繊細で優美な輝きをまとう「ダイヤモンド」。筆者は幼いころにもらったキラキラ光るおもちゃのダイヤモンドのとりこになり、大切に大切に扱っていたのを今でも覚えている。

それは大人になっても変わらず、ジュエリーショップでダイヤモンドを目にすれば、いまだにくぎ付けに。そんなダイヤモンドの輝きは一体どうやって生み出されるのだろうか。普段目にすることのない、輝きの原点を知るダイヤモンドの旅に出掛けてみよう。

  • どうやってこの原石は輝くのだろうか。きらめきを宿す旅にでかけてみよう

筆者が潜入したのは、カッターズブランド「エクセルコ ダイヤモンド」の工場「H&Aカッティングワークス」。原石の仕入れ~販売までを行う完全自社一貫生産の企業は多くないと言うが、同ブランドはそれを実現する数少ないうちの一つだ。

「H&Aカッティングワークス」には300人を超えるスタッフが在籍し、"カット"というダイヤモンドを輝かせる作業を担っている。また、「ラウンド ブリリアント カット」でハート&アローというハイレベルな基準のカットを行う工場としては、世界最大級を誇るという。ここでは、すべての工程を厳密に管理し、誰がいつどの作業を行ったのかという、ダイヤモンドの歩んできた道のりを1石1石たどることが可能だ。

  • 「エクセルコ ダイヤモンド」のタイ工場「H&Aカッティングワークス」

「エクセルコ ダイヤモンド」では、その軌跡をユーザーにも届けようと、どんな原石でどうカッティングされたのかを確認できる世界初のシステム「ダイヤモンドジャーニー」を導入している。これは同ブランドが扱うダイヤモンド(※)に付与されており、原石から扱うエクセルコ ダイヤモンドだからこそかなう取り組みと言えるだろう。
※0.25ct未満およびHカラー以下、クラリティがSI1以下のダイヤモンドには付与されない

今回は、そんなダイヤモンドジャーニーを生み出す"ダイヤモンドの旅"をたどっていくとしよう。

■旅の案内人はダイヤモンドの歴史を紡ぐ一族

この旅をナビゲーションしてくれたのは、エクセルコ ダイヤモンドの代表であり、マスターカッターであるジャン・ポール・トルコウスキー氏(以下ジャン・ポール)と、同氏の息子であり工場の統括責任者であるアルノー・トルコウスキー氏だ。

  • 右からジャン・ポール氏、アルノー氏

彼らは1850年代から続くダイヤモンドの名門一族・トルコウスキー家の7代目と8代目。実は、トルコウスキー家の4代目は、私たちがよく目にするダイヤモンドの形「アイディアルラウンド ブリリアント カット」を誕生させた人物として、世界に名を馳せている。

  • 「アイディアルラウンド ブリリアント カット」。世界が求める理想的なカットということで「アイディアル(理想的な)」という単語が呼称には含まれている 提供:エクセルコ ダイヤモンドHPより

マスターカッターであり数学を専攻していた4代目マーセル・トルコウスキー氏は、「美しく輝くダイヤモンドを数学的に論証しよう」との想いから、カッティングプロポーションによる光効果を分析。その結果、光を最も効率よく光学的に反射させる58面体のカット「アイディアルラウンド ブリリアント カット」を1919年に導き出した。

このカットは、世界的な宝石学鑑定機関「GIA(米国宝石学会)」が出した"最も美しく輝くカット"の研究結果とほぼ同じだったことがのちに判明。マーセル氏が生み出した輝きの原点の方程式は、今や9割を超えるダイヤモンドカットのルーツとなり、100年以上経過した現在でもこれを超えるカットは開発されていないという。

ジャン・ポール氏は、こうした一族の功績、そしてカッティングという仕事についてこう語る。

「私たちは100年以上前にマーセル・トルコウスキーが発明した卓越的な基準に敬意を表しながら、アイディアルカットを研磨できることに大きな誇りを持っています。彼の発明はダイヤモンド業界の在り方を一変させました。アイディアルカットのラウンド ブリリアントは、発明された当時と同じように完璧で美しいものとしてあり続けている稀有な存在です。また、父親として8代目となる息子・アルノーに充足感にあふれた人生を歩みながら彼なりのやり方でジャーニーを続けてくれることを願っています」。

1994年、ジャン・ポール氏は、マーセル氏の理論をもとにアイディアルラウンド ブリリアント カットを、より輝きを得られる57面体へと進化。これにより、理想のプロポーションはさらなる輝きを放つこととなった。

■ダイヤモンドの旅の幕開け

「ダイヤモンドは地球の産物であり、一瞬の奇跡によって誕生します」と、ジャン・ポール氏。

地球深く数億年の時間をかけて生み出されるダイヤモンドは、ベースとなる「炭素」が強力に結びつくことでダイヤモンドの結晶が誕生する。この結晶を含む緑の岩石「キンバーライト」はマグマの噴出によって出現。これには、「音速以上のスピード」で噴き上げられることが条件となり、音速に満たなければ、カーボンに似た物質と化してしまう。

  • 「キンバーライト」

特殊な条件がそろわなければ生み出されないダイヤモンドは、まさに地球が育んだ"奇跡"と言えるだろう。だが、そんな貴重資源であるがゆえ、「ブラッド・ダイヤモンド」と言われ、紛争の資金源としてダイヤモンドが扱われてしまうことがあるそうだ。同ブランドではこうした原石の扱いを避けるため、紛争ダイヤモンドではないことを証明するための国際的な証明制度「キンバリー・プロセス証明制度」をもとに、仲介業者を挟むことなく同社自らピュアな原石を買い付けているという。

「お客さまがダイヤモンドに対して絶対的な安心感を持っていただくことを保証しています」と、語気を強めるジャン・ポール氏。その言葉通り、同ブランドは原石から買い付けることで、ピュアなダイヤモンドを届けるというお客さまとの約束を実直に守り続けている。

  • この時点で美しくもあるが、私たちが想像する煌めきはまだない

ちなみに原石は自然の産物ゆえもちろん、形や大きさはすべてバラバラ。多種多様なものが存在する中で、エクセルコ ダイヤモンドではデジタルと人の目によって分析を行い、良質な原石をセレクトしている。ただし、「選ぶ」と言ってもそう簡単なことではなく、良い原石を選ぶには20年以上の経験が必要と言われており、それをなせる人は世界でもごくわずかなのだとか。

この時点の原石でも十分に美しいが、より存在感のある光を放つためには「カット・研磨」が重要になってくる。後編ではその工程をみていくとしよう。

続きを読む【後編】『ダイヤモンドの旅』が素敵すぎ! どうやって原石は輝くの? - 貴重な研磨体験にも挑戦!

取材協力: EXELCO DIAMOND (エクセルコ ダイヤモンド)