JR東日本は7日、福島県沖地震(2022年3月16日発生)を受けての地震対策について、今後の方向性を発表した。地震発生から約1年間、同社としても地震発生時の状況を分析しつつ、今後の地震対策について検討を進めてきたという。

  • 福島県沖地震に関する今後の地震対策の一環で、地震対策左右動ダンパの導入も検討。現在、「ALFA-X」に搭載して検証を行っているという(写真は2019年5月の報道公開にて撮影)

JR東日本は東日本大震災をはじめ、過去の地震被害を教訓に、利用者と列車を地震から守る大規模地震対策として、「構造物が壊れないようにする」(耐震補強対策)、「走行中の列車を早く止める」(列車緊急停止対策)、「脱線後の被害を最小限にする」(列車の線路からの逸脱防止対策)の3つを柱に、各種対策に取り組んでいる。

昨年3月に発生した福島県沖地震では、東北新幹線の福島~白石蔵王間を走行中だった下り「やまびこ223号」が脱線したほか、コンクリート製電柱が損傷・傾斜し、一部のラーメン橋台柱が損傷するなどの被害が確認された。地震発生時、列車緊急停止対策である「早期地震検知システム」(沿線の地震情報をもとに停電させ、非常ブレーキの動作により新幹線を停止させるシステム)は正常に動作し、主要動(S波)が線路に到達する前に新幹線が停車したが、「やまびこ223号」は停止後すぐ地震の強い揺れに見舞われ、全68軸中60軸が脱線したという。

当初、「脱線した60軸のうち50軸が、L型車両ガイド等がレールにかかる状態」と発表したが、その後の調査で50軸ではなく48軸だったと判明。「多くのL型車両ガイド等がレールにかかる状態であったものの、地震による左右の大きな揺れにより、レールを乗り越えたものが12軸あったことになります」とJR東日本は説明する。

  • 福島県沖地震で列車の脱線も発生した(写真はイメージ)

列車の線路からの逸脱防止対策に関して、地震による脱線を完全に防ぐことは困難だが、大きく逸脱することを防ぐため、一部箇所で逸脱防止効果を大きくするための改良を行うとともに、地震対策左右動ダンパの導入も検討するとのこと。地震対策左右動ダンパは車体の横揺れをやわらげる効果が期待でき、現在、新幹線試験車両「ALFA-X」に搭載して検証を行っている。その他、レール転倒防止装置も引き続き整備を進めると同社。列車緊急停止対策については、これまでに蓄積された地震情報に加え、福島県沖地震の知見も用い、引き続き早期検知手法について改良を継続していく。

耐震補強対策に関して、損傷したラーメン橋台柱は補強計画中だったことに加え、特徴的な構造形式・荷重条件を有する橋台は柱損傷時に桁の沈下・傾斜の可能性があると判明。同様の特徴を持つラーメン橋台に対し、今後さらに前倒しして補強を進めるという。一方、耐震補強を実施した高架橋柱・橋脚に損傷はなかった。

コンクリート製電柱も、高じん性補強を施工した箇所や鋼管柱に建て替えた箇所において、損傷や車体に支障するほど大きく傾斜したところはなく、耐震性能が発揮されたとJR東日本は説明。電柱の耐震補強として、高じん性補強の施工と鋼管柱建替えを引き続き進め、高い整備効果が得られる箇所(地震の影響を受けやすい区間、運行頻度の高い区間など)を優先的に対策箇所に選定する予定としている。高架橋・電柱等の耐震補強について、全体計画の詳細が決まり次第、改めて発表する。