上白石といえば、大ヒットアニメ『君の名は。』(2016)の主人公・宮水三葉役や、『トロールズ ミュージック★パワー』(2020)の主人公・ポピー役などの声を演じたほか、数々の番組でナレーションも務め、声の仕事でも活躍しているが、今でも「難しい」と感じているという。

「いまだに『上手になれないな、上手になりたいな』と思いながらやっています。声優さんはしっかり学校で学んできた方々ばかりで、テクニックがすごいですし、そこに生きてきた感性も乗っている。映像や舞台など視覚も使えるものとは全く違う次元にあるので、尊敬してやまないです」

『ぼさにまる』では、キャシー役をお笑い芸人のヒコロヒー、蘭役を声優の種崎敦美(崎はたつさきが正式表記)が担当しており、違うフィールドで活躍している2人から刺激を受けたという。

「すごく不思議な化学反応が起きている気がします。それぞれ違うフィールドから来ているので、いろいろな感性が刺激される感覚があって、私はお二人が録ったあとに録ることが多いのですが、いろいろ引き出していただいているなという実感があります」

声優の仕事から気づくこともあるようで、「俳優業だけやっていたら見えなかったものや知りえなかったことをたくさん学んでいる気がします」と語る。

「技術がすごいんです。こういう声を出せば年齢を感じさせることができるとか、疲れたときの声や何か食べているときの声、心と声が相反しているときの声など、声優さんは全部声だけで表現される。引き出しとしてそれを勉強させていただいていることは今後強みになっていったらいいなと思います」

声の仕事によって表現の幅が広がり、「お芝居にも生きている」と普段の演技にもプラスに。

「特に舞台はいろいろな声を出さないといけないことが多いので、声優のお仕事で学んだ引き出しを開けています」と言い、「声のお仕事でいろいろな役や原稿を読ませていただき、その中で私ってこんな声もあるんだと気づくこともあったので、声のお仕事に私の声を育てていただいたという感覚もあります」とも話した。

これまでに日本アカデミー賞 新人俳優賞やエランドール賞 新人賞など数々の賞を受賞し、今年は舞台『ダディ・ロング・レッグズ』『千と千尋の神隠し』の演技を評価され、読売演劇大賞 最優秀女優賞を史上最年少で受賞。確かな演技力で舞台女優としても存在感を高めている。

現在25歳。映像や舞台、声優など、今後の活躍がますます楽しみだが、年齢とともに役も変わってきていると感じているという。

「20代前半は、まだまだ未熟で頑張らなきゃという役をいただくことが多かったのですが、いただく役もだんだん変化してきていて、よりいろんな面を自分自身も持っていないといけないなという実感が湧いてきているので、どんな役に出会ってもしっかり表現できるように自分を追いつかせていきたいです」

サンリオのキャラクターとの関わりも聞いてみると、「小さいときから大変お世話になっています」と満面の笑みを見せ、「キティちゃんは当たり前に好きでしたし、キキ&ララも、シナモン(シナモロール)、ポムポムプリン、けろけろけろっぴ、ばつ丸くんも好きでしたし、何でも好きでしたね」と次々とキャラクターを挙げていく。

今の推しは「ハンギョドン」で、ハマっているポイントは「異質感。我が道を行っている感じが愛おしいです」とのこと。「『サンリオキャラクター大賞』はいつも楽しみにしています。投票はしたことないんですけど、毎年ハンギョドン何位だろうって気になります」と明かした。

さまざまなサンリオのキャラクターを愛してきた上白石にとって、今回の『ぼさにまる』への参加は本当にうれしかったという。

「サンリオさんの新たなキャラクターに息を吹き込めるのは本当に光栄なことだなと思います。キティちゃんといったらあの声が再生されますし、キャラクターと声はすごく大切な関係性だと思うので、『ぼさにまる』をいろいろなところから愛してもらえるようにしっかり責任をもってやらないといけないと思っています」

そして、最後に『ぼさにまる』での野望を聞くと、「小さいお子さんがシールやぬいぐるみを集めてくれたらうれしいです。すごく愛されるキャラクターになってほしいです」と願いを込めた。

  • (C)2023 SANRIO CO., LTD. ぼさにまる製作委員会

■上白石萌音
1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。2011年のNHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』でドラマデビュー。主な出演作は、映画『舞妓はレディ』(2014)、『君の名は。』(2016 ※声の出演)、『羊と鋼の森』(2018)、2021年度後期連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』、舞台『千と千尋の神隠し』『ダディ・ロング・レッグズ』(2022)、公演中の『ジェーン・エア』など。主演映画『夜明けのすべて』が2024年2月公開予定。エッセイ『いろいろ』や「翻訳書簡『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅」を執筆するほか、歌手としても活動し、23年1月には武道館ワンマンライブも開催した。