公開20周年となる東宝配給の映画『ゴジラ×メカゴジラ』&『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムハムージャ!幻のプリンセス』(2002年)の「2本立て復活上映会」が2022年12月10日に池袋・新文芸坐にて行われた。上映後には『ゴジラ×メカゴジラ』の手塚昌明監督と「とっとこハム太郎」プロデューサー・沢辺伸政氏、そしてハム太郎役・間宮くるみを迎えたトークショーを実施。劇場にかけつけたゴジラファン、ハム太郎ファンを喜ばせた。
今回は、前年となる2021年暮れに開催された『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』&『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』(2001年)に続く「2本立て復活上映会」の第2弾。巨大なゴジラと極小のハム太郎とのコラボレーションも2作目ということでよりスムーズに企画が進み、いっそうファミリー層が楽しめるプログラムを意識した2本立てとなっている。ゴジラのほうは歴代シリーズ屈指のライバルキャラクター「メカゴジラ」が装いも新たに「3式機龍」としてリニューアルを果たし、劇場版第2作のハム太郎は当時絶大な人気を誇ったアイドルグループ「モーニング娘。」内ユニット「ミニモニ。」をゲストに迎え、それぞれ抜群の話題性を持たせている。
司会進行を務める特撮ライター・円山剛士氏がスタンバイし、トークショーがいよいよ始まるタイミングで、会場内に馴染みのある「声」が聞こえてきた。それは『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムハムージャ!幻のプリンセス』の主役・ハム太郎の声だった。「へけっ!ぼくハム太郎なのだ!」といった彼の名調子は健在で、客席のファンたちをたちまち20年前にタイムスリップさせたかのようだった。やがてハム太郎は「今日はこれからハムちゃんずと一緒にワールドカップを観るのだ!」との一言を残して会場を去ったようだが、続いてハム太郎ともっとも近いところで共に頑張っていた間宮くるみ、そして「とっとこハム太郎」プロデューサーを務めた沢辺伸政氏が登場し、まずは『劇場版とっとこハム太郎 ハムハムハムージャ!幻のプリンセス』のトークが開始された。
間宮は、テレビアニメ『とっとこハム太郎』でハム太郎を演じることになった経緯として「最初は“リボンちゃん”役を受けたのですが、テープオーディションの段階で落ちまして……。その後、もう一度オーディションを受ける機会があり、そこでハム太郎役を演じさせていただきました」と、なんと一回目のオーディションでは別役で、しかも落ちていたことを打ち明けた。一方で沢辺氏は「いろんなボイスサンプルを聞いた上で“ハム太郎はこの人しかいない”となり、ほぼ満場一致で間宮さんに決まりました」と、間宮のハム太郎役がイメージにピッタリだと絶賛した。
ハム太郎が映画になったときのことについて、間宮は「とても嬉しく思いましたし、あの国民的スターのゴジラと同時上映だなんて! と驚いていました」と、ハム太郎が映画になると共にゴジラ映画との同時上映という部分に驚きがあったと話した。
『ハムハムハムージャ!幻のプリンセス』のストーリーは、ハムスターの王国「ハムージャ王国」で砂漠猫「サバクーニャ」に捕われたハムスターの姫「シェーラ姫」を助け出すというものだった。これについて沢辺氏は「ハム太郎の“恋”を描こうという意図はなかったように覚えています。小学生の男の子、女の子の気持ちの動きや楽しさを、素直なかたちで表現すると、こういうストーリーになるんじゃないかと出崎統監督(※出崎監督の「崎」は立つ崎が正式表記)が話していました。お姫様に出会ってドキドキしたり、意識しないことを思わずやってしまったり……ハム太郎の“子どもらしさ”を表現し、同じ世代の子どもたちが共感してくれたら面白いな、と当時考えながら作っていました」と、出崎監督を中心にして、映画館に来た子どもたちがハム太郎に感情移入し、楽しんでもらえるストーリーを目指したことを明かした。
間宮は、今回のイベントのため久しぶりに『ハムハムハムージャ!幻のプリンセス』を観返し「テレビアニメではあまり言わないような、ステキなセリフがありました。出崎監督のテイストがあちこちに感じられて、改めてご一緒にお仕事ができて幸せだったと思います!」と目を輝かせながら、出崎監督との思い出が込められた本作を称えた。
続いて、『ゴジラ×メカゴジラ』の手塚昌明監督がステージに登場した。間宮とは初対面だという手塚監督は「ハム太郎も好きでしたが、僕は間宮さんが演じられた“ウサコッツ”が好きなんです!」と、2008年放送のギャグアニメ『天体戦士サンレッド』で間宮が演じた人気キャラクター・ウサコッツのファンであることをいきなり打ち明け、MCをあわてさせた。
前作の『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2000年/金子修介監督作品)は当初「とっとこハム太郎」との同時上映になることを想定せず企画・制作されていたため、子どもが観ると少々「怖すぎる」ゴジラ像が強調されていた。一方『ゴジラ×メカゴジラ』について手塚監督は「内容的に“こんな風にしてほしい”とリクエストされたことはありませんでした。手塚に任せておけば大丈夫だろうという思いがあったのか、信頼関係があったのかはわかりませんが(笑)、当時僕の子どもが小学生(6年生、4年生)だったこともあって、子どもたちに見せても恥ずかしくないゴジラ映画を作りたいと思っていました」と笑顔で語り、子どもから大人まで、幅広い年齢層が文句なしに「面白い」と思えるゴジラ映画にしようという強い信念と、自分ならばそんなゴジラ映画を作ることが可能だという自信をのぞかせた。
手塚監督は『ゴジラ×メカゴジラ』が『ハムハムハムージャ!幻のプリンセス』と同時上映になることを踏まえて「三村渉さんとの脚本打ち合わせ段階からハム太郎ファンの子どもたちにも共感を持ってもらいたいと思いました」と語り、映画の中に「ハム太郎」をイメージさせる「クロスオーバー」的要素を意識的に入れ込んだという。メカゴジラ=機龍の開発に携わる湯原の娘・沙羅の友だちとして、ハムスターを飼っている女の子を設定。彼女のキャスティングにあたっては「ロコちゃん(ハム太郎の飼い主)の設定資料をプロデューサーに見せ、似ている子役の方をオーディションで選びました」と、さすがのこだわりを発揮している。
さらに、ハムスターを可愛がる彼女の「部屋」のセットデザイン図面には「ロコちゃんの部屋」および「ハム太郎」という指示書きまであり、アニメの設定を忠実に実写作品に落とし込んでいることが明らかとなった。もちろん部屋のセットも、手塚監督が「アニメーションスタッフからいただいた資料に基づき、忠実に再現した部屋」とのこと。
『ゴジラ×メカゴジラ』の「ハム太郎」とのクロスオーバーは本編パートだけにとどまらず、ゴジラと機龍が迫力の大バトルを行う特撮パートにも及んでいた。なんと、2大怪獣が戦うクライマックスのビル街には、「ハムの太郎食品」と書かれた照明看板があったのだ。数カットにわたり、けっこう存在感を有しているので、熱心なゴジラファン、ハム太郎ファンの方たちはぜひ改めて映像ソフトなどで確認してほしい。手塚監督はこのような特撮スタッフの遊び心について「ミニチュアセットは常に何時間もかかって緻密に作り上げるもので、こういうのもすぐにはできないのですが、スタッフのみんなが面白がって看板の名前にまでこだわりを見せている。しっかりと電飾も入って、完璧な“遊び”だといえるでしょう!」と、珠玉の特撮シーンを支える職人たちのテクニックと、常に仕事を楽しむ心を忘れない姿勢を絶賛した。
やがて話題は『ゴジラ×メカゴジラ』『劇場版とっとこハム太郎 ハムハムハムージャ!幻のプリンセス』の入場者特典で貰えたマスコット人形「メカゴジハムくん」に移っていった。メカゴジラ(機龍)の中からハム太郎が飛び出すという凝ったギミックを持つこのマスコットは、前年度に配布された「ゴジハムくん」の好評を受け、こんどはメカゴジラとハム太郎の合体で……と企画されたのだという。沢辺氏は「コラボが2作目だったので、スタッフ同士で話していても、もうこういうことだよねと、すぐに決まった記憶があります」と、マスコット開発の企画そのものがスムーズに進んでいたことを回想した。
ゴジラのクリエイターである以前に、ゴジラおよび東宝特撮映画の大ファンである手塚監督は、メカゴジハムくんについて「当時、いっぱい頂きました。先日、押入れを確認したら30個くらい残っていましたね」と、秀逸なマスコット人形をコレクションしていたことを明かした。
造型・ギミックともに優れた出来栄えのメカゴジハムくんだったが、メカゴジラの口を開ける際にボタンを破損する、という声が配布時に多く寄せられたことから、「メカゴジハムくんはどうやって開けるの?」と題された説明ポスターを急遽作成し、劇場で貼り出すことになった。これについて沢辺さんは「このボタンは下から上で跳ね上げるように作っているのですが、知らずに上から下へ押してしまって、ツメが壊れることが多かったようです。そこでポスターを作り、破損しないように開ける方法を説明することになりました」と、公開後に生まれた思わぬ出来事を振り返った。
ゴジラとハム太郎のコラボアイテム「ゴジハムくん」は2021年にサイズアップした商品となって復活を果たし、現在も人気商品として販売が継続している。そしてその後、さらなるゴジハムくんバリエーションが次々と発表された。
なお「ゴジハムくん」は今年(2023年)も、ゴジハムくんフィギュア(金・銀2種類)の発売や、ゴジハムくんエポスカードの発行、そしてLINEスタンプ、カプセルトイなどのアイテムを展開する。
最後の挨拶で手塚監督は「当時、小学生だった人たちが20年の歳月を経て、ハム太郎とゴジラを懐かしんで劇場へ来てくださったと思うと、感慨深いです。またハム太郎映画の復活上映をやってくださり、こんどは『ゴジハムくん』のアニメも作ってほしいですね」とゴジラ&ハム太郎の名コンビぶりを再確認し、今後も両作品の関連企画がどんどん発展してほしいという思いを強めた。
沢辺氏は「ゴジラとハム太郎、当時から無謀というか大胆な企画だったと思っていましたが、時をへて多くの方々に楽しんでもらえたのは、とても嬉しいです。両作品を観直すと、明日もがんばろうとか、元気にやっていこうというメッセージが伝わってきます。別々のように見えて、ゴジラもハム太郎も同じ方向性の同時上映だったんだなって思いました」と熱っぽく語り、今後も「ゴジラ&ハム太郎」の復活上映会があればファンのみなさんにお会いしたいと意欲を見せた。
間宮は「今日、この場に来ることができて本当に幸せです。20年前は、各地で行われた映画のキャンペーンですごく忙しかったことだけが思い出されます。ハム太郎もゴジラも、常に進化し続けている不滅のキャラクター。ハム太郎を演じることができて、感謝しかありません。みなさん、ありがとうございます!」と、時を超えて多くの人々から愛されるハム太郎を演じた喜びを再確認し、つめかけたファンの熱い視線に応えていた。
ロビーには、今回上映された2作品にまつわる紙資料の数々が展示され、ファンの目を楽しませた。
同じくロビーに展示された、機龍隊の家城茜(演:釈由美子)フィギュアとゴジラフィギュア。『ゴジラ×メカゴジラ』と続編『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)で活躍したゴジラは勇猛さと哀愁を兼ねそなえ、ファンからの高い人気を誇る。
主催:新文芸坐 主催・企画協力:株式会社キャスト 協力:東宝株式会社 小学館 ゴジラ誕生祭実行委員
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