フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、世間の話題をさらった名作・話題作を、地上波未放送分を含むディレクターズカット版として新たに制作し、同局の動画配信サービス・FODで『ザ・ノンフィクション MASTERPIECE』として23日から配信をスタートした。

第1弾として配信される13作品の中で注目なのが、借金450万円を抱える人生どん底の地下アイドル・きららさんの人生を追った『しっくりくる生きかた』(2017年2月12日放送)。11月30日から、YouTubeで配信されているダイジェスト版は、新設チャンネルながら公開12日目で100万再生を突破する人気となっている。

取材を担当した福田真奈ディレクターときららさん本人が、この反響に対する実感や現在の状況について語ってくれた――。

  • 食事するきららさん=『ザ・ノンフィクション しっくりくる生きかた』より (C)フジテレビ

    食事するきららさん=『ザ・ノンフィクション しっくりくる生きかた』より (C)フジテレビ

■鳥エサ用の「くず米」を主食に…

『しっくりくる生きかた』で描かれたきららさんの日常はすさまじい。仕事は日雇いの解体業、23区内では格安の家賃2万9000円の風呂なしアパートに住み、主食は鳥のエサ用の「くず米」。ここまで生活を切り詰める理由は、あることが原因で背負った450万円もの借金だった。

そんなきららさんが、時折うっとりとした表情で口にする言葉が「しっくりくる」。その言葉にこだわるわけは、24歳まで“男性”として生きてきた自身の過去にあった。38歳にしてようやく見つけた、しっくりくる居場所、しっくりくる自分…それは、小さなライブハウスで地下アイドルとしてステージに立つこと。きららさんは、満たされた気持ち、幸せを感じていた。

しかし、解体現場で事故に遭い、意識不明の状態で救急搬送。仕事を失い、借金が返せなくなる。焦ったきららさんは、とにかく1日で高額の収入が得られる仕事に手を出すが…。

■「今度こそは応援の声を感じて、行動力に転嫁したい」

地上波での放送後、「反響を受けて、見た人たちの心に残るシーンというのが意外と細かいところなのだと感じました」という福田D。ダイジェスト版を編集するに当たり、「靴下のかかとの大きな穴、半月型の不思議なお弁当箱、ビラ配りのときに履いている地下足袋…そういう部分を切り落とさないように、かつ展開が多いのでストーリーが分かるように、と考えながら編集しましたが、非常に難しかったです」と打ち明ける。

苦心して編集した作品が、また大きな反響を呼んでいるが、その要因については、「感動とか怒りとか悲しみといったような、分かりやすい感情で説明ができない作品なのではないでしょうか。だから『とにかく見て』という感じで、見た人が拡散してくれているような気がします」と分析した。

当のきららさんは「(ダイジェスト版の配信後)私のYouTubeには、長い間更新していないにもかかわらず、チャンネル登録者数が900台から半月でおよそ400増えました。Twitterにも、DM、リプライでメッセージが届いています」と反響を実感。現在は金銭的な困窮から脱しており、「地上波での放送から6年近くが経ち、食事代の節約を考えていた当時は自分でも忘れかけているところでもありましたが、まだ覚えていてくださった方々や、注目してくださる皆さまがこんなにたくさんいらっしゃることに、驚いています」と受け止めている。

一方で、「歴史ある『ザ・ノンフィクション』の中で、YouTube配信の初回10作品に選ばれたこと、そしてその中でも最多の再生がされていること、この事実に、頭も心もついていかずに、かなりの混乱状態であります」と本音を吐露。そこに、FODでの配信も始まることで、「今度こそは混乱状態ではなく、しっかりと応援の声を感じて、行動力に転嫁したいところです」と意気込んだ。