間もなく令和5年。すっかり「昭和」が遠くなりました。都内の再開発は進み、特にターミナル駅を中心に急速に街並みが変わっています。昭和大好きなオジサンには、一抹の寂しさを禁じえないところです。
そんな昭和禁断症状者のもとに、広島市内に新しくできた「FAV HOTEL 広島平和大通り」から宿泊取材の案内が。「徒歩30分以内の人気スポット」を紹介するオリジナル冊子で銭湯を紹介するなど、「普段着のローカルに、とけ込むように」をコンセプトに、その街を楽しむのがモットーの同ホテル。
「年末年始の繫忙期に遠方へ行く余裕あるの?」という至極当然な編集長の言葉をしり目に、昭和なエリアや地方の銭湯に入りたい、と半ば逃げるように広島へ行ってきました。
広島の中心部にあるホテル
とはいえ時間が限られているのは事実。今回は「秒で」回ることに。まずは、同ホテルのスタッフで、責任者でもある森崇顕さんにオリジナル冊子「FAV SPOT AtoZ BOOK」誕生の経緯を少し聞いてみました。
「友だち、家族など大人数での宿泊時に強みを出せるのが本ホテルの特徴です。その際、街中をタクシーで観光地を回るのは楽しいですが、例えば地元の人がよく行く観光地でない場所を歩いてみるのも面白いと思うのです」
そこで今回、ヘルスツーリズムへの意識の高まりも背景に、宿泊者へ冊子の配布と合わせ、1日あたり8,000歩以上歩いた時に「旅の疲れを癒やすドリンク」1杯無料キャンペーンも実施していると言います。
「冊子では広島出身の方でも『あ、あったね』と驚かれる場所から、女子ウケする映えスポット、スイーツのお店などまで網羅しています」
確かにイラストを多用したデザインで、読みやすくていいですね。森さんによると、2泊3日くらいで市内を回ると、ゆっくりと街中を楽しめるのでお勧めだそう。そりゃそうだよね……。しかし、今回は1日ですべて回る覚悟で散策!
銭湯と昭和を求めて自転車で駆け回る
早速銭湯を探してみると、ホテルから徒歩5分程度の「音戸温泉」以外は別ジャンル。そもそも、銭湯紹介の冊子じゃないし。
そこで事前に、「サウナを愛し、地元広島、山口、瀬戸内を愛する集団『瀬戸内サウナクラブ』」の主宰者中岡昌士さんに「ホテルのある中区近辺のお勧めの銭湯」を紹介してもらっています。中岡さん、ありがとうございました! なお、男湯、女湯で違いがある可能性があり、今回はすべて「男湯」に関する説明です。
お勧めは先ほどの音戸温泉に加え、土橋温泉、大学湯、丁字湯、ちどり湯の計5つ。徒歩で回る時間が無いので、筆者お得意の電動アシスト自転車をレンタルする形に。これなら行動範囲も広いし、銭湯以外の昭和な場所も探せますね。
まずは音戸温泉に向かったところ、周辺は「夜の街」として知られる薬研堀、流川町で昭和な雰囲気の建物も幾つか残っていました。いいわー、この昭和感、ゾクゾクする。
銭湯は独立した建物ではなく、ビルの中に入っていますが、訪れた日は建物の外壁工事をしており外観の撮影はできず。そして入浴券を購入していよいよ中に。
中岡さんは、「漢方薬を10種以上混ぜ合わせた薬湯があります。また、浴室はメゾネット形式で2階のケロサウナで良い汗をかけます」とお勧めポイントを挙げています。銭湯だけど、温泉、薬湯、サウナ付きというのは数が少ないような。楽しみですねー。
入ったのはオープン直後の13時過ぎ。時間が早いためか利用者は少なく、30~50代が3人程度でバスタイムを満喫できました。なお、「漢方延寿薬湯」と名付けられた薬湯は「いかにも漢方薬」という独特な匂いと色合いで、浸かっていると台湾の街中にいるかのような気持ちになれます。サウナも大人10人前後は入れる広さ。ちなみに筆者は薬湯がお気に入りで、串カツ屋では決して許されない「二度漬け」ならぬ、三度漬けで薬湯にまみれてきました。
駆け足で銭湯を巡る
本来ならゆっくりと湯を楽しみたいのですが、まだ残り4ケ所もあるので、一番近くにある土橋温泉へ。ここは古くからの住宅街にある銭湯のようです。
実はここで計算違いが。土橋温泉は14時半よりオープン。まだ50分近く時間があるのです。残りの銭湯を回る時間を考え、次に進むことに。
近いのは丁字湯、ちどり湯ですが、行ってみると前者は15時半オープン、後者は定休日! タイミングが悪い! 仕方ないので外観と、中岡さんのお勧めコメントを紹介します。
「丁字湯は銭湯にもかかわらず、しっかりした熱いサウナとキンキンの水風呂が気持ち良いです。ちどり湯はお風呂の種類が多いのと、スチームサウナが気持ち良い」とのこと。うーん残念です。
お好み焼き屋さんで感激
土橋温泉へ戻るか、最後の大学湯へ向かうか? さらにお腹も減ってきた……。悩んだ挙句、今日中にすべて回るのは断念し、土橋温泉は翌日のオープンと同時に入ることに。大学湯へ向かいつつ、ランチできそうな場所も探しつつ、自転車をふらふら漕いでいると、一軒のお好み焼き屋さんが目に留まる。
広島に来たからには、広島風お好み焼きを食べないとね! と決めていました。おまけに店の外観のたたずまいがなんとなく「当たり」の雰囲気を醸し出している。ここでしょう、と入ったところ、大きな鉄板のあるカウンターで「下町ライク」な老婦人が対応してくれます。
まずは値段を見てビックリ。「お好み焼き」(400円)、「お好みそば入り」(500円)ってなんのバグですか? 円安による仕入価格上昇で苦しいお店が多い中、大丈夫? と余計な心配をする筆者。
さらに、ひょっとしてお昼休憩中だったのか、という不安を感じるほどの「スン顔」対応。恐るおそる「ちゃんぽん」という、そば&うどんが入ったモダン焼き的なものをオーダー。幸い、まだ営業時間のようで、目の前の鉄板で手際よく作り始めてくれました。
大阪生まれの筆者には、なんだかすごく懐かしく、親しみのある状況と匂いです。子どもの頃に通った駄菓子屋で食べるお好み焼きもこんな感じだったなー。
できたてを鉄板の上にのせたまま、自分のコテで食べる分だけ小皿に移して食べる。ウマ! なんだろ、この味。作り立てというのもあるけれど、決して特別な素材ではないだろうけど、店の雰囲気が相当味に影響しているような。次回来る時も必ず寄ろう。固く誓うオジサンでした。そして、やっぱりあの値段はありえんよね。
土橋温泉は「三段風呂」が特長
エネルギーをチャージし次の目的地へ。ところが、ここも15時オープン……。またもや外観とコメントの紹介となります。
「熱めのお風呂で身体はポカポカになるので、長風呂に注意を」
本日はここでタイムオーバーとなったのでした。そして翌日に土橋温泉。満を持して訪れたそこは、「シンプルな作りながらも程よい温度で長く入っていられます。また、広島特有の三段風呂も特長です」とお勧めされる場所。
銭湯の浴槽の多くは二段の階段状になっている気がしますが、ここはさらに一段増えて「掘りごたつ」の形状になっているのですね。でもそれ以外はいたって普通、「だが、そこがいい」というザ・昭和スタイルの銭湯でした。
特に番台と、脱衣場兼休憩所の雰囲気は完全に1960、70年代そのもので時間が止まったままでしたね。年季の入ったタイル張りの浴槽、トタン板? を使った天井、泡風呂の健康効果を紹介する某大学教授の看板がある異空間は、常連さんである地元の高齢者のサロンのような位置付けの印象でした。
あと昭和なスポットとして、JR広島駅からローカル線で二つ先にある横川駅周辺もいい雰囲気でしたよ。
最近は数が減ったインディペンデント系の映画を上映する小さな映画館、商店街にある本屋、味のある建物などゆっくりと回りたいなと思える場所がある程よいローカル感、昭和感が地方都市ならではでした。