「あらわす」という言葉は「表す」「現す」「顕す」「著す」の4つの漢字表記が存在しますが、どれを使ったらいいか悩んだことがある方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は「表す」「現す」「顕す」「著す」の意味や使い分け方をご紹介。また、それぞれの言葉を使った例文や英語表現についてもくわしく解説します。

「表す」「現す」「顕す」「著す」の違い

  • 「表す」「現す」「顕す」「著す」の違い

「表す」「現す」「顕す」「著す」の4つは、それぞれ異なる意味を持ちます。まずはその違いからみていきましょう。

「表す」の意味

「表す」には、思いや考えを言葉や表情などで表に出す、表現するという意味があります。

例えば「あの笑顔が彼の嬉しさよくあらわしている」「この美しい風景を言葉であらわすことはできない」には「表す」という漢字が使えます。

そのほか、何か特定の意味を伝える場合にも「表す」を使うことが可能です。例えば、「夢占いで迷子があらわすのは、人生に悩んでいるという意味だ」などがわかりやすいでしょう。

「現す」の意味

「現す」には、それまで見えなかったものを見えるように外に出し、実態をはっきり示すという意味があります。

例えば「とうとう敵が正体をあらわした」「駅前に姿をあらわしたのはA君だった」には「現す」という漢字を使います。見えなかったものが出現した、と考えるとわかりやすいでしょう。

「顕す」の意味

「顕す」には、善い行いや優れた業績などを、世間の人々に対してはっきりわかるよう示し、知らせるという意味があります。「生前の功績を顕すモニュメントが建てられた」のような使い方をしますが、日常会話ではあまり使わない表現です。

「著す」の意味

「著す」には、本に書いて出す、出版するという意味があります。それ以外で使われることは基本的にありません。

「自身の体験もとにしたノンフィクションをあらわす」などに「著す」という漢字を使うと覚えておきましょう。

「表す」「現す」「顕す」「著す」の使い方・例文

  • 「表す」「現す」「顕す」「著す」の使い方・例文

「表す」「現す」「顕す」「著す」、それぞれの正しい使い方も確認しておくと、より理解が深まります。ここでは、例文とともに紹介しましょう。

「表す」の使い方・例文

まず、「表す」の正しい使い方・例文から紹介します。

1.先輩への感謝の気持ちを、歌やイラストで表すことに決めた。

「〇〇の気持ちを△△であらわす」は、日常でも頻繁に用いる表現ではないでしょうか。

この場合、先輩への感謝の思いを表現するという意味なので「表す」を使います。「先輩への感謝の気持ちを、歌やイラストで表現することに決めた」と言い換えても問題ありません。

2.部長の女性への態度には、昔ながらの価値観が表れているように感じる。

価値観とは、その人の考え方や感じ方のことです。この例文の場合、部長の女性に対する態度には昔ながらの考え方や感じ方が出ているという意味になるので、この場合の漢字も「表す」になります。

3.花言葉でコスモスが表す意味は「調和」や「純潔」です。

何か特定の意味を伝える場合も「表す」を使うため、この例文の漢字にも「表す」を使います。「花言葉でコスモスが伝える特定の意味は、調和や純潔です」と言い換えることも可能です。

「現す」の使い方・例文

次に「現す」の正しい使い方・例文を紹介します。

1.その事件の黒幕がついに正体を現した。

「正体をあらわす」も、よく使われる表現です。この場合、それまで見えなかった黒幕が実態を明らかにしたという意味のため「現す」という漢字を使います。

2.待ち合わせの場所に姿を現したのは、彼ではなく彼の部下だった。

「姿をあらわす」も「正体をあらわす」同様、非常によく用いられる言い回しです。

こちらも、今まで姿が見えなかった人が登場するという意味合いなので「現す」という漢字を使います。

「顕す」の使い方・例文

3つ目に「顕す」の正しい使い方・例文を紹介します。

・校庭にある記念碑は創立者の功績を顕すものとして建てられた

「顕す」は、人々に広く業績や善行を示す、知らせるという意味。この場合、創立者の功績を示すという文章なので「顕す」を使います。

「著す」の使い方・例文

最後に、「著す」を使う例文を紹介します。

・彼女はキャリア初となるミステリー小説を著した。

「著す」は、出版する、執筆するという意味です。この例文では、小説を出すことを意味しているので、「著す」を使います。

「表す」「現す」「顕す」「著す」の使い分け方は? ポイントを解説

  • 「表す」「現す」「顕す」「著す」の使い分け方は? ポイントを解説!

「表す」「現す」「顕す」「著す」の中でも「顕す」や「著す」は特定の場面でしか使われないため覚えやすいでしょう。

しかし、それに比べて「表す」と「現す」は使用される場面が多いので、少し混乱するかもしれません。悩む場合は、以下のように覚えるのがおすすめです。

・「表現」と置き換えて不自然ではないものを「表す」

・「出現」と置き換えて不自然ではないものを「現す」

もちろん、これに当てはまらないケースもありますが、一つの判断基準として使ってもいいのではないでしょうか。

「表す」「現す」「顕す」「著す」を英語で表現すると?

  • 「表す」「現す」「顕す」「著す」の英語で表現すると?

最後に「表す」「現す」「顕す」「著す」それぞれの英語表現についても確認しておきましょう。

「表す」の英語表現

「表す」は、英語では「show」や「express」「signify」などで表現します。

【例文】

・This painting shows his anger.(この絵には彼の怒りが表れている)

・If you agree with this opinion, please express it with applause.(この意見に賛成の人は拍手で表してください)

「現す」の英語表現

「現す」は、出る・出現するという意味の「appear」などを使います。ただし、文脈によっては別の単語を使うこともあるので、英語での決まった言い回しがないか、その都度確認した方がいいでしょう。

「顕す」の英語表現

「顕す」は、例えば「この記念碑は彼の功績を顕して建てられた。」という文の場合、功績などを称えるという意味の「in recognition of」に置き換えて「The monument was built in recognition of his achievements.」のような言い方ができます。

「著す」の英語表現

「著す」は、「書く」という意味の「write」もしくは「出版する」という意味の「publish」と置き換えることができます。

【例文】

・He has written a mystery novel.(彼はミステリー小説を著した)

「表す」「現す」「顕す」「著す」の違いを理解しよう

今回は、「表す」「現す」「顕す」「著す」の意味の違いや使い分けのポイントについて紹介しました。

ビジネスシーンでどの「あらわす」を使えばいいか迷ったときは今回紹介した意味や正しい使い方、見分ける判断基準などを思い出してみてください。

また、この他にも漢字には使い分けの難しいものが多くあります。「この条件のときはこの漢字を使う」という知識を身につけておくと、いざというとき役に立つでしょう。ぜひ、これを機にさまざまな言葉の意味や使い方を調べてみてはいかがでしょうか。