野球世界一決定戦『2023 WORLD BASEBALL CLASSIC』(以下WBC)でテレビ朝日中継の解説を務める古田敦也が、このたび大会の見どころを語った。

  • 古田敦也=テレビ朝日提供

6年ぶりに開催される野球世界一決定戦・WBCは3月に開幕。テレビ朝日系列、TBS系列で生中継される。過去4回の日本の成績はイチローや松坂大輔らを擁した2006年、2009年に優勝、2013年、2017年はベスト4に留まった侍ジャパン。今回は新風を巻き起こすべく、前北海道日本ハムファイターズ監督の栗山英樹氏が新監督に就任し、大きな話題に。代表メンバーはダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)、大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)を筆頭に、メジャー・日本プロ野球界の垣根を超え、過去最強の布陣が集結。世界一奪還に向け大いに期待が膨らむ顔ぶれがそろう。

そんな日本代表メンバーに、「史上最強と言っていいと思います」と太鼓判を押す古田。今季中にメジャー100勝を達成することが確実視されているダルビッシュ有、「優勝だけを目指す」と力強い決意を語った大谷翔平、昨年、日本プロ野球史上28年ぶりの完全試合達成をはたした佐々木朗希(千葉ロッテマリーンズ)ら盤石の投手陣、さらに令和初&史上最年少の三冠王に輝いた“村神様”こと村上宗隆(東京ヤクルトスワローズ)、メジャー挑戦2年目となる鈴木誠也(シカゴ・カブス)ら強力野手陣で挑む侍ジャパンだが、連覇を狙うアメリカ、第3回大会優勝のドミニカ共和国ほか、ライバル国にも最強メンバーが集う。古田はその背景を、「大谷選手の同僚で、MVPも多く獲得している超一流選手、マイク・トラウト(ロサンゼルス・エンゼルス)がWBCへの参加を呼び掛けたことも大きい」と分析。トラウトの訴えによって、「春先のまだ体が仕上がっていない段階で、無理をするとケガの恐れがある。メジャーの球団側が各国の代表に選手をあまり派遣したがらない」(古田)という慣習を打ち破ることに。結果、メジャーの一流選手が各球団と交渉し、母国の代表へ合流する流れが出来上がった。特にはアメリカは「良い選手がたくさん集まっているんで……。いったい彼らのもらっている年俸を合わせると、総額がいくらになるのか」と古田も思わず苦笑い。

そのほかの注目選手として古田はラーズ・ヌートバー(セントルイス・カージナルス)を挙げる。アメリカ・カリフォルニア州で生まれ、日本人の母を持つヌートバー。21年にメジャーデビュー以降は「肩も強いし、体も大きい。それでいて、走っても速い」(古田)と攻守ともにバランスの取れたマルチプレーヤーとして活躍している。さらに「投手陣が失点を少なくして、ロースコアのゲームでも勝てるチーム作りをされている」と、栗山監督の選手選考を語る古田。実は古田がヤクルトスワローズ(当時)に入団した1990年当時、古田の教育係が栗山監督だったという縁が。「僕が新人で入って来たときのキャンプ中1カ月間は、同じ部屋で2人一緒に生活していました。プロの厳しさや生き方を初めてのキャンプでいろいろと優しくお話ししてくださり、教えてくださった方です」と語り、人柄をだ「固定観念にとらわれず、時代に即し、柔軟に対応」と説明。「野球観を押し付けるというより、選手側の意見を聞く耳もお持ちだと思います。今の時代に即したリーダー像と言えるのでないでしょうか」と信頼を寄せた。

テレビ朝日系でも中継する侍ジャパンシリーズや強化試合については「日の丸を背負った若い選手の躍動を、ぜひ観ていただきたい」と語り、「中継で、全力で解説、応援したいと思っています」と意気込んだ。古田に加えてテレビ朝日WBC解説を務めるのが松坂大輔。さらには、五十嵐亮太がWBCリポーターに決定するなど、解説陣も盤石のメンバーに。「トップ・オブ・トップの真剣勝負に、絶対に熱くなる」と古田も胸を躍らせる熱闘に注目だ。

■テレビ朝日WBC解説 古田敦也 コメント

―今回のWBCは各国が本気で挑んでいると言われていますがその要因は?

野球というのは、やはりアメリカのメジャーリーグが最高峰と言われていて、年間50億円以上の高額契約を球団と結んでいる選手もいます。WBCが開催される春先のこの時期は、まだ体が仕上がっていない段階で、無理をするとケガの恐れがあるなどの理由もあり、メジャーの球団側が各国の代表にあまり選手を派遣したがらないんです。それで選手も辞退して、トッププレーヤーがWBCに出場しないことが多かったのですが、今回は、大谷選手の同僚で、MVPを3度も獲得している超一流選手、マイク・トラウト(ロサンゼルス・エンゼルス)がWBCへの参加を呼び掛けたことも大きいんです。アメリカが野球で負けていてはだめだという強い思いに賛同するトップ選手が続出。球団側とも交渉し、出場への道が開けたんです。日本代表に関しても、今回はメジャーリーガーが5人選出されていますが、各球団と交渉して成立したわけです。そういった意味でも、今回はこれまでよりもレベルの高い大会になることは間違いないと思います。

――出場する選手の顔ぶれを見て、これまでの大会とは明らかに違う?

これまでにも、何人かはメジャーでもトップとされる選手の出場はありましたが、特にアメリカの野手陣に関しては、今回は余っているほどですから。余っているというのは、誰がレギュラーで出るのか見当もつかない。外野手だけでもトラウトもそうですが、ムーキー・ベッツ(ロサンゼルス・ドジャース)、カイル・タッカー(ヒューストン・アストロズ)といったスーパースターがそろっているんです。良い選手がたくさん集まっているので……。いったい彼らのもらっている年俸を合わせると、総額がいくらになるのか(笑)。すごいと思います。

――アメリカだけではなく、中南米の国なども豪華メンバーに?

まだ決まり切っていないのでわかりませんが、ドミニカ共和国などは、メジャーのトップをほとんど集めている。ドミニカは特にピッチャーが、良い選手がそろっているんですよ。

――それに対して、日本代表のメンバー選考はいかがでしょうか?

史上最強と言っていいと思います。平均年齢も若く、日本で活躍する村上が4番を打つんじゃないかと言われていますが、彼の前後を打つのが大谷翔平、鈴木誠也、日系人で初めて選出されたラーズ・ヌートバー(セントルイス・カージナルス)らメジャーリーガーたちだと思うんです。特にヌートバーは母親が日本人で、ニュース番組でも特集されたりとあまり野球に興味のない方にも広く知られてきましたね。彼のキャラクターやプレーに、より興味が注がれていくのではないでしょうか。肩も強いし、体も大きい。それでいて、走っても速いです。

――改めて、選出された30名を見て、栗山監督はどんな野球を目指していますか?

30名中、15名がピッチャーなんですね。日本の野球は、守り切ることとよく言われますが、基本的には投手陣が失点を少なくして、ロースコアのゲームでも勝てるチーム作りをされていると感じます。WBCは相手チームのピッチャーの情報も少なく、しかも短期決戦で、なかなか点が取れない痺れる展開が多い。しかし、今回はホームランを打てる選手も多数選出されています。村上だけではなく、メジャー勢、岡本和真(読売ジャイアンツ)など、長距離砲の選手がいますから。長打を期待できる選手を入れていることで、打線に厚みが増しています。守備力に加えて、得点力もあるチームだと思います。

――注目される選手は?

やはり、大谷には注目しています。いったい彼が何番を打つのか。3番か4番なのか……となるのですが、今回は他にも長打を期待できる選手がそろっていますから1番とか2番でも使えるのではという話もあります。村上、鈴木誠也、岡本もいますし、大谷は長打力に加えて足も速いですから。劣勢になっても跳ね返すくらいの得点力という意味では非常に期待値が高いですよね。

――栗山監督の人となりを教えてください。

野球選手らしからぬ方と言いますか……。キャンプでは、新人と、教育係としてある程度の経験のある選手が同部屋になるのですが、僕が新人で入って来たとき、キャンプ時の1カ月間は、同じ部屋で2人一緒に生活していました。もちろん先輩後輩だから、厳しい方だと雑用をやらされたりもするんですが(笑)、栗山さんはそういったことは一切なかったですね。プロの厳しさや生き方を初めてのキャンプでいろいろと優しくお話ししてくださり、教えてくださいました。一番最初にお世話になった方ですので、今でも非常に恩を感じています。ボールに食らいついて、一生懸命走って、という栗山監督が選手だった時代の自分のプレースタイルをチームに反映するというよりは、北海道日本ハムファイターズで10年監督をされたなかで培った、点の取り方、勝ち方のノウハウを持っているでしょうし、その経験から今回のメンバー選出もされたのではないかと思っています。

――栗山監督の監督としての特徴は?

固定観念にとらわれず、時代に即し、柔軟に対応しています。当時18歳の大谷ら話題性のある選手が入って来て、彼らをどうやって育てていくのかに注目が集まる中で、しっかり結果を出させてメジャーへ巣立たせたわけですから。局面、局面で結果を残されている監督なのは間違いなく、野球観を押し付けるというより、選手側の意見を聞く耳もお持ちだと思います。電話をしたり、手紙を書いたり、丁寧な選手へのケアを含め、今の時代に即したリーダー像と言えるのでないでしょうか。

――1次ラウンドですが、世の中は「突破は当たり前」という雰囲気です。

勝ち上がると思いますよ。キーになる国はやはり韓国。トップランクの選手のレベルで言えば、そこまで日本有利とも言えないと思います。調子の良いピッチャーをどこでぶつけるのかなどの、日本戦への戦略も練ってきますから、心してかからないといけません。 「アメリカをやっつけに行く」と栗山監督はおっしゃっていますが、もちろん、アメリカ、ドミニカ共和国が抜けているとはいえ、今回はレベルが高い。プエルトリコ、ベネズエラなど、注意が必要な国はたくさんあります。それと、ボールも普段慣れ親しんでいるものとは異なります。大きさや重さはほぼ一緒なのですが、少し滑りやすいんです。日本のボールは質が良くて、気候的に湿気もあるので指になじむ。決勝ラウンドのアメリカは乾燥していますので、日本よりはなじみにくい。ピッチャーに関しては、細やかなケアをし、早く慣れないといけないという課題もあります。

――キャンプのニュースなどがこれから多くなると思いますが、どのようなところに注目すればいいでしょうか?

例えば、ダルビッシュが宮崎キャンプから参加すると、スポーツニュースだけではなく、ワイドショーなどでも取り上げられる機会が増えると思います。目にすることが多くなるといやが上にも期待値は上がっていく。2月20日が過ぎると侍ジャパンシリーズや強化試合も始まりますので、さらに注目です。我々も中継で、全力で解説、応援したいと思っています。日の丸を背負った若い選手の躍動を、ぜひ観ていただきたいですね。 トップ・オブ・トップの真剣勝負に、絶対に熱くなると思いますよ。

■侍ジャパンシリーズ

  • 25日(13:30~)日本代表 vs 福岡ソフトバンクホークス(テレビ朝日系)
  • 26日(14:00~)日本代表 vs 福岡ソフトバンクホークス(TBS系)
  • 3月3日(18:50~)日本代表 vs 中日ドラゴンズ(テレビ朝日系※一部地域を除く)

■ワールドベースボールクラシック強化試合

  • 3月6日(18:00~)日本代表 vs 阪神タイガース(テレビ朝日系※一部地域を除く)

■2023 ワールドベースボールクラシック

  • 3月9日(18:00~)日本代表 vs 中国代表(TBS系)
  • 3月10日(18:00~)日本代表 vs 韓国代表(TBS系)
  • 3月11日(18:30~)日本代表 vs チェコ代表(テレビ朝日系)
  • 3月12日(18:34~)日本代表 vs オーストラリア代表(テレビ朝日系)
  • 3月16日(18:30~)準々決勝 日本戦(テレビ朝日系※一部地域を除く)
  • 3月21日準決勝(TBS系)
  • 3月22日(7:55~)決勝(テレビ朝日系)