店舗ビジネスには、フランチャイズチェーンやレギュラーチェーンなど、いくつかの経営形態が存在します。フランチャイズに興味があっても、「これらの違いについてよく知らない」という人もいるのではないでしょうか。

今回は、フランチャイズチェーンとレギュラーチェーンの違いや、それぞれのメリット、デメリットなどを解説します。

■フランチャイズチェーンとレギュラーチェーンの違い

企業が店舗をチェーン展開する時のチェーンには、「フランチャイズチェーン」「レギュラーチェーン」「ボランタリーチェーン」の3種類があります。まずは、それぞれどのような内容なのか確認してみましょう。

<フランチャイズチェーン>

フランチャイズチェーン(フランチャイズ店)とは、「本社企業とフランチャイズ契約を結び、運営されている加盟店」です。フランチャイズに加盟した加盟店側は、ロゴやマークなどの商標、店舗運営に関するノウハウ、店舗の名称などの権利を本部から提供してもらい、それらを活用して店舗運営を行っていきます。

ただし、こうした権利をもらう代わりに、フランチャイズ契約を結ぶ際、本部に加盟金や保証金を支払う必要があります。また、毎月のロイヤリティも発生します。加盟店は、資本的には独立していますが、本社企業の監督のもと経営されているためです。

なお、フランチャイズ店で働く人は本社従業員ではなく、店舗経営者とそのもとで働く従業員・パート・アルバイトで構成されています。

<レギュラーチェーン>

レギュラーチェーンとは、本部が展開するチェーン店のことで、「直営店」とも呼ばれます。レギュラーチェーンという呼び方はあまり浸透しておらず、多くの場合、レギュラーチェーンは「チェーン店」として認識されています。

そのため、チェーンとフランチャイズは別物だと思っている人が多いようですが、フランチャイズは3種類あるチェーンのうちの1つに過ぎないという点に注意が必要です。

レギュラーチェーンは本部が展開している店舗のため、経営や管理を行うのも本部です。また、そこで働くスタッフも本部から派遣されており、店舗運営にも本部の方針が強く反映されます。「本社直営の店舗」という点が、レギュラーチェーンの特徴です。

<ボランタリーチェーン>

チェーンの種類には、フランチャイズチェーンとレギュラーチェーンのほか、「ボランタリーチェーン」という形態もあります。ボランタリーチェーンとは、個々の独立した小売店が同じ目的を持った仲間とともに組織や団体を作り、チェーン店のような仕組みを作るビジネスモデルです。フランチャイズとは違い、ボランタリーチェーンでは加盟店自らが本部を結成します。

ボランタリーチェーンでは、大量一括仕入れや共同設備投資でコスト削減を目指す、互助会のようなビジネスモデルです。加入金や毎月の運営費はかかりますが、フランチャイズのように本部へロイヤリティを支払う必要はありません。

また、フランチャイズでは本部の運営方針に従う必要があるため、独自の商品を扱うことはできませんが、ボランタリーチェーンでは、さまざまな商品を商材として取り扱うことが可能です。

ただし、それぞれの店舗に対する本部の統制力は比較的弱いため、経営リスクが高いというデメリットもあります。

■フランチャイズ店のメリットとデメリット

次に、フランチャイズ店のメリットとデメリットをご紹介します。

<メリット>

1.開業までがスムーズで、経営基盤も比較的早く安定させられる

個人で事業を興す場合、一般的には、開業までやビジネスを軌道に乗せるまでには多くの時間を要するものです。未経験の業界ならハードルが高いですし、資金面の問題もあるでしょう。

しかし、フランチャイズに加盟すれば、本部のサポートを受けながらスムーズに店舗運営を始めることができます。未経験の業界でも参入しやすいですし、比較的早い段階で経営基盤を安定させられる点もメリットです。

また、資金面に関しても、フランチャイズは一般的な起業よりも初期費用を抑えられる傾向にあります。

2.本部の知名度やノウハウを活用できる

知名度の高いフランチャイズに加盟すれば、すでにブランド力(ブランドイメージ)が確立された状態で経営を始められます。知名度の高いフランチャイズは、店の名前や看板を見ただけで、消費者に商品やサービスをイメージしてもらえるという大きなメリットがあるのです。

そのため、開業当初から集客に苦労することなく、高い売上を得ることも不可能ではありません。また、本部がこれまで蓄積してきた経営ノウハウを活用させてもらえるのも利点でしょう。

さらに、本部はブランド力を維持、拡大するために、広報や商品開発などをつねに行っています。本部にこうした業務を任せられるため、加盟店オーナーは自分の仕事や店舗運営に専念できるのです。

<デメリット>

1.ブランド毀損に伴うリスクがある

フランチャイズにはさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。たとえば、他の店舗で不祥事などがあった場合、フランチャイズチェーン全体のブランドイメージが損なわれ、自分の店舗の集客や売上も落ちるなど、悪影響を受けることがあります。

そのため、フランチャイズで起業するなら、個人の責任や力量とは無関係のところで経営上のリスクがあることを頭に入れておかなければなりません。こうした影響を最小限にとどめるには、フランチャイズ本部のブランド力に頼りきるのではなく、普段から顧客との信頼関係を築く、サービスの質を保つなどの努力を続けることが大切です。

2.加盟金やロイヤリティが発生する

フランチャイズビジネスでは、ブランド力やノウハウを提供してもらう代わりに、本部に加盟金や毎月のロイヤリティを支払う必要があります。加盟金はフランチャイズに加盟する際に支払うもので、開業にかかる初期費用の1つです。

一方、ロイヤリティは、「システム利用料」「会員費」とも呼ばれています。ロイヤリティの算出方法は本部によって異なり、毎月一定額を支払うところのほか、「売上の〇%」と決められているところもあります。

ロイヤリティは、フランチャイズにおけるさまざまなメリットを享受するための必要経費ですが、売上が思うように出ていない時には、ロイヤリティの支払いが経営の負担になることもあるでしょう。フランチャイズでの起業を考えるなら、ロイヤリティにはそうしたリスクもあることを心得ておきましょう。

■チェーン店(レギュラーチェーン)のメリットとデメリット

次に、チェーン店のメリットとデメリットを見てみましょう。

<メリット >

1.それぞれの店舗が標準化されている

チェーン店の場合、本部企業によって各店舗のノウハウや商品、従業員への教育、店内レイアウト、応対サービスなど店舗経営に関わる全ての要素が標準化されています。それにより、本部の統制がとれて「ブランド価値の統一」が図れるのです。

顧客がチェーン店に求めるのは、どの店舗に行っても同じ品質の商品、サービスを提供してもらうことです。チェーン店では商品やサービスのクオリティを均一化しやすいため、ゼロから集客戦略を練る必要もありませんし、顧客も安心して店舗を利用できます。

2.本部とのコミュニケーションを取りやすい

チェーン店は本部企業が手掛ける直営店ですので、店舗の責任者が本部とコミュニケーションをとりやすく、情報交換が活発になるというメリットもあります。また、店舗ごとの横のつながりが生まれ、責任者同士で店舗運営に関する有益な情報を共有できれば、質の高いサービスの提供につながります。

一方、企業から見ると、フランチャイズとは違い、チェーン店の収益が全て企業の収益になる点もメリットと言えるでしょう。

<デメリット>

1.経営の自由度が低い

チェーン店は、本部企業が決めた方針のもとで運営されますので、店舗責任者であっても独自に運営の方針を変えることはできません。そのため、地域のニーズに柔軟に対応できない点はデメリットと言えます。

2.個人や事業主が申し込んで始めるのは困難

チェーン店はメリットが多く魅力的な形態の店舗ですが、本部が資金を出して出店しているため、一個人や一事業主が申し込んで運営を始めることは困難です。

一般的には、フランチャイズ契約を結び、フランチャイズ加盟店として事業を運営することになります。

■フランチャイズで起業する時の注意点

ここまで、チェーンの種類やその違い、フランチャイズ店とチェーン店のメリット・デメリットについてお伝えしました。最後に、フランチャイズに加盟して起業する際の注意点を解説します。

支払うロイヤリティと本部のサポートが見合っているのか考える

フランチャイズに加盟する前に、支払うロイヤリティと、本部から提供されるノウハウやサポート、ブランド価値が見合っているかよく確認しましょう。特に、本部のサポートが手薄だったりいいかげんだったりすると、経営を成功させることは難しくなります。どの程度のサポートが受けられるのか、よく調べておきましょう。

一方、ロイヤリティが安すぎるフランチャイズも、気を付けなければなりません。ロイヤリティが安すぎる場合、本部が加盟店を増やしたいだけというケースもあるからです。また、一見ロイヤリティが低く設定されていても、本部から購入する原材料や商品が割高など、悪質なフランチャイズも存在するので注意が必要です。

加盟を考えているフランチャイズについては、口コミなども含めて徹底的に調べておきましょう。

契約条件を入念に確認する

フランチャイズは、契約に基づく本部との商取引に該当します。契約の内容は本部によって異なりますが、さまざまな義務や規定があり、本部と加盟店の双方がそれを遵守する必要があります。

後から「知らなかった」では済まされませんので、トラブルを避けるためにも、契約条件は入念に確認しましょう。特に、ロイヤリティの算出方法、契約期間、途中解約、違約金・損害賠償金などに関する内容はよく理解しておくことが重要です。

■加盟するフランチャイズは慎重に選ぼう

今回は、チェーンの3つの種類やそれぞれの違い、フランチャイズ店とチェーン店のメリット、デメリットなどをお伝えしました。加盟したいチェーンがある場合は、一般的に、フランチャイズチェーンとして参入することになります。

フランチャイズに加盟する際は、デメリットも把握し、複数のフランチャイズをよく比較して選ぶようにしましょう。