前回は履修行動と学び方から自己分析を行う7つのステップをご紹介しました。「履修行動」という呼び名の通り、学業といっても成績の良し悪しではなく、そのプロセスや考えたこと(目的や意図)が重要であるということはすでにご理解いただいたと思います。

今回は7つのステップのうち、自分の履修行動を見返して最初に行う「なぜその授業を選んだか?」という履修選択の理由から、どのように自己分析を行うのかについて詳しくご紹介したいと思います。

履修選択の理由は仕事選びにつながる

履修選択の理由からは、自分の資質・強みだけでなく、仕事選びの軸も見つけることができます。

特に、会社や仕事を選ぶときには、自身の価値観や興味関心に合致した会社や仕事を選ぶのが通常です。しかし、毎年多くの就活生と対話をしていると、「自分のやりたいことが分からない……」「どんな軸で会社を探したら良いのだろう……」といった悩みが多く聞かれます。

前提として、私は、本当にやりたいことというのは、社会に出ていろいろな経験を経て次第に形作られていくものだと思っています。そのため、新卒就活時点ではやりたいことが明確になくとも、自分の資質が十分に発揮できる会社・仕事であればそれが良いと思います。

実際に、採用側の立場としても、「御社の仕事がどうしてもやりたいです!」という熱意の高さと、「こんなに御社の仕事は私に向いています!」というその仕事に求められる要件とのマッチ度の高さでは、後者の方が断然重視されています。

ただし、実際に新卒で就活するとなると、世にある膨大な会社すべてを受検することはできないので、数社(多くとも数十社)に絞る必要があります。その際は、自分の価値観に合致しているかという基準で会社を絞る必要があるでしょう。

ではその自分の価値観や興味関心を、大学の履修選択の理由からどのように見つけ出すのでしょうか。

その授業を選んだ理由を考える

まず自分の履修登録を見返してみてください。何気なく選んだ授業から、こだわりを持って選んだ授業まであるかと思います。

特に大学1~2年生のときは、授業を選んだ理由などあまり意識していなかったかもしれません。しかし、数多ある自由選択科目の中から、自分で選んだ以上、そこには必ず自分の胸の内に秘めた何らかの判断基準があるはずです。

履修選択が「なんとなく」や「友達が選択していたから」など、特に理由がなかったということがはじめに思い浮かぶ場合は、いったんその思考はやめて、もしその履修選択に何らかの意味があるとすればそれはなにか、を考えてみてください。

例えば、「友達が選択していた授業のうち、経済学の授業は自分だけとらなかったが、心理学や哲学の授業は積極的にとるようにしていた」ということであれば、その人は、「人間の感情や思想の仕組み」に興味関心があるのかもしれません。

1つひとつの科目を見ても、選んだ理由が見えてこない場合は、履修した科目全体に共通するものがないかを考えてみてください。「自分は心理学や組織論、社会学などを多く選んだが、これらに共通するのは、人間の心に関する興味かもしれない」というように、解像度を高めて自分の履修履歴を俯瞰してみるのが良いでしょう。

選んだ理由を「ライフヒストリー」から深ぼってみる

自分の興味関心を深く分析するうえでは、授業を選んだ理由を考えたところで終わらせず、もう一歩踏み込んで分析してみましょう。

例えば、心理学部の学生が「人の心に興味があって心理学を履修した」のであれば、そもそも「人の心」に興味を持ったのはなぜか、根っこにあるものを考えてみてください。

このとき、「人の心を理解することで、対人コミュニケーションがうまくできるようになるから」や「人の心を理解することは、今後マーケティングの世界で必要になるスキルだから」など、一般的な理屈で考えてはいけません。

これでは、あるべき論に終始してしまい、"あなた"が授業を選んだ理由にはならないからです。できるだけ自分の中にある理由を求めてみましょう。

私は、自分の生育史(ライフヒストリー)から考えてみることをおススメします。自分の人生でこれまでに大きな影響を受けた人や出来事を振り返ることで、たとえば心理学部の学生が、なぜ人の心に興味を持ち、大学で心理学を学びたいと思ったのかが見えてきます。

ここまで分析しておけば、面接などで「なぜ、その科目を選んだのか」という理由を聞かれた際にも、自分の生育史から遡って「●歳の頃の▲▲の出来事がきっかけで、■■の価値観や考え方が自分の中に生まれ、それが現在のこんな興味関心につながったから」と説得力を持って説明でき、面接官にあなたの"人となり"をより深く理解してもらえます。

根っこの生えた興味関心の軸で、会社を探す

ここまでで、自分の価値観として、根っことなる興味関心の軸が見えてきたのではないでしょうか。これをもとに、自分にとってどんな業界が良いか、どんな会社が良いか、どんな仕事が良いかを考えてみましょう。

ちなみに同じ業界に属していても、会社が違えば、文化や雰囲気、どんなタイプの社員が多いかは千差万別です。たとえば、同じIT業界でも、顧客のニーズに応えてサービスを作る「マーケットイン」志向の会社もあれば、自分たちが良いと思うサービスを作って世に広めようとする「プロダクトアウト」志向の会社もあります。

まず業界や仕事を絞ってから、より自分の価値観に合致した会社をインターネットなどで調べながら絞っていくのが良いでしょう。

最後に、興味関心の軸は、エントリーシートや面接でその企業への志望理由を尋ねられた時の回答にもなります。1社1社にユニークな志望理由を考えなくとも、根っことなる自分の興味関心にその会社の事業や特徴が合致していれば、それだけで十分志望する理由になるはずです。

そのためにも、興味関心の理由を一般論やあるべき論ではなく、自分の中に見つけることが大事なのです。

著者プロフィール:安藤健(あんどう・けん)

株式会社人材研究所シニアコンサルタント。人事のための実践コミュニティ「人事心理塾」代表。大手企業での新卒・中途採用の外部面接業務、企業の面接官向けトレーニング、数多くの組織人事コンサルティングに従事。採用時に使用する「適性検査」の開発にも携わる。