芸人たちが本気の歌と演奏を見せるフジテレビ系音楽特番『フジ芸人ロックフェス』が、14日(23:15~)に放送される。笑いを封印して完全なるアーティストとして挑む同番組。この日、同局では「FNS歌謡祭 第2夜』が放送され、その直後の枠で“異色の新音楽祭”が編成される。

企画・プロデュースのフジテレビ編成部・福山晋司氏が、制作の裏側を語った。

  • 『フジ芸人ロックフェス』ステージの様子=フジテレビ提供

MCは渡辺直美とハライチの澤部佑。「構想は春頃にさかのぼります。渡辺直美さんに主催者になってほしいと企画書をもって直談判。ミュージカル『ヘアスプレー』の期間中に並行するプロジェクトになるにもかかわらず、直美さんは快諾、本番期間中でもリモートでの打合せに応じてくれました」と明かし、渡辺は、その直感から来るアイデアをいくつも提案し、実際にフェスの構成にその要素を反映。本番では、渡辺にしかできない“華”のあるパフォーマンスをオープニングから披露している。

一方の澤部については、「直美さんと澤部さんと、自分は10年以上前の話になるのですが『ピカルの定理』という番組でご一緒させていただいた間柄です(※当時、福山氏は総合演出を担当)。それぞれが10年も経てば、かなり違う境遇にはなっているのですが、ここで再び“交差点”を作りたいと思ってのオファーでした」と依頼。

「快諾してくれた2人には感謝しかありません。本番の彼らのMCは、久しぶりの掛け合いとは思えないさすがのあうんの呼吸でした。直美さんと澤部さんは会う人話す人みんなを笑顔に、そしてハッピーにする天才です。歌終わりのホッと一息つけるバックヤードでMCをしてもらったのですが、そんな2人の平和な空気が相まって、すごくいい意味での超ゆるい雰囲気と面白さが詰まったトークになっています。ハードルをあげてしまうようですが、どこのトーク番組にもないことを彼らがさらりとやってのけているのでぜひ見過ごさずに堪能してほしいです」と自信を示した。

今回の企画について、「モノマネ番組でもなければ、カラオケで高得点を目指す番組でもありません。いかにアーティストとして歌と演奏を自分流に表現できるのか? ストイックに笑いを封印して、音楽のパフォーマンスのみでどれだけ観客の心を動かせるのか? という企画です。ボーカリストのキャスティングでは歌唱力はもちろんのこと、世界観と音楽への愛という基準を重視しました」と強調。

出演芸人たちのパフォーマンスは、「アーティストキャラの憑依(ひょうい)っぷりで見せる森三中・黒沢かずこさんや、誰よりも高音、喉にこだわるチョコプラ長田さん、WANIMAの名曲に得意のラップをアレンジするビスケットブラザーズ・原田泰雅さん、歌が終わっても興奮冷めやらずアドリブで歌い続けたこがけんさん。歌い手だけではありません。なすなかにしは那須晃行さんの圧倒的な歌唱力に感化されてか、相方の中西茂樹さんはこの日のために自らギターを購入し猛練習。鬼越トマホークは金ちゃんの甘い声は有名ですが、相方の坂井良多さんがこの番組ならではの形でステージを盛り上げてくれます。音楽への愛はもちろん、この夜だけは封印したはずの笑いがにじみ出ています」と予告する。

ただでさえ多忙な売れっ子芸人たち。演奏の披露に向けては、どのように準備していったのか。

「当然の話ですが、バンドメンバーのカロリーが一番高いです。ボーカルが悩んだ末にそれぞれ楽曲を選んだら、そこから楽曲の振り分け、アレンジャーによる譜面作成、という段取りを踏むので、十分な練習期間を確保できない曲も出てくるわけです。まずはリモートでやりとりし、個人練習をしてもらい、スタッフのもとに練習映像を自撮りでアップしてもらい、そこから譜面をブラッシュアップして……と地味に進めていくしか方法はないのです」

それだけに、時間はギリギリまで迫っていたが、本当に本番に間に合うのかと不安が頂点に達したときに、福山氏が成功を確信する出来事があった。

「吉本新喜劇の松浦真也さんが自宅で部屋着のまま無表情で淡々と、しかし完璧に弾いているギターの練習映像を送ってきてくれました。『この番組は絶対に成功する!』と救われた感覚を今でも忘れません。松浦さんは僕の中のヒーローです」

そして、本番2週間前からようやく合同練習。「ヘビメタのギターソロを驚くほど上手に弾けるのに譜面がまったく読めないチャンス大城さん、合同練習に来ているのに別部屋にこもり切りになってひたすら個人練習に徹する、音楽でも職人肌を発揮する中川家の剛さんなど、とにかく個性がさく裂する現場でした。ドラム担当のよゐこの濱口さんが肉離れで脚を引きずりながらスタジオに入ってきたときにはどうなるかと思いましたが、後輩をまったく委縮させないその人柄でバンドのムードメーカーとなってくれました。プロ級のドラムの腕前を誇るゆうたろうさんが喫煙室を基地にしてバンドメンバーとコミュニケーションを図り、チームを引っ張ってくれたことも大きいです。『やばいやばい!』『次までに覚えてきます! ごめんなさい!』と焦りながらも、どこか部活のノリというか、青春のノリがあってすごく尊い時間でもありました」と振り返った。

「個人的にすごくお仕事がしたかった」というのが、ニッポンの社長。今回が初仕事で、「ニッポンの社長のネタが大好きなのに、彼らに延々ギターの練習をお願いしている自分に変な感覚を抱きつつも、この番組がのちに大ブレイクするニッポンの社長の貴重な映像になることを楽しみにしています」と期待を込める。

この番組を企画するきっかけとなったのは、『めちゃ×2イケてるッ!』をメインに放送した2015年『FNS27時間テレビ』の深夜の音楽コーナー。当時、片岡飛鳥総監督のもと、福山氏がそのコーナーの演出を担当した。「時代も変わりましたが、お世話になった師匠と伝説の番組に対する、ちょっとした“アンサーソング”となる番組になればと思っています。芸人さんたちの類まれなる音楽の才能、いつまでもそこにある青春のノリ、愛すべき真面目な横顔、実はそんなところこそ味わい深い『フジ芸人ロックフェス』、必ずご覧ください!」とアピールしている。

FODでは、地上波本放送に入りきらなかった未公開部分を詰め込んだ『スペシャル版』を、24日夜から独占配信。MCと歌を終えたボーカリストたちのバックステージトークや、アドリブで披露された歌、ボーカリストたちのドキュメンタリー映像、全員がステージに集まってのエンディングトークなどが収録される。

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