• 朝日ソノラマ「ヒットソング8」レコードジャケット(著者私物)

「人気特撮ヒーローのシリーズ化」作品では、1972年の変身ブームのトップを突っ走った大ヒット作『仮面ライダー』(毎日放送/東映)の後を受け、仮面ライダー1号2号と同じ世界観の中に登場した3号ライダーが活躍する『仮面ライダーV3』(2月放送開始)がその代表格となった。『V3』は作品タイトルこそ変わったが、作り手側は『仮面ライダー』とほぼ同じ布陣。前作の勢いをそのまま活かしつつ、さらなる面白い要素を盛り込もうと意欲を燃やした作品となった。

  • 『キカイダー01』レコードジャケット(著者私物)

東映が『仮面ライダー』に続くヒット作を目指し、NETと組んで制作した特撮ロボットアクション作、それが『人造人間キカイダー』(1972年7月開始)だった。赤と青に分割されたカラフルなヒーロー像、原作者・石ノ森章太郎氏の持ち味がぞんぶんに活かされた「哀愁の人造人間」という秀逸な設定、まさに痛快としかいいようのないキカイダーとダーク破壊部隊との激戦、年長のファンをときめかせたジローとミツ子の淡い恋愛描写といった数々の見どころで、TBS『8時だヨ!全員集合』に対して善戦を見せた。

『キカイダー』の好評を受ける形で、1973年からは新シリーズ『キカイダー01』(5月開始)に突入。キカイダー/ジローの兄・ゼロワン/イチローが登場し、『キカイダー』終盤を盛り上げた人気キャラクター・ハカイダーが率いる「ハカイダー部隊」を相手にパワフルな戦いを見せる。前半ではゼロワンを助けにキカイダー/ジローもレギュラーとして活躍し、後半ではデビューして間もない志穂美悦子が演じるスーパーヒロイン・ビジンダー/マリが注目を集めた。

1973年「変身ブーム」の勢いに乗り、東映は新たに2タイプの特撮ヒーロー(いずれも石ノ森章太郎・原作)を生み出した。それがフジテレビ『ロボット刑事』(4月開始)とNET『イナズマン』(10月開始)である。まず『ロボット刑事』は変身ヒーロー全盛時にあって「変身しないヒーロー」となった異色作。警視庁特別科学捜査室に配属された「K」は、人間と同じ感情や思考を備えた高性能ロボット。犯罪捜査にその能力を発揮する一方で、ひそかに「詩」を書く趣味を持つといった人間くさい一面をのぞかせる。叩きあげのベテラン刑事・芝や血気盛んな若手刑事・新條とチームを組み、悪党に完全犯罪をセールスするバドーの犯罪ロボットに挑んでいくというのが基本的なストーリー。ふだん黄色いKの目が赤くなったときが戦闘の合図で、トレードマークのハンチングとブレザーを脱ぎ、戦闘スタイルになるKのアクションが印象的だった。

  • 『イナズマン』レコードジャケット(著者私物)

『イナズマン』は超能力をテーマに、悪の超能力者=新人類帝国の帝王バンバから人々を守る、正義のミュータント・渡五郎の活躍を描く作品。『仮面ライダー』の流れを受け継ぎながら、本作では特撮ビジュアルの見せ場を強化。五郎がまずサナギマンとなってエネルギーを蓄え、ベルトのゲージが頂点に達したときイナズマンになるという「変転」プロセスや、マフラーを巨大なチェーンに変えて、崩れゆくビルを元に戻すという大胆なミニチュア特撮が目をひいた。『仮面ライダー』の亜流になることをよしとしない制作陣は、中盤からどんどん作風をシリアス方向に修正。「仮面ライダーではない、イナズマン独自のヒーロー性とは何か」をとことん追求した結果、特撮テレビドラマ史でも屈指といえるハードなエピソードが続出する『イナズマンF(フラッシュ)』(1974年4月開始)へ発展していった。

  • 『風雲ライオン丸/白獅子仮面/キカイダー01/ファイヤーマン』レコードジャケット(著者私物)

ピープロはフジテレビと組み、等身大変身ヒーロー時代劇『快傑ライオン丸』(1972年4月~1973年4月)をヒットさせた。硬質な仮面のヒーローではなく、ライオンの顔をした剣士が天馬にまたがって走るファンタジックなビジュアルと、大魔王ゴースンを攻略するために獅子丸、沙織、小助の孤児3人がさまざまな困難に立ち向かうドラマ性、そしてタイガージョー/虎錠之介という特撮ヒーロー界屈指の傑作ライバルキャラクターなどの魅力が重なり合い、「変身ブーム」を代表する作品のひとつになった。

この『快傑ライオン丸』も1973年4月14日より『風雲ライオン丸』に衣替えを行った。『風雲』では時代劇に「西部劇」のカッコよさを加えようと、ポンチョや幌馬車といったウエスタンな要素が髄所に入れ込まれた。『快傑』で獅子丸を演じて人気を博した若手俳優・潮哲也が、引き続き『風雲』でも兄の復讐のためロケット変身を行う若者「弾獅子丸」役で主演を果たし、前作よりも大人っぽい孤高のヒーロー感を打ち出して、新たな魅力をふりまいた。

しかし戦闘的イメージを高めるべく「兜」を被った風雲ライオン丸は、快傑ライオン丸のトレードマークだった「ライオンのたてがみ」を隠す形となり、子どもたちの反応が今一つよくなかったという。一計を案じたスタッフは兜を割る怪人ザクロを登場させ、兜を捨てたライオン丸がたてがみを見せるエピソードを作った(後半ではふたたび兜に戻っている)。

『風雲』では『快傑』と同じかそれ以上に、獅子丸と彼をとりまく人たちのシリアスなドラマ性を追求し、見ごたえのある力作エピソードが続出。本作の質の高さは、放送当時よりもむしろ80・90年代に発売されたビデオソフトやレーザーディスクを観たファンによる再評価が行われたことで、広く知られている。

1973年春の「変身ブーム」期には、『レインボーマン』(1972年から放送:NET/東宝)や『ジャンボーグA』(毎日放送/円谷プロ)、『ファイヤーマン』(日本テレビ/円谷プロ)、日本テレビ朝のバラエティ番組『おはよう!こどもショー』内の1コーナー『行け!ゴッドマン』(東宝企画)などもあり、秋からは『イナズマン』と共に『ダイヤモンド・アイ』(NET/東宝)、『鉄人タイガーセブン』(フジテレビ/ピープロ)といった特撮ヒーロー作品が放送されることになる。数多くの変身ヒーローたちが人々を守って悪と戦った、激動の時代に思いを馳せたい。