を追い、イスラム建築や中世ゴシックのリバイバル建築などの「歴史」、植物や生き物、浸食地形の洞窟などの「自然」、さらにガウディが深く研究した放物線など自然の中に発見される「幾何学」から、ガウディのオリジナリティの源泉を解き明かしていきます。
「いかに天才・ガウディといえども、独自の世界を築くにあたっては、古今東西のさまざまな建築やイメージソースが合わさって、彼の独自の造形理論を作り出していった。その頭の中をのぞくものです」と鈴木さん。
メインとなる第3章では、ガウディ自身の手による大小さまざまなサグラダ・ファミリア聖堂の模型に加えて、図面や写真、さらに映像を駆使して、“ガウディ以前”と“ガウディの時代”の「サグラダ・ファミリアの軌跡」をつぶさに紹介していきます。
美術館におけるガウディ展ということで、彼の彫刻術にもスポットが当てられ、型どりをして制作した石膏像も展示。さらに、長年サグラダ・ファミリア聖堂建設に携わってきた彫刻家・外尾悦郎さんが制作した「降誕の正面」を飾った彫刻群も展示され、1人1人の天使の表情や所作を間近で見る臨場感は格別です。
1926年、その日の仕事を終えたガウディは路面電車にはねられ、3日後に他界。享年73歳でした。その葬儀のために遺体を運ぶ馬車の後ろには1.5kmもの行列が続き、街路はバルセロナ市民で埋め尽くされたそう。展示の中には、ガウディの死を報じた当時の新聞や写真とともに、彼の死亡通知書もありました。
ガウディの死後も後世の人々に引き継がれ、現在進行形で建築が続いているサグラダ・ファミリア聖堂。没後100年の2026年に、いよいよ建物の中心に位置する最も高い「イエスの塔」の完成が予定されています。“未完の聖堂”と呼ばれてきた聖堂の完成が視野に入ってきた今、ぜひガウディが残した軌跡を目撃しに、東京国立近代美術館に足を運んではいかがでしょうか。
■information 東京国立近代美術館 「ガウディとサグラダ・ファミリア展」
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
期間:6月13日(火)~9月10日(日)10:00~17:00 ※会期中一部展示替えあり ※金土は20:00まで(入館はそれぞれ閉館の30分前まで)/月曜休※ただし7/17は開館、7/18は休
観覧料:一般2,200円、大学生1,200円、高校生700円、中学生以下無料
※滋賀、愛知へ巡回予定