世界的なSDGsの流れもあり、活況を呈しているリユース市場。2022年はロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響で金や高級時計の買取価格が高騰するなど、大きな話題を集めました。2023年の買取相場はどのように推移していくのか、『買取大吉』を運営する株式会社エンパワーの増井俊介 代表取締役社長に、自社の展望も含め聞きました。

  • 株式会社エンパワー 代表取締役社長 増井俊介氏

■金・ロレックスが最高値を記録、買取市場が盛り上がりを見せた1年

――2022年の買取市場を振り返って、特に印象的なトピックスは何でしょうか?

買取のメイン商材である「金・高級時計・ブランド品」の相場が大きく動いたことが挙げられると思います。

ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに2月には金相場が7,500円/gまで高騰、4月には史上最高値となる8,900円/gを記録しました。高級時計に関しても同様の動きがあり、2月にはロレックスのデイトナ(116500LN)が同じく史上最高値となる740万円まで高騰しました。

円安の進行に加え、ルイ・ヴィトンやエルメス、シャネルなどで商品の価格改定が行われたことで、ブランド品全体の買取価格の高騰につながりました。

――ウクライナ侵攻やアメリカの利上げによる円安の進行など、世界情勢の影響を大きく受けた1年だったのですね。

そうですね、加えて特に高級時計市場に関しては、YouTube動画をきっかけとして、テレビや雑誌など幅広くメディア露出が進んだ点も相場に大きく影響しました。

YouTuberの方々がお店でロレックスを購入する"購入動画"や、有名人が着用している時計について解説する動画などが人気を集めました。

今まで高級時計に関心のなかった層の方々がYouTubeの影響で情報を受け取るようになったことで、コロナ禍でお金を使う場所が少なくなった分、時計を資産として購入する動きが強まったと感じています。

■「金」「ブランド品」は安定、「時計」は下落か?

――2023年、これら商材の相場はどのように変化していくと考えていらっしゃいますか?

ウクライナ情勢が早期に決着するとは考えにくいですし、日本国内で見ると円安基調が大きく戻ることもないでしょう。

これらを踏まえると、金相場は一定の幅の中で上下する可能性はありますが、大きな変動はないと見ています。

ブランド品については、去年9月に多くのブランドで製品価格が上がったことに加え、ターゲットを年配層から若者向けにリブランディングしたことで客層が広がりました。そのため、買取市場においても安定した相場が続くでしょう。

一方、高級時計については相場下落の傾向が続くでしょう。2022年2月にロレックスのデイトナが史上最高値となる740万円をつけてから、時計を購入したい方以上に売却したい方が増えている状況で、12月には500万円にまで落ち着きました。需要を供給が上回りつつあるんです。

円安によるインバウンド効果も期待されましたが、ふたを開けてみると海外の方が高級時計を購入する動きは意外と少なく、2023年も引き続き下がるのではないでしょうか。

ただし、ロレックスが正規店で証明書付きの認定中古品を販売する動きがあり、これが相場にどのような影響を及ぼすのかについては、まだ見通せない状況です。

■2023年の個人消費は急増はせずとも安定的に伸び、買取市場にも追い風に

――2023年の日本経済と買取市場の展望についてお聞かせください。

アメリカは2022年から猛烈なインフレが起き、大幅な利上げを実施せざるを得なくなりました。中国がゼロコロナ政策をやめたとしても、サプライチェーン停滞で景気への影響が懸念されています。おそらく今年はアメリカ・中国とも景気は停滞していくのではないでしょうか。

しかし一方で、新型コロナウイルスの影響は、これまでと比較すると弱まるでしょう。国内の個人消費は急増まではしなくても、安定的に推移すると考えます。個人消費の安定的な伸びは、買取市場にも一定の追い風になると期待しています。

昨年、3兆円であったリユース市場は、2025年には3.5兆円の市場に拡大すると見込まれています。さらに日本の家庭に眠っている"かくれ資産"は、2020年に37兆円、2021年には44兆円と1年で7兆円増えていますから、実際にはより大きな可能性を秘めた市場と言えます。

"個人が持っている物を売る"という動きはインターネットビジネスに後押しされる形で広がってきました。そんな中でも特に高級品やブランド品などある程度値の張るものは、インターネット上での売買が怖い、買取店で直接やりとりをしたいという方がやはりいらっしゃいます。ネット上の市場の伸びは、リアルのビジネスである買取業界にもプラスに作用しており、今後も伸び続けていくと見ています。

■『買取大吉』今年の展望は?

――2023年は御社にとってどのような年にされたいですか?

当社の展望というより、『買取大吉』フランチャイズで起業される方にとっての2023年という観点でお話させてください。

2023年は「葵卯(みずのとう)」の年となります。年相で言えば「これまでの10年で培ったものを生かして、新しい挑戦をするのに良い年」となります。

『買取大吉』のフランチャイズには、サラリーマンから一念発起して起業される方が多いのですが、もともとの業種は千差万別です。しかし、皆さんが今までのビジネス経験を生かしながら店舗を運営し成功されています。

前に述べましたように2023年は世界経済が停滞する可能性が高いと思います。政府は国民の給料をアップさせようと動いていますが、その上り幅は限定的と言えるでしょう。このままサラリーマンを続けていても老後に安心した生活を送れるかというと疑問符がつきます。

老後資金として、仮に3億円必要だとしましょう。『買取大吉』を5年程度うまく経営すれば決して不可能な数字ではありません。リユース市場も引き続き伸びていますから、起業を目指す方にとって、『買取大吉』でフランチャイズを始めるには最高の年になると思います。

――フランチャイズ起業を目指す方にとって、『買取大吉』の魅力は何ですか?

イメージキャラクターにIKKOさんを起用して1年が経ちました。知名度や信頼度が上がったことで、店舗あたりの来店数が大幅に増加しました。これによって店舗あたりの平均売上も数年前の2倍以上になったのです。

また買取専門店の広告は、折込チラシが主流でしたが、当社はWebマーケティングにも力を入れています。他の買取専門店の顧客層は50代以上の方がほとんどのようですが、『買取大吉』では、30代・40代・50代・60代以上が満遍なくシェアしています。これはつまり「今後数年にわたって、安定的に顧客を確保できる」ことを意味します。

さらには、コロナ禍が落ち着き、海外からの入国者数も増えてきます。これに比例して「ニセモノ」も多く出回る可能性があります。買取専門店としては、「ニセモノ」を買取ってしまうと売却できないので、まる損になってしまいます。しかし『買取大吉』だけは、「ニセモノ」を買取った場合には相応の金額を補償しますので、安心してビジネスができるのです。

――最後に、今後の展望を教えてください。

昨年の後半は、1カ月あたり20軒以上のペースでフランチャイズ店舗が出店しました。現在(2023年1月)店舗数は、直営店もあわせると約600店舗になります。

「既に飽和状態ではないか?」という質問を頂くこともありますが、私は『買取大吉』のポテンシャルは、日本国内では1,500軒まで可能だと思っています。つまり、まだまだ空き地がたくさんあるということです。

これは、リユース市場が伸び続けるということだけでなく、買取専門店の淘汰が始まると考えているからです。どんなビジネスでも、わーっとたくさんのブランドが市場に参入し、そして淘汰されます。そして、だいたい3~7ブランドが勝ち組にまわり、その他は苦戦を強いられます。

買取専門店においても、『お客様を大切に考える』『買取価格に優位性がある』『マーケティングに成功している』、この3ポイントに秀でたブランドが市場のほとんどを占め、残った僅かなシェアをたくさんのブランドで食い合うということになるでしょう。2023年は、それが始まる年だと考えています。

「大切にしていた物を買取ってもらうなら『買取大吉』」と思っていただけるためにも、全国に店舗を増やしていきたい。『買取大吉』が日本のリユース市場を牽引していると評価されるようになりたいと思っています。

2023年、できれば1000店舗を突破するまでノンストップで、フランチャイズ募集に力を入れていきたいと考えています。