第71期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、二次予選の久保利明九段-糸谷哲郎八段戦が2月16日(木)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、110手で勝利した久保九段が次回戦進出を決めました。

ゴキゲン中飛車の力戦形

振り駒が行われた本局は、後手となった久保九段がゴキゲン中飛車に構えて幕を開けました。これに対し先手の糸谷八段はいわゆる超速▲3七銀戦法の構えを目指しますが、右銀の活用に先んじて玉の囲いを急いだのが細かな工夫。糸谷八段の指し手からは、最新の研究勝負から距離を置いて得意の力戦に持ち込む狙いが見て取れます。

糸谷八段の作戦を見た後手の久保九段は、先手の右銀が安定する前にさっそく中央の歩を交換して主張点を作りました。2筋で角交換が行われたところで局面は一段落を迎え、ここから第二次駒組みが始まります。数手のやりとりののち、糸谷八段は後手の桂頭を狙う歩突きで再び局面を動かしにかかりました。

久保九段の勝負手二発

桂頭攻めを見せられた久保九段は、先手の歩の前に自らの桂を跳ね出す意表のさばきを繰り出しました。この歩をおびき出しておいてから自陣角を放つことで手順に先手の飛車をいじめる狙いですが、これに対して先手の糸谷八段も用意の角切りで応じて懸案の飛車を敵陣に成り込むことに成功しました。

形勢は互角で、局面の焦点は糸谷八段のと金作りが間に合うかどうかに絞られています。攻めを急かされた後手の久保九段は、5筋に上がった先手の銀をすぐに自らの飛車と刺し違える切り札を切りました。久保九段としては駒損ながら、手順に先手陣の急所にと金を作って十分指せると見ています。

久保九段が押し切って勝利

手番を握った糸谷八段は、久保九段の攻めをいなしつつ反撃の機会をうかがいます。豊富な持ち駒を生かして後手の守りの金に絡んだのは「寄せは俗手で」の格言通りの攻めで、久保九段の美濃囲いも安泰とはいえません。局面は攻め合いの様相を呈したまま形勢不明の終盤戦に突入しました。

激しい攻め合いが20手ほど続いたのち、一歩先に抜け出したのは後手の久保九段のほうでした。糸谷八段が金を取って攻めてきたのに構わず敵陣のと金を寄って金取りをかけたのが読みの入った好手。追いすがる糸谷八段に対して最後は詰めろ逃れの詰めろの角打ちで一手勝ちを読み切りました。終局時刻は19時13分、自玉の詰みを認めた糸谷八段が投了を告げて久保九段の勝ちが決まりました。

勝った久保九段は次戦、本戦トーナメント入りを懸けて谷川浩司十七世名人-徳田拳士四段戦の勝者と顔を合わせます。

  • 久保九段は糸谷八段との通算成績を5勝6敗とした

    久保九段は糸谷八段との通算成績を5勝6敗とした

水留 啓(将棋情報局)