年金支給額の減額、保険料納付期間が延長される可能性など、老後生活に暗雲をもたらすトピックが増えています。世はボーナスシーズン、このタイミングに将来を見越した投資を始めてみてはいかがでしょうか?

今回は『「投資をしたことがないけれど、このままで本当に大丈夫?」と思ったら読む 絶対に損をしないお金の増やし方』の著者、ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さんに貯蓄・投資のコツをインタビュー。投資の初心者が持っておくべき心構えや、おすすめの始め方についてお聞きしました。

■必ずしも『家計簿』ですべての支出を把握する必要はない

――貯金だけではなかなか資産が増えず、やはり投資を始めるべきかと実感している方も多いようです。投資の初心者の方が、最初に始めるべきことは何でしょうか?

まず口座の残高を確認しましょう。銀行の通帳を記帳したりネットバンキングを確認したりして、どこの口座にいくらあるのかをチェックします。

40代の方であれば、ライフイベントを確認しておくのもよいですね。マイホーム、子どもの進学費用など、いつ・いくら現金が必要になるかを考えておくのも大切です。

――まず家計を把握することから始めるのですね。家計管理というと、難しく面倒に感じてしまいますが、どこにいくらお金があるのかを確認するぐらいなら、簡単にできそうです。

オーソドックスな家計管理方法として家計簿がありますが、一定の手間がかかりますから、人によって向き不向きがありますね。支出を全部洗い出すのは大変ですから、月末でいいので残高をチェックしましょう。

残高を明らかにして毎月の収入も考慮すると、投資にいくら回せるのかが明確になります。無理なく長期的に投資をしていくために重要なことですね。

■ 損しにくい・世界経済に振り回されない投資法とは

――本書のコピー「40代、貯金なしでも老後の2,000万円、貯められます!」という言葉に勇気づけられる方も多いと思います。節約も貯金も投資も初心者という方にとって、資産づくりに大切な心構えを教えていただけますか?

まず1つ目に、ぜひ自信を持っていただきたいと思います。初心者だからといって、必要以上に家計管理や資産運用を難しいものと捉える必要はありません。自信を持って、自分らしくお金を管理していきましょう。

ただ適当にやっていると損失を出してしまいますから、2つ目の心構えとして、損をしにくい方法を知っていただきたいです。投資信託などの買い方が上手でないと、値下がりしたりしたときにダメージが大きいですから。

具体的には「分散積立」で買っていけば、値下がりが小さく済みます。こういったことも含めて、きちんと最低限の知識を備えておきましょうということです。

――いまは急激な円安など、世界経済に激しい変化が起きていて、投資を始めるタイミングとしてちょっと怖い気もするのですが……。

こういった経済状況では、例えば「株価が上がると債券価格が下がる」といったこれまでの投資のセオリーが通用しなくなっています。ですから、細かい投資のセオリーを頭に入れながらニュースを見て、日々真剣に株価を追っていたら、どんどん混乱してしまいます。

でも、投資を始めるにあたって理解をしておく必要がある基本原則は2つだけ、「長期的に見れば株価は上がる」ということ、そして「外国資産に投資しておけば円安のときには利益が出る」ということです。

短期的に見れば、世界経済の状況によって株価は上がったり下がったりします。ただ、いまのような資本主義経済が続く限り、長期的に見れば株価は上がり続け、利益が出る可能性が高いです。

日本と外国の株が両方入った投資信託を購入して保有し続ける、あとは客観的な視点で経済状況を眺めてみる……それくらいの姿勢でまずは十分です。

金融の知識はすごく幅広いので、本気で勉強しようとしたらいつまでたっても投資をスタートできません。まずは少額からでいいので始めてみましょう。投資信託を保有することで、ニュースが気になったり、価格変動の背景が気になったりして、少しずつ知識を身に着けていくことができるようになります。

■まずは「つみたてNISA」から始めよう

――日本も金融商品やサービスが次第に充実してきました。坂本さんは著書の中で「初心者はつみたてNISAから始めるのがおすすめ」としていますが、その理由をお聞かせください。

つみたてNISAで取り扱っている銘柄は、金融庁による条件を満たしたものが選ばれています。投資信託は数千本もありますから、自分で選ぶのはなかなか難しいので、数が絞り込まれていると楽です。資産を増やしていくなら、日本と先進国の株式がある程度入っているものを選んでもらえればいいと思います。

――近年は米国株に注目する方も増えているようです。その一方でリスクもやや高そうですが、つみたてNISAでも利用するほうがいいのでしょうか?

米国株の価格変動の幅は、日本株よりかなり高いですね。株価の変動と為替の変動と両方のリスクがありますので、当然価格変動が大きくなります。

リスクを受け入れられるかどうかですが、お金を増やそうと思ったときにはやっぱり米国株は資産に組み込んだほうがいいです。長期的に米国株は成長を続けていますからね。

リスクは、保有資産の割合で調整するといいんじゃないでしょうか。たとえば大きなリスクは取りたくないなら米国株は20%にするとか。逆にリスクの許容度が高いなら、100%米国株を選ぶ人がいてもいいと思います。

――つみたてNISAや一般NISAは制度改定も予定されていますね。

NISAの拡充は、制度の恒久化の可能性などニュースでも報道されましたから、気になる方もいるでしょう。しかし拡充の具体的な内容が確定するのはもう少し先のことで、制度として正式に始まるのは2024年からです。

投資家に不利になる改定はおそらくないですし、制度改定は内容が決まったときに対処を考えればよいのではないでしょうか。それまでは拡充のことを気にするのではなく、目の前の積立に集中していくのがおすすめですね。

『「投資をしたことがないけれど、このままで本当に大丈夫?」と思ったら読む 絶対に損をしないお金の増やし方』(坂本綾子 著/CCCメディアハウス 刊)

40代、貯金なしでも老後の2,000万円、貯められます!投資を始めるには、何をどうすればいい?「つみたてNISA」と「iDeCo」、どちらがおすすめ?ロボアドに投資をまかせても大丈夫?勤務先に持株会があるけれど、利用したほうがいい?投資初心者でも、投資信託を選ぶことができるようになる?……いまさら聞けない、投資の超基本的なことをお伝えします。

坂本綾子

ファイナンシャルプランナー。1988年よりマネー誌、女性誌にて家計管理や資産運用の取材記事を執筆。1000人以上に取材。99年ファイナンシャルプランナー資格取得。2010年ファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所設立。20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書に、ベストセラーとなった『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』 (朝日新聞出版)、『まだ間に合う! 50歳からのお金の基本』(エムディエヌコーポレーション)などがある。