電気自動車(バッテリーEV=BEV)と内燃機関搭載車の見た目上の大きな違いは「顔」だ。エンジンを積むクルマは網状のグリル、EVはつるんとしたパネルになっている場合が多い。パネル状のEVの顔にはデザイン的に遊べる余地がけっこうあるようだが、豊田合成の提案を見てみよう。
機能と見た目、両立は難しい?
先進的なBEVは、クルマのフロント部分にレーダーやセンサーなどの機器を搭載している。なのでBEVのフロントパネルは、レーダーが発する「ミリ波」などを透過させられる素材でなくてはならない。金属だと「透過機能」を持たせるのは難しいらしいが、豊田合成が展示したフロントパネルは樹脂製だ。ちなみに展示中の技術は実際のクルマに採用されているものではなく、コンセプト段階にあるものだという。
フロントは「顔」とも呼ばれるくらいクルマのデザインにとって重要な部分だが、豊田合成ではフロントパネルの透過機能を担保しながら「意匠性」も両立させるべく工夫している。レーダーやセンサーなどをフロントの中心部に集約し、両サイドはユーザーの好みに合わせて意匠を変えられる仕組みを導入しているのだ。
フロントパネルの両サイドには、簡単にはがせるフィルムを貼ったり、再生材を用いたパーツを取り付けたりといったような手法で意匠を変えられるアイデアを盛り込んでいる。BEVの中古売買やシェアリングが盛んになった際、乗る人が自分好みにクルマの顔を変えられると面白いのでは……。そんな発想から提案しているという。
豊田合成はレクサスの「スピンドルグリル」の大部分を手掛けるなど、クルマのフロント部分で実績を持つ企業なのだが、クルマの電動が進めば別のニーズも生まれてくる。同社では意匠性と機能を両立させられる技術をいかし、BEVのフロントパネルで付加価値のある提案をしていく方針だ。