お笑いコンビのハライチと、フリーアナウンサーの神田愛花がMCを務めるフジテレビ系お昼の生バラエティ番組『ぽかぽか』(毎週月~金曜11:50~)が、スタートして3カ月が経過した。生放送ならではの何が起こるか分からないワクワク感に加え、MCとレギュラー陣に観覧客も含めたチーム感が醸成され、Twitterでトレンド入りするなど話題になる放送回も増えてきた。

4月から放送時間が1時間短縮され、より凝縮して展開する同番組の総合演出を手がけるのは、お昼の代名詞だった『笑っていいとも!』を担当し、『アウト×デラックス』で個性的すぎる人たちを次々に発掘してきたフジテレビの鈴木善貴氏。これまでの手応えや今後の展望などを聞いた――。

  • (左から)『ぽかぽか』MCの神田愛花、ハライチ・岩井勇気、澤部佑

    (左から)『ぽかぽか』MCの神田愛花、ハライチ・岩井勇気、澤部佑

■“ハライチ岩井が涙を流して笑う”が1つの指標

――スタートから1クール(3カ月)が経過して、手応えはいかがでしょうか?

今のところ僕の周りだけは「面白い」と言ってくれるので良かったと思いつつも(笑)、やっぱり数字的にはまだまだなので、及第点には行ってないと思います。今の時代は「見たら面白い」じゃ勝てないんで、ディレクターたちには「見る前から面白い企画を」ってムチャなこと言ってるんですけど、現場もSNSも荒れるようなコーナーを作っていけたらと思います(笑)

でも、月曜に加藤(智章)、火曜に石川(隼)、水曜に高橋(正尚)、木曜に但木(洋光)、金曜に錫木(亮)という演出がいて、それぞれ特色があって、本当にめちゃくちゃ頑張ってくれてます。番組スタート直前の12月中とかギリギリまで企画1000本ノックじゃないですけど、みんながめげずにいっぱい企画を出してくれて、いいコーナーが生まれてるんで、ディレクターには全員に褒美をあげたいです。

――金曜の「麻雀牌手積みチャレンジ」(※1)は、神がかり的な盛り上がりでした。

あれは皆さんに「面白い」とよく言っていただけるんですけど、岩井(勇気)くんが涙流しながら笑ってるっていうのが1個指標としてありますね。演者がカメラを忘れて笑ってくれたときに「やった!」と思います。松崎しげるさんが歌うコーナー(※2)も、「お母さん大好き党」(※3)も好きなんですが、ディレクターのみんなには1つ「感情移入できるようにしてください」とだけお願いしてます。ハイハイレースで赤ちゃんに頑張ってほしい、麻雀牌で勝ちたい、(レスリングの)登坂(絵莉)さんをひっくり返したいとか、視聴者と演者がどちらも感情移入して見られるコーナーは、やっぱりいいコーナーになってると思うので。

――やはりVTRを流すより、会場での生放送を多めにしようという意識はあるのですか?

ぶっちゃけると予算の問題もあるのですが、横を見ると『ヒルナンデス!』(日本テレビ)がとてもかなわないVTRを作ってますし、そしたら生の現場でハプニングがいっぱい起きて、一瞬も見逃せないくらい面白いと思ってくれたらと思っています。3時間のときは、当初のプランとして1時間ごとに区切って、最初は昼ごはんを食べて集中して見るから生の企画多め。真ん中は主婦が一段落している時間かもだから、気持ち情報もあって、それをフリにして笑いをやる。最後はみんな少しずつ忙しくなるだろうからFNSのご当地番組を流すっていうので考えてたんですよ。

でも難しいですね。視聴率をとりたいのか、TVerを回したいのか、客層も違いますけど、やっぱり生で見てる人に面白いと思ってもらうというのが一番なんで、それに向けて頑張ってます。

■CM中やボソッと出たひと言を大事に

――観覧の応募や、外観覧の人も増えてきています。

最初の1カ月は、中のお客さんに「何回目ですか?」って聞いたら「4回目です」とか「5回目です」って感じで、全然応募ないんだなと思ってましたけど(笑)、だんだんはじめましての方が増えてきてるんで、ありがたいですね。「名古屋から来ました」とか「福岡から来ました」って言われるとグッとテンションが上って、もっと頑張らなきゃと思います。

  • 提供バック中に観覧客と一緒に体操も

外観覧の人たちも、今はテレビに映りたいっていう人が減ってるのかなと思ってたんですけど、来ていただく人を見ると本当にパワーを感じます。すごい強風でOWVのファンたちが大変なことになってゲストのマツコ(・デラックス)さんが心配してくれたときもありましたけど、ああいう人たちが生放送を助けてくれるんですよね。雨の日は本当に申し訳ないと思いますけど、演者の皆さんもありがたがってくれてます。

――CM中はお客さんといろいろコミュニケーションをとっているんですよね。

いつも最初のCM中に、澤部(佑)くんが「この番組は本当に皆さんの力にかかってますよ」と言うと、岩井くんが「そうですよ。盛り上がってなくても、皆さんが笑ってれば盛り上がってるように見えるんですから」と言って、神田さんが長州力さんのものまねをして「頑張りましょう!」と言うのがお決まりであるんです。ヤマケン(山本賢太アナ)の日は、彼がCM中に雄叫びを上げて鼓舞してます。

水曜担当の山本賢太アナ (C)フジテレビ

――ヤマケンさんは、オープニングで気合いを入れるのに、「ラーメン屋の朝礼」をし始めましたよね(笑)

あれもCM中とか裏で生まれたものなんですけど、そういうノリは大事にしようと思ってます。CM中とかYouTube撮影がきっかけで生まれたものは結構ありますね。「お母さん大好き党」も、YouTubeの撮影で岩井くんの「俺はマザコンだから」っていうひと言があって、これで何かできないかっていうので始まりましたから。最近、岩井くんがかわいい男の子が好きだとか言ってるので、木曜班が「箱の中身はなんだろな」で中にイケメンを入れる企画をやりましたけど、本当にハライチと神田さんのCM中だったり、ボソッと言ったひと言は結構大事にしてます。まあ、そっちのせいにもできますから(笑)

――以前、善貴さんの直系の先輩の三宅恵介さんに『ぽかぽか』について聞いたときに、「空気感を大事にしてやってもらいたい」とおっしゃっていたのですが、まさにそれを実践されている印象です。

それは三宅イズム、渡辺琢イズムだと思うんですけど、その場で起こったことはとにかく大事にするというのがありますね。特に生放送はそうあるべきだと思いますし、僕はずっとフロアにいて空気感が分かるので、すごい盛り上がってるところでディレクターが台本通りに進めて早くCMを入れたりすると、「行けるとこまで行っちゃえ」って思いますし。

――善貴さんは本番中ずっと下手の舞台端にいらっしゃいますよね。

親のようなつもりで、僕もハライチと神田さんと一緒に盛り上げるぞという気持ちであそこにいます。カンペ出すのも面倒なので、マイクに入らないと思って「こうしましょう」って直接言っちゃいますし、CM中もお客さんとしゃべったりしてますから。

――レギュラー出演者の休演を「今日は去年から入ってる別のお仕事です」って正直に言ったり、初回放送から「4月から1時間短くなります」と発表したり、人気アイドルの出演時間が終わって「外の観覧が誰もいなくなりました」と伝えたり、一般参加コーナーについて「応募が少ないです」と報告したりと、大人の事情も包み隠さず、全部出していく感じがいいなと思います。

『アウト×デラックス』で、本音で生きることが素晴らしいというポリシーでやってたんで、僕がそういうのが好きだっていうのもありますけど、やっぱり今の時代はそれが当たり前ですからね。