日本将棋連盟は2023年1月31日、将棋世界Special『藤井聡太BOOK2023―不敗の王者が望む盤上の景色』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)を発売した。本稿では、前後編にわけ、本書に収録されたコンテンツより一部抜粋してご紹介する。

『藤井聡太BOOK2023―不敗の王者が望む盤上の景色』収録コンテンツ

・巻頭カラー「写真で振り返る藤井聡太の2022年」
・木村一基九段が語る「羽生世代と藤井世代―読み? 研究? 激変する将棋の価値観」
・藤井聡太を追う者たち―高見泰地七段、佐々木大地七段、増田康宏六段の実力派若手3棋士のインタビュー
(そのほか注目記事)
・室田伊緒女流二段と中澤沙耶女流二段による「杉本一門の“名古屋女子対談”」
・藤井聡太竜王の活躍を追う「2022年棋戦ダイジェスト」
・凄八先生こと飯島栄治八段が選ぶ「藤井聡太の一手2022ベスト5―この手って凄くないですか? など

木村一基九段が語る世代論

本書に収録されている「羽生世代と藤井世代―読み? 研究? 激変する将棋の価値観」では、棋界屈指の人気棋士で、藤井聡太竜王、羽生善治九段とのタイトル戦経験を持つ木村一基九段が語る世代論。かつて序盤、中盤、終盤の3段階に分けられていた一局の将棋が、AIの台頭による熾烈な研究合戦により、序盤、中盤が一体化し、2段階になりつつあると語っている。

(以下、本書より抜粋) 

――序盤は定跡書を見て研究する、終盤は詰将棋で勉強する。中盤の鍛え方が棋士にとっても永遠のテーマのようにいわれてきましたが、プロとしてどう考えていますか。

木村 中盤も研究でなんとかなると思っている人は結構いると思います。これもやはり序盤同様に仕掛けるまでは変化しにくくなって、さらにその後もある程度はこのように進むっていうのが研究されるようになったので、変化するのが難しくなったんじゃないですかね。序盤、中盤、終盤って区切られていますけども、最近はそういった認識が少しずつ変わってきたのかもしれません。

――もっと詳しく教えてください。

木村 区切りとしては序盤から中盤に移ってから仕掛ける前段階がひとつのパートで、もうひとつは仕掛けた後の終盤を含む戦いです。詰みまでの収束を視野に入れてと考えると、もう3段階ではなく、2段階になっているのかななんて思うこともありますね。

――どうして序盤と中盤が融合されてしまったのでしょうか。

木村 事前に序盤の作戦を立てて対局に臨むわけですけれども、以前はどのように仕掛けようかまではおそらく事前には決めてなかったと思うんですね。それが今ではほとんど決まっていることが多くなりました。それによって変化のし方が難しくなったわけです。その場で変化を1回はできても、すぐに精査されるのでそういった変化球は常には使えません。ひとつひとつ丁寧に研究されると、変化するものが少なくなっていくわけです。そういう点では駒を並べてから数手指して、戦法が決まったらもう仕掛けまで一直線なんて展開も最近ではかなりありますので。といったわけで序盤と中盤が一緒になりつつあるのかなと思うんですよね。

(木村一基九段「羽生世代と藤井世代―読み? 研究? 激変する将棋の価値観」より)

書籍概要、収録コンテンツ

上記コンテンツのほか、巻頭カラーでは藤井聡太竜王の2022年の活躍をカラーで紹介。ほかにも「2022年棋戦ダイジェスト」、「藤井聡太の一手2022ベスト5―この手って凄くないですか?」など注目記事が目白押し。将棋ファン、藤井ファンに必見の内容となっている。

  • 藤井聡太竜王が、タイトル戦対局で全国を行脚した足跡がたどれる「藤井聡太のタイトル戦対局場マップ」も収録

『藤井聡太BOOK2023―不敗の王者が望む盤上の景色』は、Amazon.co.jpなどのネット書店、またはお近くに書店にて購入できる(Amazonの紹介ページはこちら)。

マイナビムック 将棋世界Special
『藤井聡太BOOK2023―不敗の王者が望む盤上の景色』
発売日:1月31日
価格:1,380円+税
判型:B5判128ページ
発行:日本将棋連盟