第54期新人王戦(主催:しんぶん赤旗)は2回戦の斎藤明日斗五段―岩村凛太朗三段戦が12月26日(月)に東京・将棋会館にて行われました。対局の結果、斎藤五段が106手で勝利して3回戦進出を決めました。
雁木対矢倉の力戦
斎藤五段は神奈川県出身の24歳。居飛車党で、切れ味鋭い攻めに定評があります。対する岩村三段は東京都出身の16歳。振り飛車に軸足を置くオールラウンダーで、詰将棋で培った終盤力が持ち味です。過去2回の三段リーグでは11勝7敗、12勝6敗といずれも勝ち越しており、飛躍が大いに期待される俊英です。
振り駒が行われた本局、先手となった岩村三段は3手目に角道を止めてノーマル振り飛車の出だしを匂わせます。数手の駆け引きの結果、岩村三段の作戦は居飛車の雁木戦法に落ち着きました。
岩村三段の作戦提示を受けて、後手の斎藤五段は矢倉囲いの骨格を作ります。戦いが起こるのは先のことと思われましたが、岩村三段が3筋の歩を飛車で交換したタイミングで8筋の歩を突き捨てたのが斎藤五段の冴えた一撃でした。この歩を先手が角で取ると、6筋の歩突きから飛車銀両取りがかかります。実戦で岩村三段はやむをえず▲8六同歩と応じましたが、これに対して継ぎ歩の手筋で桂を活用した斎藤五段が早くもペースを握りました。
斎藤五段がリードを拡大
盤上左方で技をかけられた岩村三段は「不利なときは戦線拡大」の方針に従って局面を動かしにかかります。角交換の後にすぐさま桂交換をしたのは先ほどの失点を相対化させる狙いでしたが、これに対して後手の斎藤五段がうまい反撃を用意していたことで、形勢の針は斎藤五段に大きく傾くことになりました。連続の駒交換で先手陣が不安定になったのを見越して、斎藤五段はまず飛車取りに角を打ちました。
角を打ったあとすぐに先手の金と刺し違えたのが「終盤は駒の損得より速度」の好着想。瞬間的に駒損になるものの、中央で捕獲した先手の2枚の銀はやがて取られる運命にあるため、駒割はすぐに斎藤五段の駒得に転じます。終盤の入り口に差し掛かったころには岩村三段の玉がいわゆる「ひとり終盤戦」に追い込まれた格好で、こうなると斎藤五段の優勢は疑いようがありません。
反撃を振り切って斎藤五段が勝利
逆転を狙う岩村三段は後手陣に向けた連続の桂打ちで勝負、勝負と迫ります。王手金取りの角打ちで3筋を攻略したことで斎藤五段の玉も見える形になってきましたが、そのころには斎藤五段も岩村三段の玉への寄せの網を絞り終えていました。終局時刻は16時20分、王手ラッシュを受ける中で手にした持ち駒を生かして、最後は斎藤五段が綺麗に寄せきって勝利をものにしました。
勝った斎藤五段は次局で小山直希三段―石本さくら女流二段戦の勝者と対局します。
水留啓(将棋情報局)