第46回日本アカデミー賞の授賞式が10日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて行われ、受賞者たちが登場した。
優秀助演男優賞を受賞した有村架純、安藤サクラ、尾野真千子、清野菜名、永野芽郁、松本穂香の中から最優秀助演男優賞に輝いたのは『ある男』の安藤。『万引き家族』から4年ぶりの映画出演だったという安藤は「緊張してましたし、苦しかったです。くよくよ、くよくよしてました。現場が大好きなので、そんなにくよくよしないように気をつけて、楽しいが勝っちゃうんですけど、もうずっとくよくよしてまして。でも途中からやっぱり現場が好きだなって改めて思って、変わっていきましたけど、ただ、この現場がなかったらずっとくよくよしたまま、作品に関われないままの時間を過ごしたかもしれない」と振り返る。
そんな安藤について、共演した窪田は「山梨の方で撮影してたんですけど、1日だけ休みの日に『子供に会いに行く!』と言って特急列車に飛び乗って行っちゃったんです」と行動力に驚き。安藤は「悲しい役だったし、宿もコロナ禍で休業中の宿に従業員の方も他の客もいらっしゃらなくて、真っ暗な旅館に1人で、どんどん寂しくなってきちゃって、駅前のコンビニに行って気がついたら電車に乗って帰って、家族で鍋食べて、ほっこりした気持ちで戻ってというのをやりました。追い込んでなんかやるタイプじゃないんだな、できなかったです」と説明する。
さらに妻夫木は「ある日『私ね、やっぱり女優に向いてないと思う。この作品で女優引退しようと思っています』といきなり言い出して、これが引退作になってしまうのか、重大な現場に居合わせてしまったんだなと思って、サクラちゃんに恥じない作品にするべく頑張ってたんですけど、撮影が終わってある日(夫の柄本)佑くんと会って『サクラちゃん、最近何やってんの?』と聞いたら、『映画の撮影してますよ』と。『おいおいおいおい! なんだったんだあれは!』と思って、ちょっとびっくりしましたね」と明かす。安藤は「くよくよのピークに達して、私はやっぱり子育てと映画の撮影が両立できないと感じてて」と当時の心境を吐露。「その前もけっこう長く休んでたんですけど、途中からくよくよよりも『現場が好き』ということに気づいて」と告白し、妻夫木は「気づいたら言ってよ! 俺、最後まで引退するんだと思ってたよ!」とつっこんでいた。
最優秀主演女優賞に輝いたことが発表されると、安藤は「ああ、泣いちゃう」と涙を堪えながら、「やめようかと思ってたことが、こんな形でバラされると思ってなくて、なんか自分が情けなくて。カッコ悪いなと思って壇上にいたので、それでこうやって受賞させていただいた混乱で涙が出てしまいました」と語る。
安藤は改めて「この現場の最中にやっぱり現場がすごく好きなんだと、それは自分ができるできないとか関係なく、それをも超えて撮影の皆さんの中にいるということが何よりも好きなんだとはっきりと思えて、自分ができなくて監督におしつぶされそうになってくよくよしても死ぬわけじゃないし、何よりも撮影の現場にいるというのが好きというのは、そんなもの他に見つけられないと、この現場中にはっきりと思えたので、今はまた現場に向かうことができています」と熱い言葉。「私にとっては、子育てと撮影は今のところうまくできない。それはもうたぶん撮影のシステム的なこともあるんだと思います。それはどうしたらいいのかわからないので、悩みつつ、都度家族で会議しながらみんなで協力しあって、また頑張れたらいいな、大好きな現場に戻れたらいいなと思ってます」という意気込みに、会場からは大きな拍手が送られた。
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